
HSG検査(子宮卵管造影検査)の結果を受け取り、「卵管閉塞」「卵管水腫」「通過良好」などの言葉の意味が分からず困っている方へ。この記事では、HSG検査結果の正しい読み方を医療的な根拠に基づいて解説します。
【この記事のポイント】
- HSG検査レポートに登場する「卵管閉塞」「卵管水腫」「通過良好」の意味を具体的に解説
- 結果別の次のステップ(再検査・治療方針)が分かる
- 片側閉塞でも妊娠できる可能性と、両側閉塞の場合に選べる治療法を紹介
HSG検査結果の「通過良好」「閉塞」とはどういう意味か
HSG検査では造影剤が子宮から卵管を通り、腹腔内に広がるかどうかを確認します。「通過良好」は卵管が開通していること、「閉塞」は造影剤が途中で止まり卵管が詰まっていることを示します。
通過良好の場合:正常所見の読み方
レポートに「両側卵管通過良好」と記載されている場合、少なくとも卵管の物理的閉塞は認められないことを意味します。ただし、通過良好であっても卵管の機能的問題(繊毛運動の障害など)が存在する場合があります。
- 両側通過良好:卵管因子による不妊の可能性は低い
- 片側のみ通過良好:もう一方の卵管の閉塞が疑われる
- 造影剤の腹腔内拡散:正常な卵管開口部の確認
閉塞・狭窄の所見:異常所見の意味
卵管閉塞は卵管の詰まりを示し、不妊の直接的な原因になることがあります。閉塞の部位によって「間質部閉塞」「峡部閉塞」「膨大部閉塞」「采部閉塞」と区別されます。
- 間質部閉塞:子宮に最も近い部分の閉塞。子宮内膜症や感染が原因のことが多い
- 峡部閉塞:卵管の中間部分。クラミジア感染後の癒着が多い
- 膨大部閉塞・水腫:卵管の末端部分が液体で膨らんだ状態(卵管水腫)
- 采部閉塞:卵管の開口部が閉じた状態
卵管水腫(Hydrosalpinx)とは何か
卵管水腫とは、卵管の采部(ラッパ状の開口部)が閉塞し、内部に漿液がたまって風船のように膨らんだ状態です。日本産科婦人科学会のガイドラインでは、卵管水腫は体外受精の成功率を低下させる要因の一つとして明記されています。
卵管水腫の主な原因
- クラミジア感染・淋菌感染による骨盤内炎症性疾患(PID)
- 子宮内膜症による癒着
- 虫垂炎など腹腔内手術後の癒着
- 過去の異所性妊娠(子宮外妊娠)後の変化
卵管水腫が妊娠に与える影響
卵管水腫がある場合、体外受精の着床率が約50%低下するとの報告があります(Zeyneloglu HB et al., 1998)。これは、水腫の液体が子宮内膜に悪影響を与えるためと考えられています。そのため、体外受精を予定している場合は卵管水腫の外科的処置(腹腔鏡下卵管切除術または卵管根部結紮術)が推奨されることがあります。
結果パターン別の次のステップ
HSG検査結果によって、その後の治療方針は大きく異なります。以下の表を参考に、担当医との相談に備えてください。
HSG結果 | 考えられる状態 | 推奨される次のステップ |
|---|---|---|
両側通過良好 | 卵管因子は低リスク | 他の不妊原因(排卵・精子)の検査を進める |
片側閉塞 | 一側の卵管に問題あり | もう一方の卵管機能を活用したタイミング法/人工授精、または腹腔鏡検査 |
両側閉塞 | 自然妊娠・人工授精は困難 | 体外受精(IVF)へのステップアップを検討 |
卵管水腫 | 体外受精成功率に影響 | 腹腔鏡手術(切除または結紮)後にIVFを実施 |
子宮内腔の異常 | ポリープ・粘膜下筋腫等の疑い | 子宮鏡検査で精査 |
片側卵管閉塞でも妊娠できるか
片側の卵管が閉塞していても、もう一方の卵管が通過良好であれば自然妊娠や人工授精での妊娠は可能です。正常な卵管は左右どちらの卵巣から排卵された卵子も取り込むことができるため、閉塞側の卵巣から排卵された場合でも受精の機会があります。
