
無排卵の検査方法:まず押さえる3つのポイント
無排卵の検査は、基礎体温の測定・ホルモン血液検査・超音波(エコー)検査の3本柱で行われます。無排卵は月経がある場合でも起こりうる「隠れた不妊原因」であり、自覚症状だけでは判断が難しいため、客観的な検査が不可欠です。多くの検査が保険適用(3割負担)で受けられます。
この記事でわかること
- 無排卵を確認するための検査方法と流れ
- 基礎体温だけでは限界がある理由
- ホルモン検査の数値と判定の読み方
- 無排卵の治療法と妊娠できる確率
無排卵とは:月経があっても排卵していないケース
無排卵(無排卵周期症)とは、月経様の出血があるにもかかわらず、排卵が起きていない状態です。日本産科婦人科学会の調査によると、不妊患者の約20〜30%に排卵障害が認められ、無排卵はその主要な原因の一つです。
無排卵が疑われるサイン
- 基礎体温が二相性にならない(常に低温相)
- 月経周期が35日以上または21日未満で不規則
- 月経量が極端に少ない・または多い
- ニキビ・多毛・肥満などの男性化症状(PCOS疑い)
- 急激な体重変化・激しい運動・強いストレス
基礎体温(BBT)の限界と正しい読み方
基礎体温は自宅で行えるセルフモニタリングとして有用ですが、基礎体温だけでは無排卵の確定診断はできません。体温が二相性であっても実際には排卵していない「黄体機能不全」が隠れているケースもあります。
基礎体温グラフの特徴と意味
グラフのパターン | 考えられる状態 | 必要な追加検査 |
|---|---|---|
常に低温(高温相なし) | 無排卵の可能性が高い | ホルモン検査・超音波 |
二相性だが高温期が10日未満 | 黄体機能不全の疑い | プロゲステロン測定 |
二相性だがガタガタ | 測定誤差または排卵障害 | 超音波での卵胞モニタリング |
明確な二相性 | 概ね排卵あり | 妊活中なら排卵日確認を推奨 |
ホルモン血液検査:無排卵の根本原因を特定する
無排卵の原因特定には、複数のホルモンを測定して脳下垂体・甲状腺・卵巣の機能を評価します。検査は月経2〜5日目(卵胞期早期)に採血するのが標準的です。
ホルモン | 基準値(卵胞期) | 異常値が示す状態 |
|---|---|---|
LH(黄体形成ホルモン) | 1.76〜10.24 mIU/mL | 高値:PCOS疑い 低値:視床下部性無排卵 |
FSH(卵胞刺激ホルモン) | 3.01〜14.72 mIU/mL | 高値:卵巣機能低下 低値:下垂体機能低下 |
プロラクチン(PRL) | 3.0〜29.7 ng/mL | 高値:高プロラクチン血症(無排卵の主要原因) |
テストステロン(T) | 0.1〜0.9 ng/mL | 高値:PCOS・副腎疾患の疑い |
TSH(甲状腺刺激ホルモン) | 0.27〜4.20 μIU/mL | 異常:甲状腺機能障害(排卵障害の原因) |
特に高プロラクチン血症(PRLの高値)は見逃されやすい無排卵原因です。ストレスや抗精神病薬の影響でもPRLが上昇するため、再検査が必要なこともあります。
超音波(エコー)検査:排卵を「リアルタイム」で確認する
超音波検査(卵胞モニタリング)は、無排卵の確定診断において最も直接的な方法です。卵胞の成長過程と排卵の有無を実際に観察できます。
卵胞モニタリングの流れ
- 月経5〜7日目頃から卵胞サイズの計測を開始
- 通常は5〜7日おきに来院して卵胞径を測定(排卵直前期は2〜3日おき)
- 排卵直前には卵胞径が18〜24mm程度に達する
- 排卵後:卵胞消失・黄体出現・ダグラス窩の液体貯留で排卵を確認
PCOSの超音波所見
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の場合、超音波で卵巣内に12個以上の小卵胞(直径2〜9mm)が数珠状に並んでいる「ネックレスサイン」が確認されることがあります。PCOSは無排卵の最多原因疾患であり、日本人女性の5〜8%に認められます。
検査費用の目安
検査項目 | 3割負担の費用目安 |
|---|---|
ホルモン基本セット(FSH・LH・PRL・E2) | 1,500〜4,000円 |
甲状腺機能検査(TSH・FT3・FT4) | 600〜1,800円 |
超音波検査(経腟) | 500〜1,500円/回 |
AMH検査(卵巣予備能) | 自費:3,000〜8,000円 |
無排卵と診断された場合の治療選択肢
無排卵の治療は原因によって異なりますが、多くのケースで薬物療法が有効です。
原因別の主な治療アプローチ
- PCOS:クロミフェン(内服排卵誘発薬)→ 反応不良の場合はゴナドトロピン注射・腹腔鏡手術(卵巣多孔術)
- 高プロラクチン血症:カベルゴリン・ブロモクリプチンなどのドーパミン作動薬
- 視床下部性無排卵(ストレス・低体重):体重回復・生活改善が最優先。改善しない場合は低用量エストロゲン補充
- 甲状腺機能障害:甲状腺専門医との連携治療
クロミフェンによる排卵誘発では、適切な症例選択のもとで1周期あたりの排卵率70〜80%、妊娠率20〜25%(3〜6周期トータルで約50%)という成績が報告されています。
よくある質問
Q. 月経が毎月来ているのに無排卵なのですか?
A. はい、月経様の出血があっても排卵が起きていないケースは「無排卵月経」と呼ばれます。排卵しなくてもエストロゲンの影響で子宮内膜が増殖・剥離するため、月経に似た出血が起こります。月経周期が規則的でも安心できません。
Q. 基礎体温だけで無排卵かどうかわかりますか?
A. スクリーニングとしては有用ですが、確定診断はできません。基礎体温が二相性でも排卵していないケースがあり、逆に測定ミスで一相性に見えることもあります。超音波モニタリングと組み合わせた評価が確実です。
Q. 無排卵は自然に治りますか?
A. 原因によって異なります。ストレス・過度なダイエット・過激な運動が原因の場合、生活習慣改善で排卵が再開するケースがあります。PCOS・高プロラクチン血症などは医学的治療が必要です。
まとめ
- 無排卵の確定診断には「基礎体温+ホルモン検査+超音波」の組み合わせが必要
- 月経があっても無排卵は起こりうる(無排卵月経)
- 高プロラクチン血症・PCOS・甲状腺機能障害が主な原因として注意すべき
- 多くの検査は保険適用で1回あたり数百〜数千円で受けられる
- 原因が判明すれば薬物療法で妊娠できる可能性は高い
免責事項
本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。検査・治療については必ず担当の医師にご相談ください。掲載している基準値や費用はあくまで目安であり、医療機関によって異なります。
参考文献:日本産科婦人科学会「生殖医療ガイドライン」、The Rotterdam ESHRE/ASRM-Sponsored PCOS Consensus Workshop Group. Revised 2003 consensus on diagnostic criteria and long-term health risks related to polycystic ovary syndrome. Human Reproduction. 2004.
この記事を書いた人
EggLink編集部
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