
不妊治療をしても授からない確率は、年齢と治療ステップによって大きく異なります。日本産科婦人科学会のデータによると、体外受精1周期あたりの出産率(生産率)は35歳で約20〜25%、40歳では約8〜12%、43歳では約3〜5%程度とされています。
「授からない確率」に目を向けることは不安を生む面もありますが、現実的なデータを把握することで、治療の継続・変更・他の選択肢を冷静に判断できます。この記事では年齢別のデータと「次の一手」を整理します。
この記事のポイント
- 年齢別の体外受精成功率・失敗率(日産婦データ)
- 「何周期やれば妊娠できるか」の累積確率の考え方
- 治療を続けるか・別の選択肢を考えるかの判断基準
年齢別の体外受精成功率——日産婦2022年データ
日本産科婦人科学会が毎年公表するART成績は、国内最大の信頼できる統計です。以下は凍結融解胚移植(現在の主流)の年齢別生産率の目安です。
年齢 | 1周期あたりの生産率 | 1周期あたりの失敗率 |
|---|---|---|
30歳 | 約30〜35% | 約65〜70% |
35歳 | 約20〜25% | 約75〜80% |
38歳 | 約12〜18% | 約82〜88% |
40歳 | 約8〜12% | 約88〜92% |
42歳 | 約4〜7% | 約93〜96% |
43歳以上 | 約2〜4% | 約96〜98% |
※上記は目安値です。クリニックや個人の状況によって異なります。「生産率」=出産に至った割合(妊娠率ではない)。
「1周期失敗」は想定内——累積成功率で考える
1周期あたりの成功率が20%であれば、裏を返せば1周期では80%が妊娠しません。しかし複数周期を重ねると累積確率は上昇します。
累積妊娠率の計算例(成功率20%の場合)
- 1周期:20%
- 3周期:約49%(1−0.8³)
- 5周期:約67%(1−0.8⁵)
- 6周期:約74%(1−0.8⁶)
多くの専門医は「6周期を一区切りの目安」とすることが多く、日本産科婦人科学会でも保険適用の回数制限(40歳未満6回)はこのデータを参考にしています。
なぜ失敗するのか——主な原因と対処の方向性
体外受精が成功しない原因は、胚・子宮・免疫・男性因子など複数あります。何周期か失敗した後は、原因を追加検索することが次のステップになります。
反復着床不全(RIF)の主な原因
- 胚側の問題:染色体異常(特に40歳以上では胚の50〜70%に異常)
- 子宮内膜の問題:着床の窓のズレ(ERA検査)、慢性子宮内膜炎(EMMA/ALICE検査)
- 免疫・凝固の問題:抗リン脂質抗体症候群、NK細胞活性亢進、血栓傾向
- 子宮形態の問題:子宮内膜ポリープ、粘膜下筋腫、子宮腔内癒着
追加検査の例
- PGT-A(着床前染色体異数性検査):正常胚を選別してから移植
- ERA(子宮内膜受容能検査):着床の窓のタイミングを個別調整
- EMMA・ALICE:子宮内フローラ・慢性子宮内膜炎の診断
年齢の壁——43歳以降の選択肢を現実的に考える
43歳以降は保険適用外になり、自費治療で継続するか、別の選択肢を検討するかの分岐点になります。この判断は個人の価値観・経済状況・身体的負担を総合して下す必要があります。
43歳以降の主な選択肢
- 自費体外受精を継続:費用は1周期30〜60万円程度。成功率は低いが可能性はある
- PGT-Aの活用:正常胚を確認してから移植(先進医療として一部保険補助)
- 治療の終結を決める:区切りをつけることも選択肢のひとつ
- 特別養子縁組の検討:親になるための別のルート
繰り返す失敗とメンタルの消耗——限界を感じたら
体外受精の失敗を繰り返すことで、精神的・身体的・経済的な消耗は深刻になります。「もうやめてもいい」という気持ちは弱さではなく、正常な反応です。
- 不妊専門のカウンセラー・心理士への相談(クリニックに常駐しているケースも)
- パートナーと「何周期で区切りをつけるか」を事前に話し合う
- NPO・当事者コミュニティ(全国不妊ネットワーク等)への参加
治療を続けるか終わりにするか——判断の目安
治療継続か終結かは、数値だけで判断するものではありません。以下を参考に担当医・パートナーと相談しましょう。
継続を検討できる条件
- 胚の質が良好なのに着床しない(子宮・免疫側の問題の可能性)
- PGT-Aで正常胚が複数確認できている
- まだ試していない検査・治療がある(ERA・ALICE・免疫療法等)
区切りを考えるサイン
- 6〜10周期以上失敗し、追加検査で原因が特定できない
- 身体的・精神的・経済的負担が限界に近い
- 43歳以上で正常胚が得られていない
よくある質問(FAQ)
Q. 体外受精で何回失敗したら諦めるべき?
「何回で諦める」という正解はありません。6周期を一区切りとする考え方は一般的ですが、個人の状況・胚の質・追加検査の結果によって異なります。担当医と定期的に方針を見直すことが重要です。
Q. 着床しない原因は何が多い?
最多は胚側の染色体異常です。特に40歳以上では胚の半数以上に異常がある可能性があります。子宮内膜・免疫・着床の窓の問題が重なることもあります。
Q. 成功率を上げるために自分でできることはある?
卵子・精子の質に影響する生活習慣改善(禁煙・抗酸化・適正体重・睡眠)は継続する価値があります。ただし劇的な効果は期待しすぎず、医療的対処と並行することが現実的です。
Q. 友人は1回で成功したのに自分は何回やっても……
不妊治療の成功・失敗には年齢・卵巣機能・胚の質・子宮の状態など多くの変数があります。他の人との比較は意味がなく、自分の状況に集中することが重要です。
まとめ
不妊治療しても授からない確率は年齢が上がるほど高くなります。しかし累積成功率で考えると、複数周期の継続に意味があることも分かります。
- 体外受精1周期の生産率は35歳約20〜25%、40歳約8〜12%(日産婦データ)
- 6周期の累積で約74%(成功率20%の場合)が妊娠に至る計算
- 3周期以上失敗したら追加検査(ERA・PGT-A・EMMA/ALICE)を検討
- 43歳以降は自費継続か別の選択肢かを現実的に考える
次のステップへ
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この記事を書いた人
EggLink編集部
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