
「不妊検査でホルモン検査と言われたけど、どの項目が何のためにあるのか分からない」——そんな疑問に、不妊治療で測定するホルモンの種類・目的・読み方を総合的に解説します。
【この記事のポイント】
- 不妊のホルモン検査で調べる項目(6種類)の役割を整理して解説
- 各ホルモンが不妊・排卵障害・黄体機能とどう関わるかが分かる
- 検査結果が異常だった場合に何が起きるか・どんな治療になるかを解説
不妊のホルモン検査とは:何のために行うのか
不妊のホルモン検査とは、月経周期を制御するホルモンの分泌バランスを確認し、排卵障害や黄体機能不全など内分泌系の不妊原因を特定するための血液検査です。不妊の原因は卵管因子・排卵因子・子宮因子・男性因子・不明など複数ありますが、ホルモン検査は排卵因子や卵巣予備能の評価において不可欠です。
女性の生殖ホルモン軸の仕組み
女性の排卵は「視床下部 → 下垂体 → 卵巣」という3段階のホルモン連鎖(HPO軸)で制御されています。
- 視床下部:GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)をパルス状に分泌
- 下垂体:GnRHの刺激でFSH・LHを分泌
- 卵巣:FSH・LHの刺激で卵胞が発育しE2・P4を分泌、排卵が起こる
この軸のどこかに問題があると排卵障害につながります。ホルモン検査はこのどの段階に問題があるかを特定するために使われます。
不妊検査で測定する主な6種類のホルモン
1. FSH(卵胞刺激ホルモン)
下垂体から分泌され、卵胞の成長を促します。月経2〜5日目に測定する基礎値が卵巣予備能の重要指標です。
- 基準値(月経2〜5日目):3〜10 mIU/mL
- 高値の意味:卵巣予備能低下(卵胞が少なくなっている状態)
- 低値の意味:視床下部・下垂体からの分泌障害の疑い
2. LH(黄体形成ホルモン)
下垂体から分泌され、排卵を引き起こします(LHサージ)。排卵検査薬が検出するのもLHサージです。
- 基準値(月経2〜5日目):1〜10 mIU/mL
- LH高値(月経初期):多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を示唆(LH/FSH比2以上)
- LHサージ:排卵36〜40時間前に急上昇
3. E2(エストラジオール・エストロゲン)
卵胞の顆粒膜細胞から分泌されるエストロゲンの主要形態。卵胞の発育状況を反映します。
- 基準値(月経2〜5日目):25〜75 pg/mL
- 排卵直前のピーク値:200〜400 pg/mL以上(成熟卵胞の発育を示す)
- 子宮内膜を増殖させる作用(内膜の厚さに影響)
4. P4(プロゲステロン・黄体ホルモン)
排卵後の黄体から分泌され、子宮内膜を着床に適した状態に整えます。黄体期中期(排卵後7日目頃)に測定します。
- 基準値(黄体期中期):10 ng/mL以上が黄体機能良好の目安
- P4低値(10未満):黄体機能不全 → 着床・妊娠維持困難
- 治療:プロゲステロン製剤の補充(黄体補充療法)
5. PRL(プロラクチン)
下垂体から分泌される乳汁分泌ホルモン。授乳中でないのにPRLが高い状態(高プロラクチン血症)は、排卵障害の重要原因です。
- 基準値:施設により異なるが概ね2〜30 ng/mL
- 高値の意味:排卵障害・月経不順の原因。プロラクチノーマ(下垂体腺腫)の疑い
- 注意:採血前30分は安静にする。ストレス・食事・運動で一時的に上昇する
6. AMH(抗ミュラー管ホルモン)
卵巣の前胞状卵胞・胞状卵胞から分泌されるホルモン。卵子の残り量(卵巣予備能)の指標です。
- 基準値:年齢によって異なる(25〜29歳で3.0〜5.0 ng/mLが目安)
- 低値の意味:卵巣予備能低下 → 体外受精での採卵数低下を予測
- 高値の意味:多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の可能性
ホルモン異常による排卵障害の分類
世界保健機関(WHO)は排卵障害を3つのグループに分類しています。ホルモン検査の結果はどのグループに該当するかを判断するために使われます。
WHOグループ | 特徴 | 代表的な疾患 | 治療 |
|---|---|---|---|
グループ1(視床下部・下垂体障害) | FSH低値・LH低値・E2低値 | 神経性食欲不振・運動性無月経 | GnRHパルス療法・ゴナドトロピン注射 |
グループ2(卵巣の排卵障害) | FSH・LH正常または軽度異常 | 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS) | クロミフェン・ゴナドトロピン注射 |
グループ3(卵巣不全) | FSH高値・E2低値 | 早発卵巣不全(POI)・加齢による機能低下 | 体外受精(採卵が困難な場合は卵子提供も) |
ホルモン検査はいつ受けるか
不妊検査として初めてホルモン値を測定する場合、最も情報量が多いのは月経2〜5日目です。この時期にFSH・LH・E2・AMHをまとめて測定できます。P4(プロゲステロン)は排卵後に別途測定が必要です。
- 月経2〜5日目:FSH・LH・E2・AMH・PRL(+必要に応じてTSH)
- 排卵後7〜10日目(黄体中期):P4(プロゲステロン)
よくある質問(FAQ)
Q: ホルモン検査の結果を自分で解釈することはできますか?
A: 各ホルモンの基準値は知識として持つことは有益ですが、ホルモン値は複数を組み合わせて評価するものです。単一の値だけで「正常・異常」を判断するのは難しく、担当医による総合的な解釈が必要です。
Q: 月経不順でも不妊ホルモン検査は受けられますか?
A: 受けられます。月経不順の場合は担当医が適切な測定タイミングを指示します。AMHなどは周期を問わず測定できます。
Q: ピル服用中にホルモン検査をしても正確な値が出ますか?
A: ピル服用中はE2・FSH・LH・AMHが本来の値より低く測定されることがあります。正確な卵巣予備能評価のためには、ピル中断後数か月待ってから検査することが推奨されます。
Q: 精液検査もホルモン検査と同時に受けますか?
A: 不妊検査では、女性のホルモン検査と並行して男性の精液検査も同時期に行うことが推奨されます。不妊原因の約半数に男性因子が関与しています。
Q: ホルモン検査が全て正常でも不妊になりますか?
A: はい。ホルモン検査が正常でも、卵管閉塞・精子の問題・着床障害・子宮内膜症などが不妊原因になることがあります。ホルモム検査はあくまで不妊原因評価の一部です。
まとめ
不妊のホルモン検査は、排卵・卵巣予備能・黄体機能という不妊に直結する内分泌系の評価に不可欠です。
- FSH・LH・E2は月経2〜5日目に測定するのが基本
- P4(プロゲステロン)は排卵後7〜10日目に測定し黄体機能を評価する
- PRLの高値は排卵障害の原因になるため見落とさない
- AMHは卵巣予備能の指標として治療方針の決定に重要
免責事項:本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。ホルモン検査の結果や不妊治療の方針については、必ず担当の産婦人科医にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
産婦人科・婦人科に関する正確で信頼性の高い情報をお届けします。医療監修のもと、女性の健康に役立つコンテンツを制作しています。
Next Action

