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PCOS診断のロッテルダム基準|3つの条件

2026/4/19

PCOS診断のロッテルダム基準|3つの条件

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の診断に世界標準として使われているのが「ロッテルダム基準(Rotterdam Criteria 2003)」です。①月経異常/無排卵、②高アンドロゲン血症(臨床的または生化学的)、③多嚢胞性卵巣エコー像の3項目のうち2項目以上を満たし、他の疾患を除外した場合にPCOSと診断されます。

この記事のポイント

  • ロッテルダム基準の3条件の具体的な判断方法
  • 日本の診断基準とロッテルダム基準の違い
  • PCOSの4つのサブタイプと治療方針への影響

ロッテルダム基準とは——なぜ世界標準になったのか

2003年にオランダ・ロッテルダムで開催されたESHRE/ASRM(欧州生殖医学会/米国生殖医学会)の合同ワークショップで策定されたPCOSの診断基準です。それ以前のNIH基準(1990年)では月経異常と高アンドロゲン血症の2項目のみでしたが、ロッテルダム基準では多嚢胞性卵巣エコーを加えた3項目から2項目以上という柔軟な基準が採用されました。この変更により、アンドロゲン高値を伴わない「排卵障害+多嚢胞性卵巣」のサブタイプも診断対象に含まれました。

3つの条件の詳細——何をもって「満たす」とするか

条件①:月経異常/無排卵(Oligo/Anovulation)

月経周期35日以上(乏月経)または月経の著しい不規則性・無月経が該当します。単純な月経周期の乱れだけでなく、排卵があるかどうかが重要です。

  • 乏月経:月経周期が35日以上90日未満
  • 無月経:3ヶ月以上月経がない状態
  • 無排卵:基礎体温の二相性消失、黄体期プロゲステロン低値、超音波での排卵未確認
  • 注意:月経周期が正常でも無排卵(排卵があるように見えても卵子が放出されないLUFなど)の場合があります

条件②:高アンドロゲン血症(Hyperandrogenism)

「臨床的高アンドロゲン血症」(症状)または「生化学的高アンドロゲン血症」(血液検査)のどちらかを満たせばOKです。

種類

判断方法

具体的指標

臨床的高アンドロゲン血症

症状の観察

多毛(Ferriman-Gallweyスコア≥8)、にきび(中〜重症)、男性型脱毛

生化学的高アンドロゲン血症

血液検査

総テストステロン高値、遊離テストステロン高値、DHEA-S高値

日本人女性では多毛が欧米女性より目立たないことが多く、血液検査での確認が重要です。

条件③:多嚢胞性卵巣エコー像(Polycystic Ovarian Morphology: PCOM)

経腟超音波で以下のいずれかを確認します。

  • 卵胞数基準(旧):一側の卵巣に直径2〜9mmの小卵胞が12個以上
  • 卵胞数基準(新):2018年のガイドライン更新で、新世代の超音波機器では一側の卵巣に20個以上に変更
  • 卵巣容積基準:一側の卵巣容積10mL以上(どちらか一側でも可)
  • 注意:卵巣が大きく見える・卵胞が多く見えても、ピル服用中や思春期早期では過剰診断になる可能性がある

PCOSの4つのサブタイプ(表現型)

ロッテルダム基準の3項目の組み合わせによって、PCOSは4つの表現型(フェノタイプ)に分類されます。

フェノタイプ

月経異常

高アンドロゲン

多嚢胞性卵巣

特徴

A型(古典型)

最も重症、インスリン抵抗性が高い

B型(古典型)

×

アンドロゲン症状が明確

C型(排卵型)

×

月経は規則的でも高アンドロゲン

D型(非アンドロゲン型)

×

最も軽症、代謝リスクが低い

フェノタイプによって代謝リスク・不妊リスク・治療アプローチが異なります。A型・B型は心代謝リスク(糖尿病・脂質異常症)が高く、D型は比較的リスクが低いです。

日本の診断基準との違い

日本産科婦人科学会の診断基準(2007年)は、ロッテルダム基準と概ね一致しますが、以下の点で独自の項目があります。

  • LH/FSH比の採用:日本の基準ではLH/FSH比≥2を補助指標として重視(ロッテルダム基準には含まれない)
  • インスリン抵抗性:日本人では肥満がなくてもインスリン抵抗性を伴うことが多いため、HOMA-IRの評価を推奨
  • 超音波基準:日本では旧基準(12個以上)がまだ多く使用されている施設もある

