「卵管造影後は妊娠しやすい」という説明には、どの造影剤を使い、どのような人の、何を比べた研究かという条件があります。油性と水性の造影剤を比較した研究の結果を、検査を受けた全員の自然妊娠率や、必ず妊娠できる「ゴールデン期間」として使うことはできません。
検査後は、結果と安全を次の計画につなげます
| 状況 | 確認・行動 |
|---|---|
| 検査を勧められた | 目的、造影剤、妊娠・感染や病歴の確認、痛みへの対応を聞く |
| 通過していると言われた | 左右と子宮の所見、ほかの不妊要因、今後の方針を確認する |
| 検査した周期の性交・妊活を迷う | 施設の指示、造影剤・処置の内容、症状を確認して相談する |
| 発熱、増える腹痛、多い出血、発疹などがある | 検査施設へ速やかに連絡する。呼吸困難・失神・激しい痛みなどは直ちに救急の診療へ |
HSGは、X線と造影剤で子宮・卵管を調べる検査です
子宮卵管造影(HSG)は、子宮から造影剤を注入し、X線で子宮の形や卵管の通過を評価します。通過性の確認は重要ですが、それだけで排卵・精液・卵管の運搬機能など、妊娠に関わるすべての問題が否定されるわけではありません。
液体を通すことによる妊娠への効果は研究されていますが、詰まりをすべて洗い流して治す検査とは言えません。粘液などへの作用や免疫に関する説明も、効果の仕組みとして確定したことと、仮説を区別する必要があります。緊張が緩めば妊娠する、妊娠しないのはストレスのせい、といった説明もできません。
H2Oil試験は、油性と水性を比較しています
2017年のH2Oil試験をもとにした著者らの二次解析は、自然な排卵周期があり、卵管病変のリスクが低いなどの参加条件を満たした不妊女性について、油性と水性のHSGを比較しています。
両群ともHSGを受けており、「検査した人」と「検査しない人」の比較ではありません。H2Oil試験の著者による二次解析(2019年)
| 報告された評価項目 | 油性造影剤群 | 水性造影剤群 |
|---|---|---|
| 割付後6か月内の継続妊娠 | 39.7%(解析554人) | 29.1%(解析554人) |
| 出生 | 214/552人(38.8%) | 155/552人(28.1%) |
継続妊娠は妊娠12週以降の超音波による心拍確認、出生は少なくとも1人の生児が妊娠24週以降に生まれることとして評価されています。表は報告された解析分母で、評価項目により人数が異なります。
6か月は妊娠成立を追跡した期間で、検査後6か月以内の出産率を意味しません。研究では検査結果などに応じて待機や人工授精などの方針も取られており、数値全体を「自然妊娠だけの率」と説明できません。
ここで見られた差を、年齢・排卵・卵管・精液などの条件が違うすべての人に当てはめません。検査後6か月を評価したことは、1〜2周期目が必ず最大、6か月で効果が消える、そこまで待つべき、という意味でもありません。個人の妊娠確率を表から予測することはできません。
造影剤は、妊娠率の数字だけで選びません
造影剤には種類があり、施設で使える製品、病歴、過去の造影剤への反応などを確認します。油性なら全員に適している、重い副作用がない、とは言えません。
国内のリピオドール480注の添付文書は、重篤な甲状腺疾患などへの禁忌、ショックなどの注意を示し、子宮卵管撮影後に妊娠した場合の新生児の甲状腺機能にも注意を求めています。
検査後に妊娠した場合は、検査日と造影剤名を産婦人科へ伝え、必要な確認を相談しましょう。甲状腺の病気や治療・検査予定も事前に共有します。PMDA:リピオドール480注の国内添付文書
検査周期を一律に休む・すぐ再開するとは決めません
HSGは妊娠が疑われる状態では行いません。予約時に月経、性交・避妊、感染を疑う症状や薬などを伝え、検査前後の指示を確認します。
ASRMの患者向け説明は、通常のHSGの放射線量は低く、検査した月の後半に妊娠した場合の害は示されていないとする一方、性交を数日控えるよう指示する医師もいると説明しています。
したがって、放射線を使ったから全国一律その周期は妊活禁止、あるいは全員すぐ再開可、とは言えません。処置・症状・使った造影剤に沿って施設へ確認してください。
症状が出たら、ゴールデン期間より受診を優先します
検査後に少量の出血や痛みが出る場合はありますが、発熱、痛みが強くなる、多い出血、発疹や腫れなどは施設へ連絡してください。「検査後1〜2週間は子宮や卵管が開きっぱなしだから」といった説明で経過を自己判断しません。呼吸が苦しい、失神する、激しい痛みなどは救急の診療を求めます。
次の計画は、検査結果と年齢、これまでの期間、排卵・精液の評価、本人の希望から考えます。追加評価が必要な場合や早めに治療を進めたい場合もあり、一律3〜6か月待つものではありません。HSGで確認したことと未確認のこと、次の診察時期を聞きましょう。
超音波の検査へ、そのまま効果を移せません
超音波で造影媒体を見て卵管を評価するHyCoSyや、子宮腔を主に調べるSISなどは方法が異なります。油性HSGの研究結果を、すべての通水や超音波検査に当てはめません。方法が分からない場合は、検査名だけでなく、何をどのように評価するのかを確認します。
出典と確認日
2026年10月26日にH2Oil著者二次解析の対象・方法・採用結果、ASRM、国内添付文書の採用箇所を確認しました。妊娠率と出生率、油性と水性の比較、個人への適用を分けています。医師による本記事の個別監修はありません。

この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
公的機関や医学会などの情報をもとに、女性の健康と医療の選択に役立つ情報を整理しています。