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ドプラー超音波検査と子宮血流評価

2026/4/19

ドプラー超音波検査と子宮血流評価

「子宮の血流が悪いと妊娠しにくい」と聞いて不安になった方もいるかもしれません。ドプラー超音波検査は、超音波の反射を利用して子宮や卵巣への血流状態をリアルタイムに評価できる検査です。子宮動脈の血流抵抗指数(RI)や拍動指数(PI)を数値化し、子宮内膜の着床環境を客観的に把握する手がかりとなります。本記事では、ドプラー超音波検査の原理から具体的な検査の流れ、正常値の目安、不妊治療における活用法までを解説します。

この記事のポイント

  • ドプラー超音波検査は血流の速度・方向・抵抗を数値化し、子宮や卵巣の血行動態を評価する非侵襲的な検査とされている
  • 子宮動脈のRI値は0.80未満、PI値は2.50未満が正常範囲の目安とされ、高値の場合は着床障害との関連が指摘されている
  • 子宮内膜下の血流シグナルの有無が内膜の受容性を反映する可能性があるとする報告がある
  • 検査は経腟プローブを用いて10〜15分程度で完了し、痛みはほとんどないとされている
  • 検査結果に基づいて血流改善薬の投与や生活習慣の見直しなどの対策が検討される場合がある

ドプラー超音波検査の原理|移動する赤血球に超音波を当て、反射波の周波数変化(ドプラーシフト)を計測することで血流の速度・方向・抵抗を画像化する検査法です

ドプラー超音波検査は、ドプラー効果と呼ばれる物理現象を医療に応用した検査法です。超音波を体内に向けて発信し、血管内を流れる赤血球に反射して戻ってくる音波の周波数変化を検出します。血流が超音波の発信源に向かって流れている場合は周波数が高くなり、遠ざかる場合は低くなります。

不妊領域で用いられるドプラーモードは主に3種類あります。

  • カラードプラー:血流の方向を赤と青で色分け表示し、血管の走行を視覚的に把握する
  • パワードプラー:血流の有無を高感度に検出でき、子宮内膜下の微細な血流評価に用いられる
  • パルスドプラー:特定の血管で血流速度波形を記録し、RI値やPI値などの定量的な指標を算出する

通常のBモード超音波(形態を見る検査)と組み合わせて使用することで、子宮や卵巣の構造と血流の両方を同時に評価できる点が特徴です。

子宮動脈血流とRI・PI値の意味|子宮動脈のRI(抵抗指数)は血管の抵抗の大きさを0〜1の範囲で示し、値が高いほど子宮への血流供給が少ないことを意味するとされています

子宮動脈は子宮への主要な血液供給路であり、ドプラー検査ではこの血管の血流波形を記録して以下の指標を算出します。

指標

正式名称

算出方法

正常範囲の目安

RI

Resistance Index(抵抗指数)

(収縮期最大血流速度 − 拡張期最小血流速度)÷ 収縮期最大血流速度

0.80未満

PI

Pulsatility Index(拍動指数)

(収縮期最大血流速度 − 拡張期最小血流速度)÷ 平均血流速度

2.50未満

RIは0〜1の値をとり、1に近いほど拡張期の血流が少なく血管抵抗が高いことを示します。複数の研究において、子宮動脈RIが0.80以上の場合は胚移植後の着床率が有意に低下したとする報告があります。ただし、RI値だけで妊娠の可否を判断することはできず、あくまで総合的な評価の一要素として位置づけられています。

なお、左右の子宮動脈で値が異なることがあるため、両側を計測して平均値で評価するのが一般的とされています。

子宮内膜血流の評価|子宮内膜およびその直下(内膜下)にカラードプラーやパワードプラーで血流シグナルが確認できるかどうかが、内膜の受容性を推定する指標の一つとされています

着床が成立するには、子宮内膜が十分な厚さを持つだけでなく、内膜への血流が保たれていることが重要と考えられています。ドプラー検査では、子宮内膜の血流を以下の3つのゾーンに分けて評価する方法が報告されています。

  • Zone 1:子宮内膜内に血流シグナルが確認できる
  • Zone 2:子宮内膜と筋層の境界部(内膜下)に血流が確認できる
  • Zone 3:子宮筋層内にのみ血流があり、内膜付近には血流シグナルがない

