
不妊検査で採血を受け、「ホルモン検査の結果が出ました」と言われたとき、数値が何を意味するのか分からず困惑した経験はありませんか?この記事では、不妊治療で実施されるホルモン検査の主要項目について、数値の読み方・基準値・異常の意味・次のステップをわかりやすく解説します。
この記事のポイント
- 不妊検査で測定される6つのホルモン(FSH・LH・E2・PRL・TSH・AMH)の意味と基準値
- 各ホルモン異常が示す疾患・状態とその治療方針
- 結果を受け取ったときに医師に聞くべき質問リスト
FSH(卵胞刺激ホルモン):卵巣予備能の指標
FSHは脳下垂体から分泌され、卵巣の卵胞を育てる役割を担います。月経2〜5日目に測定し、卵巣の力(予備能)を評価します。
FSHの基準値と異常の意味
FSH値(月経期) | 意味・解釈 |
|---|---|
3〜10 mIU/mL | 正常範囲。卵巣は適切に反応している |
10〜15 mIU/mL | 境界域。卵巣予備能が低下し始めている可能性 |
15 mIU/mL以上 | 卵巣予備能の低下(早発卵巣不全の疑い) |
40 mIU/mL以上 | 早発卵巣不全(POF/POI)の診断目安 |
FSHが高い理由:卵巣が適切に反応しないため、脳が「もっと卵巣を刺激しろ」とFSHをより多く分泌するからです。FSH高値は「卵巣に残余卵子が少ない」サインです。
LH(黄体形成ホルモン):排卵のトリガーと多嚢胞卵巣
LHは排卵を誘発するホルモンで、排卵直前に急激に上昇(LHサージ)します。月経2〜5日目のLH基礎値は排卵障害の診断に使います。
LHの解釈ポイント
- 正常値:月経期 2〜10 mIU/mL(FSHと同程度)
- LH/FSH比 ≥ 2:多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の疑い
- LH極端な低値:視床下部性無排卵(低体重・過度な運動が原因のことが多い)
PCOSは日本人女性の約5〜10%が罹患する最も一般的な排卵障害で、不妊の主要な原因のひとつです。
E2(エストラジオール):子宮内膜と卵胞の発育
エストラジオール(E2)はエストロゲンの主要成分で、子宮内膜を厚くし、卵胞の発育を反映します。月経期の基礎値は卵巣評価に使います。
タイミング | 目安値 | 意味 |
|---|---|---|
月経2〜5日目(基礎値) | 25〜75 pg/mL | 高値(100以上)は卵巣嚢腫や早期卵胞刺激を疑う |
排卵前 | 200〜400 pg/mL | 卵胞成熟のサイン |
黄体期 | 100〜300 pg/mL | 黄体機能の評価 |
プロラクチン(PRL):高プロラクチン血症と排卵障害
プロラクチンは主に授乳中に高くなるホルモンで、過剰分泌(高プロラクチン血症)は排卵を抑制します。不妊の隠れた原因として見落とされやすいです。
プロラクチンの基準値と対応
- 正常値:3〜25 ng/mL(非妊娠時)
- 軽度高値(25〜100 ng/mL):ストレス・薬剤(胃薬・抗うつ薬等)・甲状腺機能低下が原因のことが多い
- 高値(100 ng/mL以上):下垂体腺腫(プロラクチノーマ)の疑いがあり、MRI検査が必要
高プロラクチン血症はカベルゴリンまたはブロモクリプチンという薬で治療でき、正常化後に排卵が回復する場合がほとんどです。
TSH(甲状腺刺激ホルモン):甲状腺と不妊・流産
甲状腺機能低下症(橋本病等)は日本人女性に多く、不妊・流産・妊娠合併症の原因となります。不妊検査でのTSH測定は非常に重要です。
TSH値 | 一般的な解釈 | 不妊治療での目標 |
|---|---|---|
0.4〜2.5 μIU/mL | 最適範囲 | 妊活中はこの範囲を目指す |
2.5〜4.0 μIU/mL | 境界域(準低機能) | 甲状腺抗体(TPO抗体)も確認 |
4.0 μIU/mL以上 | 甲状腺機能低下症 | レボチロキシン治療を開始 |
日本甲状腺学会・米国生殖医学会(ASRM)は、妊活中・妊娠中はTSH 2.5 μIU/mL未満を目標値とすることを推奨しています。
AMH(抗ミュラー管ホルモン):卵巣予備能のゴールドスタンダード
AMHは発育卵胞から分泌されるホルモンで、残存する卵子数の間接的な指標です。月経周期を問わず測定でき、卵巣年齢を評価するために最もよく使われます。
年齢別のAMHの目安
年齢 | 平均AMH(目安) | 低値の目安 |
|---|---|---|
25〜29歳 | 4.0〜6.0 ng/mL | 1.5 ng/mL未満 |
30〜34歳 | 2.5〜4.5 ng/mL | 1.0 ng/mL未満 |
35〜39歳 | 1.5〜3.5 ng/mL | 0.5 ng/mL未満 |
40〜44歳 | 0.5〜2.0 ng/mL | 0.5 ng/mL未満 |
AMHが低い=妊娠できない、ではありません。AMHは「残り時間」の指標であり、体外受精の刺激反応の予測に使われます。極めて低値(0.5未満)でも体外受精で妊娠している方はいます。
結果を受け取ったときに医師に聞くべき質問
検査結果の面談で以下の質問をあらかじめ準備しておくと、治療方針の理解が深まります。
- 「今回の検査で、私の不妊の原因として考えられるものは何ですか?」
- 「AMH・FSHの値から、治療を急ぐ必要がありますか?」
- 「異常があった数値は治療で改善できますか?」
- 「次のステップとして何の検査・治療が必要ですか?」
- 「セカンドオピニオンを受けることは可能ですか?」
よくある質問(FAQ)
Q. ホルモン検査は何日目に受ければよいですか?
FSH・LH・E2・PRL・TSH・AMHは月経2〜5日目が最適タイミングです。AMHはいつでも受けられます。
Q. ホルモン値は毎月変動しますか?
FSH・LH・E2は周期ごとに変動します。1回の異常値だけで判断せず、再検査することが推奨されます。AMHは比較的安定していますが、長期的には低下します。
Q. TSHが2.5を超えたら必ず治療が必要ですか?
TSH 2.5〜4.0の境界域では甲状腺抗体(TPO抗体・Tg抗体)の値や症状を合わせて判断します。不妊・流産歴がある場合はレボチロキシン治療を検討することが多いです。
Q. AMH 0.5未満でも体外受精はできますか?
可能ですが、採卵できる卵子数が少なく複数周期の採卵が必要になる場合があります。担当医と早期に治療計画を立てることをお勧めします。
Q. プロラクチンが高い場合はどんな治療ですか?
カベルゴリン(週1〜2回服用)またはブロモクリプチン(毎日服用)が処方されます。多くの場合、正常化まで1〜3ヶ月で排卵が回復します。
まとめ
ホルモン検査の6項目(FSH・LH・E2・PRL・TSH・AMH)はそれぞれ異なる側面から不妊の原因を評価します。FSH高値は卵巣予備能低下、LH/FSH比高値はPCOS、PRL高値は高プロラクチン血症、TSH高値は甲状腺機能低下、AMH低値は卵巣予備能低下を示す重要なシグナルです。結果を持って医師との面談に臨む際は、数値の意味を理解したうえで「次に何をすべきか」を確認することが大切です。
免責事項:本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。実際の診断・治療については必ず担当医師にご相談ください。参考基準値は施設・試薬によって異なる場合があります。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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