ただし妊娠率は両側通過良好の場合より低くなる傾向があります。担当医の判断に従い、タイミング法・人工授精を一定期間試みたうえで体外受精へのステップアップを検討することが一般的です。
HSG検査の精度と限界
HSG検査は卵管の物理的な通過性を確認する検査ですが、いくつかの限界があります。偽陽性(実際は通過しているのに閉塞と判定)や偽陰性(実際は閉塞しているのに通過良好と判定)が生じることがあります。
偽陽性・偽陰性が起こる原因
- 偽陽性:卵管の痙攣(緊張)による一時的な閉塞。卵管口付近の粘液。検査中の姿勢や呼吸の影響
- 偽陰性:卵管の機能的障害(繊毛運動不全)は通過良好でも検出できない
HSGで閉塞と診断された場合でも、腹腔鏡検査で正常と確認されるケースが約20〜30%あるとされています。精度に不安がある場合は、腹腔鏡による精査や超音波下卵管通水検査(HyCoSy)も選択肢になります。
HSG検査後に確認すべき子宮所見
HSGは卵管だけでなく、子宮内腔の形態も確認できます。子宮内腔の所見も不妊・不育の原因になることがあるため、レポートの子宮に関する記載も重要です。
- 子宮腔内陰影欠損:子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫の疑い
- 子宮腔の形態異常:子宮中隔・双角子宮などの先天的形態異常
- 子宮腔の癒着:アッシャーマン症候群(子宮内腔癒着症)の疑い
よくある質問(FAQ)
Q: HSGで「通過良好」と言われたのに妊娠しない。なぜですか?
A: 卵管の通過性は確認されていますが、不妊の原因は排卵障害・黄体機能不全・子宮内膜の問題・精子の質など多岐にわたります。卵管因子以外の検査(ホルモン検査・精液検査など)を続けることが重要です。
Q: HSGの結果は何日で分かりますか?
A: 検査当日または翌診察日に担当医から説明を受けることが一般的です。レポートの準備ができ次第、医師が解説します。
Q: 卵管水腫と診断されました。手術は必須ですか?
A: 自然妊娠や人工授精を試みる場合は必須ではありませんが、体外受精を行う場合は手術(腹腔鏡下処置)が強く推奨されます。卵管水腫の液体が着床を妨げるリスクがあるためです。担当医と十分相談してください。
Q: HSGは保険適用されますか?
A: 2022年4月の不妊治療保険適用拡大により、一定の条件下でHSG検査は保険適用となっています。自己負担額はクリニックや検査内容によって異なりますが、概ね3,000〜8,000円程度(3割負担)です。
Q: 閉塞と診断されましたが、自然に開通することはありますか?
A: まれにHSG検査の造影剤圧力によって軽度の癒着が解除され、検査後に妊娠するケースが報告されています(いわゆる「HSG後妊娠率向上」)。ただし、これは偽陽性(痙攣による一時的閉塞)や軽度の癒着解除であり、器質的閉塞が自然に治ることは基本的にありません。
まとめ
HSG検査の結果は、「通過良好」「片側閉塞」「両側閉塞」「卵管水腫」などに分類されます。結果の意味を正しく理解することで、次の治療ステップを担当医と適切に話し合えます。
- 通過良好でも不妊の原因は他にある可能性がある
- 片側閉塞でも自然妊娠・人工授精の可能性は残る
- 卵管水腫は体外受精前に外科的処置を検討する
- HSGに限界があることを理解し、必要に応じて腹腔鏡検査で確認する
免責事項:本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。検査結果の解釈や治療方針については、必ず担当医にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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