Zone 1またはZone 2の血流パターンを示す症例では、Zone 3と比べて胚移植後の妊娠率が高かったとする報告があります。ただし、内膜血流の評価法や基準は施設間で統一されておらず、検者の技量にも結果が左右されやすい点には留意が必要です。

パワードプラーは微小血管の血流検出に優れるため、内膜下血流の評価ではカラードプラーよりも高い感度が得られるとされています。

検査の流れと所要時間|経腟プローブを挿入した状態でドプラーモードに切り替え、子宮動脈と内膜血流を計測する検査で、所要時間は10〜15分程度、痛みはほとんどありません

ドプラー超音波検査は、通常の経腟超音波検査の延長として実施されるため、特別な前処置は不要です。一般的な流れは以下の通りです。

  1. 内診台に上がり、経腟プローブを挿入する(通常の超音波検査と同様)
  2. Bモードで子宮・卵巣の形態を確認する
  3. カラードプラーモードに切り替え、子宮動脈の位置を同定する
  4. パルスドプラーで子宮動脈の血流波形を記録し、RI値・PI値を算出する(左右それぞれ計測)
  5. 必要に応じて内膜下血流をパワードプラーで評価する
  6. プローブを抜去して検査終了

検査のタイミングとしては、排卵前後や胚移植前に実施されることが多いとされています。月経周期によって子宮動脈の血流抵抗は変動し、排卵後の黄体期にはエストロゲンとプロゲステロンの作用でRI値が低下する傾向が報告されています。

検査費用は施設によって異なりますが、保険適用外の場合は3,000〜5,000円程度が目安とされています。

検査結果の解釈と注意点|RI値やPI値が高いからといって必ず不妊になるわけではなく、内膜厚やホルモン値、胚の質など他の因子と総合して判断することが重要とされています

ドプラー検査の結果を解釈する際には、いくつかの注意点があります。

数値の変動要因が多い点:子宮動脈の血流は月経周期の時期、測定時の体位、膀胱の充満度、精神的な緊張などによって変動します。1回の測定値だけで結論を出さず、複数回の測定や経時的な変化で評価する方がより正確とされています。

検査間のばらつきがある点:検者間・検者内で測定値にばらつきが生じることが知られています。とくに内膜下血流の評価はパワードプラーの機器設定(ゲイン感度など)によって結果が変わるため、同一施設・同一条件での比較が望ましいとされています。

予後予測の限界:子宮動脈RIが高値でも自然妊娠や胚移植後に妊娠が成立する症例は存在します。一方、RI値が正常でも着床しない場合もあるため、血流評価はあくまで補助的な診断指標の一つと位置づけられています。

不妊治療への活用|体外受精における胚移植前の着床環境評価や、反復着床不全の原因検索として子宮血流検査が活用されるケースが増えており、治療方針の決定に役立つ場合があります

ドプラー超音波による子宮血流評価は、不妊治療の複数の場面で活用が検討されています。

胚移植前の着床環境評価:体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)の胚移植前に、子宮動脈の血流抵抗と内膜血流を評価し、移植に適した環境が整っているかを確認する目的で用いられることがあります。

反復着床不全(RIF)の原因検索:良好な胚を複数回移植しても着床に至らない場合、子宮内膜の血流障害が一因となっている可能性を検討するためにドプラー検査が行われることがあります。

血流改善治療の効果判定:子宮動脈の血流抵抗が高い症例に対しては、以下のような対策が検討される場合があります。

  • 低用量アスピリン療法:血小板凝集を抑え、末梢血流を改善する目的で処方されることがある
  • ビタミンE製剤:抗酸化作用による血管内皮機能の改善を期待して用いられる場合がある
  • 運動療法・温活:骨盤内の血行を促進する目的で、ウォーキングや下半身の保温が推奨されることがある

