
不妊治療で採卵を行うと、医師から「初期胚のグレードは2G、胚盤胞になったものが3つ、うち1つが4ABです」のような説明を受けます。初期胚と胚盤胞では評価基準が異なり、それぞれの意味を正しく理解することが治療の選択に役立ちます。この記事では初期胚と胚盤胞のグレード評価基準を一覧で解説します。
この記事でわかること
- 初期胚(Day2〜Day3)のグレード評価基準
- 胚盤胞(Day5〜Day6)のGardner分類
- 発育段階ごとの特徴と違い
- 初期胚移植と胚盤胞移植のどちらを選ぶか
- グレードの限界と着床前診断の役割
胚の発育段階と評価のタイミング
受精後の胚は以下のスケジュールで発育し、各段階で評価が行われます。
日数 | 発育段階 | 細胞数の目安 | 評価方法 |
|---|---|---|---|
Day1(受精翌日) | 前核期(2PN) | 1細胞(2つの核) | 受精確認のみ |
Day2 | 2〜4細胞期 | 2〜4個 | 割球数・均一性・フラグメント |
Day3 | 8細胞期 | 6〜10個 | 割球数・均一性・フラグメント |
Day4 | 桑実胚(モルラ) | 16〜32個 | コンパクション(細胞の緊密化)の程度 |
Day5〜6 | 胚盤胞(ブラスト) | 60〜100個以上 | Gardner分類(拡張度・ICM・TE) |
初期胚(Day2〜Day3)のグレード評価
初期胚は主に「割球の数」「均一性」「フラグメンテーション(細胞断片)の割合」の3軸で評価されます。施設によって基準が若干異なりますが、最も広く使われるVeeck分類(変法)を示します。
グレード | 割球の均一性 | フラグメンテーション | 評価 |
|---|---|---|---|
Grade 1 | 均等・透明 | なし(0%) | 最良 |
Grade 2 | ほぼ均等 | 10%未満 | 良好 |
Grade 3 | 不均等さあり | 10〜25% | 標準 |
Grade 4 | 不均等 | 25〜50% | やや低め |
Grade 5 | 著しく不均等 | 50%超 | 低(移植対象外が多い) |
Grade 1〜2が移植に推奨されるグレードですが、Grade 3でも妊娠例は多く報告されています。フラグメンテーション(断片化した細胞)は細胞質の分裂ミスによるもので、一部の断片は胚の発育に影響します。
胚盤胞(Day5〜Day6)のGardner分類
胚盤胞に発育すると、Gardner分類で「拡張度(1〜6)」「ICM(A/B/C)」「TE(A/B/C)」の3軸評価に移行します。
- 拡張度1〜3:胚盤胞腔が形成〜拡張中
- 拡張度4:完全に拡張、透明帯が薄くなっている(多くの施設で移植推奨グレードの下限)
- 拡張度5〜6:透明帯から脱出中〜完全脱出(孵化)
- ICM A:細胞数が多く密に凝集(将来の胎児の源)
- ICM B:細胞がやや少なくまばら
- ICM C:細胞が非常に少ない
- TE A:上皮が均一で多数の細胞(将来の胎盤の源)
- TE B:細胞が少なく上皮がやや不規則
- TE C:細胞が非常に少ない・まばら
初期胚移植 vs 胚盤胞移植 — どちらを選ぶか
初期胚(Day3)と胚盤胞(Day5)のどちらで移植するかは、採卵結果・患者の状況・施設方針によります。
比較項目 | 初期胚移植(Day3) | 胚盤胞移植(Day5) |
|---|---|---|
妊娠率(1回あたり) | やや低め(20〜35%) | やや高め(35〜60%) |
選別精度 | 低い(発育力が不明な胚も含む) | 高い(培養中に淘汰が起きる) |
向いているケース | 採卵数が少ない・子宮外妊娠歴あり | 採卵数が多い・若年者・グレード選別したい |
胚盤胞到達率 | — | 成熟卵の40〜60%が胚盤胞になれる |
胚盤胞移植の方が1回あたりの妊娠率は高いですが、胚盤胞に発育しない胚もあるため、採卵数が少ない場合は早期移植を優先することがあります。
形態グレード評価の限界
グレードはあくまで形態学的な評価であり、以下の点を理解しておく必要があります。
- 高グレードでも染色体異数体の胚は存在する(特に40歳以上では半数以上)
- 低グレードでも染色体正常で妊娠に至るケースがある
- グレード評価は観察者の主観を含むため、施設間で多少の差がある
- 着床前遺伝子検査(PGT-A)は形態では判断できない染色体状態を評価できる
よくある質問
Q. 採卵で取れた卵すべてがグレード評価されますか?
成熟卵(MII期卵子)が受精した胚が評価対象です。未成熟卵・受精しなかった卵は通常移植対象外です。受精した胚も培養中に発育停止することがあり、すべてが移植に至るわけではありません。
Q. 施設によってグレードの表記が違います。どう読めばいいですか?
施設によって評価体系が異なる場合があります。受け取ったグレード表の見方は担当医または培養士に説明を求めてください。転院時は元の施設の評価票を持参すると比較しやすくなります。
Q. 複数の胚がある場合、どの順番で移植しますか?
一般的には高グレードの胚盤胞から移植します。ただし凍結保存の年数・患者の年齢・移植計画によって担当医が判断します。
まとめ
初期胚はGrade 1〜5の分割期評価、胚盤胞はGardner分類(拡張度+ICM+TE)で評価されます。高グレードは妊娠率が高い傾向がありますが、形態グレードは確率的な指標であり、低グレードでも妊娠できるケースは多数あります。年齢・採卵数・移植計画を考慮して担当医と相談しながら移植戦略を立てることが最も重要です。
免責事項
本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。胚のグレード評価や移植に関する判断は必ず担当医にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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