他の疾患の除外が必須

ロッテルダム基準を満たしても、以下の疾患を除外して初めてPCOSと診断できます。

除外すべき疾患

除外に使う検査

高プロラクチン血症

PRL測定(正常値:25 ng/mL未満)

甲状腺機能異常

TSH・fT4・fT3測定

先天性副腎過形成(非古典型CAH)

17-OHプロゲステロン(早朝空腹時で2 ng/mL以上で疑う)

クッシング症候群

コルチゾール・ACTH検査

アンドロゲン産生腫瘍

テストステロン著明高値(2 ng/mL以上)時は画像検査

PCOS診断後の長期リスク管理

PCOSは不妊・月経不順だけでなく、長期的な代謝リスクがあります。ロッテルダム基準でPCOSと診断されたら、妊娠希望の有無にかかわらず以下のリスク管理が推奨されます。

  • 2型糖尿病リスク:PCOS女性は非PCOS女性の4〜7倍のリスク。5〜10年に1回の経口糖負荷試験(OGTT)を検討
  • 高血圧・脂質異常症:定期的な血圧・血清脂質チェック
  • 子宮体がん:無排卵が続く場合、エストロゲン過多による子宮内膜増殖→体がんリスク上昇。定期的な超音波管理
  • メンタルヘルス:PCOSは抑うつ・不安障害のリスクが高く、精神的サポートも重要

よくある質問(FAQ)

Q1. ロッテルダム基準の「2項目以上」とは、3項目すべて揃わなくてもいいですか?

はい、3項目中2項目以上で診断されます。例えば「月経不順+多嚢胞性卵巣」だけでも(高アンドロゲン症状なしで)PCOSと診断できます(D型フェノタイプ)。

Q2. PCOSと診断されたら一生治らないのですか?

PCOSは体質的な疾患ですが、適切な治療(生活習慣改善・ピル・排卵誘発など)で症状をコントロールできます。体重が5〜10%減少するだけで月経が改善・排卵が回復する方も多いです。また、閉経後はPCOS関連症状が自然に軽快することが多いです。

Q3. 多嚢胞性卵巣と多嚢胞性卵巣「症候群」は違いますか?

はい、違います。超音波で多嚢胞性卵巣の形態(PCOM)が見られても、月経が規則的で高アンドロゲン症状がなければPCOS(症候群)ではありません。若い女性の20〜30%に多嚢胞性卵巣形態が見られますが、そのすべてがPCOSではありません。

Q4. ピルを服用中はPCOSの診断ができませんか?

ピル服用中はLH・テストステロンが抑制されるため、正確な評価が難しいです。正式な診断が必要な場合は、医師の指示のもとで一定期間ピルを休薬してから再評価します。

Q5. 体外受精でもPCOSの管理は必要ですか?

はい、PCOSは体外受精での卵巣過剰刺激症候群(OHSS)リスクが高いため、排卵誘発の量を慎重に調整する必要があります。AMH高値のPCOS患者では、低刺激や凍結融解胚移植戦略が選択されることがあります。

まとめ

ロッテルダム基準は「月経異常・高アンドロゲン血症・多嚢胞性卵巣の3項目中2項目以上」というシンプルな基準ですが、PCOSを4つのフェノタイプに分類し、治療方針に影響します。診断には高プロラクチン血症・甲状腺異常などの類似疾患の除外が必須です。PCOSと診断されても、生活習慣改善と適切な治療で妊娠・症状コントロールの両立は十分に可能です。まず婦人科を受診し、包括的な評価を受けてください。

※本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療の代替となるものではありません。気になる症状がある場合は必ず医療機関を受診してください。参考:Rotterdam ESHRE/ASRM-Sponsored PCOS Consensus Workshop Group(2004)、日本産科婦人科学会「PCOS診断基準」(2007年改訂)

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この記事を書いた人

EggLink編集部

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公開:2026/4/19更新:2026/5/2