これらの介入後にRI値やPI値の改善が見られるかどうかを、ドプラー検査で経時的にモニタリングすることができます。

卵巣血流とほかの応用|子宮動脈だけでなく卵巣動脈の血流評価も行われることがあり、卵巣予備能の推定や卵胞発育のモニタリングへの応用が研究されています

ドプラー超音波の応用範囲は子宮動脈にとどまりません。卵巣動脈や卵巣間質の血流を評価することで、卵巣の機能的な状態を推定しようとする試みが報告されています。

排卵誘発剤の投与後に卵巣血流が増加することが確認されており、卵胞発育の良好さを間接的に反映する可能性が指摘されています。また、卵巣チョコレート嚢胞(子宮内膜症性嚢胞)の鑑別診断にカラードプラーが補助的に用いられることもあります。

ただし、卵巣血流と卵子の質や妊娠率との直接的な因果関係については、まだ十分なエビデンスが蓄積されていないのが現状です。今後、3Dドプラーや造影超音波検査といった新しい技術の普及により、より精密な血流評価が可能になることが期待されています。

よくある質問

ドプラー超音波検査は痛みがありますか?

経腟プローブを挿入する際に多少の違和感を覚える方はいますが、通常の経腟超音波検査と同程度であり、強い痛みが生じることはほとんどないとされています。ドプラーモードへの切り替え自体は体への追加的な負担はありません。

検査にかかる費用はどのくらいですか?

施設や保険適用の有無によって異なりますが、保険適用外の場合は3,000〜5,000円程度が目安です。体外受精の治療過程で実施される場合は、一連の検査費用に含まれることもあるため、事前に通院先の施設で確認されることをお勧めします。

子宮動脈のRI値が高いと言われました。妊娠できないのでしょうか?

RI値が高いことは着床環境に影響する可能性が指摘されていますが、RI高値でも妊娠に至る症例は報告されています。血流改善を目的とした投薬や生活習慣の調整によって値が改善する場合もあるため、主治医と対策を相談されることが大切です。

検査はいつ受けるのが良いですか?

月経周期によって子宮動脈の血流は変動するため、検査の目的に応じたタイミングで実施されます。着床環境の評価であれば排卵後の黄体中期、胚移植前の評価であれば移植予定日の数日前に行われることが一般的です。

ドプラー超音波検査はどこの病院でも受けられますか?

一般的な産婦人科にもドプラー機能付きの超音波装置は普及していますが、子宮動脈血流の計測と解釈には専門的な技術と経験が求められます。不妊治療の文脈で精密な血流評価を受けたい場合は、不妊専門のクリニックや生殖医療センターへの相談が推奨されます。

検査の結果が正常でも不妊の原因になることはありますか?

ドプラー検査で血流が正常範囲内であっても、卵管因子、排卵障害、精液所見の問題など、血流以外の原因で不妊となることは多くあります。子宮血流検査は不妊原因の一側面を評価するものであり、他の検査と組み合わせた総合的な診断が重要です。

血流を改善するために自分でできることはありますか?

骨盤内の血行を促す目的で、ウォーキングなどの適度な有酸素運動、下半身の冷え対策、禁煙が勧められることがあります。ただし、これらの生活改善がRI値の低下にどの程度寄与するかのエビデンスは限定的であり、医学的な治療が必要なケースでは主治医の判断を優先してください。

まとめ

ドプラー超音波検査は、子宮動脈の血流抵抗(RI・PI値)や子宮内膜下の血流状態を非侵襲的に評価できる検査法です。着床環境の客観的な把握や反復着床不全の原因検索に活用されており、検査自体は10〜15分程度で痛みもほとんどありません。

ただし、血流指標だけで妊娠の成否を判断することはできず、内膜厚やホルモン値、胚の質など複数の因子と組み合わせて総合的に評価することが重要です。検査結果に不安がある場合は、主治医に具体的な数値の意味と今後の治療方針について相談してみてください。

不妊治療の検査について相談してみませんか

子宮の血流状態が気になる方、胚移植を控えて着床環境を確認したい方は、不妊治療専門の医療機関への受診をご検討ください。ドプラー超音波検査を含めた精密検査を受けることで、ご自身に合った治療方針を見つける手がかりが得られる場合があります。

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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の治療法を推奨するものではありません。症状や治療については、必ず担当医にご相談ください。

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この記事を書いた人

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公開:2026/4/19更新:2026/4/27