
無精子症と診断されたら——TESEと治療の選択肢を正確に知る
無精子症と診断されると「子どもが持てない」と絶望的になりがちですが、現在の医療ではTESE(精巣内精子採取術)による妊娠が可能なケースが相当数あります。まず「どのタイプの無精子症か」を確認することが最初のステップです。
無精子症の2つのタイプ——治療方針が全く違う
無精子症には大きく2種類あり、治療の方向性は全く異なります。
タイプ | 原因 | 特徴 | 治療の方向性 |
|---|---|---|---|
閉塞性無精子症 | 精路(精巣から精液が出る管)の閉塞 | 精巣では精子が作られている。FSH正常 | 外科的精路再建 or TESE(精子採取率は高い) |
非閉塞性無精子症 | 精子産生能力の低下・欠如 | 精巣自体の問題。FSH高値になることが多い | micro-TESE。精子が採れない場合もある |
どちらのタイプかは、FSH・LH・テストステロン測定+精巣生検(場合によって)で判断します。
TESEとは——手術の種類・成功率・リスク
TESE(Testicular Sperm Extraction)は精巣から直接精子を採取する手術です。
通常TESE
- 精巣の組織を小切除して精子を探す
- 主に閉塞性無精子症で行う
- 精子採取率:閉塞性で60〜90%、非閉塞性で40〜60%(施設・患者により差あり)
マイクロTESE(顕微鏡下精巣内精子採取術)
- 手術用顕微鏡で精細管を観察し、精子が存在する可能性の高い部位を精密に選別
- 非閉塞性無精子症で有効。通常TESEより精子採取率が高い
- 専門技術が必要なため、実施できる施設が限られる
- 精子採取率:施設により30〜60%(FSH値・精巣容積・原因などで大きく変動)
原因別の予後——精子が採れる確率を左右する因子
- 精索静脈瘤による非閉塞性:手術(静脈瘤切除)後に精液中に精子が出現する場合がある
- 下垂体機能低下(低ゴナドトロピン性):HMG/hCG注射などのホルモン療法で精子産生が回復することがある
- Y染色体微小欠失:AZFc領域欠失ではTESEで精子が採れることがある。AZFa/b欠失では難しい
- クラインフェルター症候群(XXY):マイクロTESEで精子が採れることがある(約50%)
TESEで採れた精子の使い方——ICSIの流れ
- TESEで精子を採取・凍結保存
- パートナーが採卵(IVF刺激周期)
- ICSI(顕微授精):採取した精子を直接卵子に注入
- 培養・胚盤胞まで培養
- 凍結胚移植
精子を凍結しておくことで、TESEとICSIのタイミングを調整できます。パートナーへの身体的負担を分散するためにも、凍結保存は推奨されます。
セカンドオピニオンと施設選び
無精子症の診断・治療には施設間で大きな差があります。以下の点を確認して施設を選びましょう。
- マイクロTESEの実施実績(年間件数)
- 男性不妊専門医(泌尿器科)との連携
- 遺伝カウンセリングの提供体制(Y染色体欠失・クラインフェルターなど)
- 精子凍結・ICSI・胚移植まで一貫した対応ができるか
よくある疑問Q&A
Q. 無精子症は必ず手術が必要ですか?
非閉塞性でもホルモン療法で精子が出現することがあります。FSH・LH・テストステロンを測定し、原因を精査してから手術を判断します。
Q. TESE後、子どもに遺伝的影響はありますか?
Y染色体微小欠失がある場合、男児に遺伝する可能性があります。遺伝カウンセリングを受けることをお勧めします。
Q. 精子が採れなかった場合、次の選択肢は?
精子提供(精子バンク)や特別養子縁組などの選択肢があります。心理的サポートを含め、専門医・カウンセラーと相談してください。
Q. TESE手術後、性機能は変わりますか?
通常、テストステロン産生・性機能への影響は最小限です。ただしマイクロTESEは精巣組織への侵襲があるため、術後のフォローアップが重要です。
Q. 費用はどのくらいかかりますか?
TESEは保険適用です。ただしICSI・胚移植は先進医療または自費になる場合があります。施設によって費用が大きく異なるため、事前確認が必要です。
まとめ
無精子症と診断されたら、以下のステップで対応しましょう。
- 閉塞性か非閉塞性かを精密検査で確認
- 原因(精索静脈瘤・染色体・ホルモン異常)を精査
- マイクロTESE実績のある施設でセカンドオピニオンを検討
- 精子採取後はICSIへ。採れない場合の代替手段も事前に情報収集
無精子症は「諦める必要はない」かもしれない疾患です。専門医との連携で選択肢を広げましょう。
【免責事項】本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。治療方針については必ず担当医師にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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