不妊の検査では、問診とこれまでの経過を確認し、排卵、子宮・卵管、精液などを必要な範囲で評価します。全員が「女性6項目・男性1項目」を必須で受けるという決まった一式ではありません。
検査が多いほど原因が確定したり、妊娠に近づいたりするとは限らないため、目的と、結果によって方針がどう変わるかを確認しましょう。
代表的な検査と、分かること・分からないこと
| 評価すること | 主な方法の例 | 留意点 |
|---|---|---|
| 排卵 | 月経の経過、必要時に採血・超音波 | 目的と採血時期を確認する |
| 子宮・卵巣 | 経腟超音波など | 所見に応じ追加検査を選ぶ |
| 卵管の通過性 | HSG、超音波下の造影など | 病歴と検査条件を踏まえる |
| 卵巣予備能 | AMH、胞状卵胞数など | 卵子の質や妊娠の可否を単独で判定しない |
| 精子・精液 | 精液検査、病歴 | 採取条件や変動も考慮する |
| 内分泌の病気など | 症状に応じた甲状腺・プロラクチンの採血など | 全員の必須項目ではない |
ASRM2026は、年齢、妊娠希望期間、本人たちの希望や病歴に応じ、負担が小さい方法から効率的に評価する考え方を示しています。男性パートナーが妊娠に関わる場合は、双方の評価を並行して始めることも重視しています。ASRM2026:不妊評価の進め方と検査一覧
女性の採血は、月経の状態と目的に合わせます
排卵の評価では、まず月経周期を確認します。必要な場合に黄体ホルモンの採血などを組み合わせます。黄体ホルモンを測る時期は、次の月経予定日のおよそ1週間前が一つの考え方で、全員が月経21日目というわけではありません。一回の値で黄体期の働きの良し悪しまで決めることもできません。
ASRM2026では、乳汁分泌や稀発月経・無月経がある場合などにプロラクチンを、甲状腺の異常を疑う症状などがある場合に甲状腺の検査を考えます。規則的な周期での排卵確認の扱いには指針による違いもあるため、全員がFSH・LH・E2・PRL・TSHを必須で同時に受ける、とは説明しません。
AMHは主に卵巣刺激に対する反応を見通す材料であり、「2〜6なら正常で妊娠できる」という判定表ではありません。年齢や治療歴などを合わせて解釈します。
卵管や子宮の検査は、疑われることに応じて選びます
HSGなどで卵管の通過性を調べ、必要に応じて子宮の形や内腔も評価します。HSGで通りにくく見える場合も、けいれんや検査条件の影響などを考えて追加確認することがあり、ただちに「必ず体外受精」と決まるわけではありません。
子宮鏡や腹腔鏡、MRIなどは、病歴・症状・先に見つかった異常に応じて検討します。全員への最初の検査セットではありません。妊娠の可能性、感染症の病歴、薬や造影剤へのアレルギーなどを事前に伝え、実施時期、痛みへの対応、帰宅後の注意を確認してください。
男性の評価は、精液の数字だけで終わりません
精液検査では量、精子の濃度・総数、運動、形態などを調べます。採取容器、禁欲期間、自宅採取の可否、持参までの時間と温度は、受ける施設の指示を確認してください。すべての施設で「3時間以内ならよい」とは決められません。採りこぼしや体調も伝えます。
WHOの参考値は、妊娠できる人とできない人を分ける線ではありません。総運動率と前進運動率、濃度と1回の射精の総精子数も異なる指標です。結果に問題があれば確認の再検査を考えますが、時期は所見により変わり、無精子症などが疑われる場合は早い再評価が必要になることもあります。
NICE NG257は、異常が続く場合の診察やホルモン検査、特定の所見に応じた遺伝学的検査などを示しています。全員が精巣生検や染色体検査を受けるわけではありません。必要に応じて男性不妊を診る泌尿器科へつなぎます。NICE NG257:男性側の評価と再検査
フーナー・免疫・着床関連検査は、全員の追加項目ではありません
フーナーテスト(性交後検査)は、頸管粘液中の動く精子を観察する検査です。ASRMとNICEは、妊娠の見通しを予測する価値などの限界から、不妊評価で日常的に行う検査としては勧めていません。提案された場合は、今回の目的、行わない場合の進め方、結果で治療が変わるかを聞いてください。
免疫検査や精子DNA断片化検査なども、全員が受ける検査ではありません。ASRM2026の反復着床不全の見解では、ERAなどの子宮内膜受容能パネルを日常診療で勧める根拠はなく、最初の移植前の一律の検査にもしていません。
追加検査を受ければ着床しない理由が必ず分かる、とする説明には注意が必要です。ASRM2026:反復着床不全と追加検査の限界
流産を繰り返す場合の評価、着床前の胚の検査、不妊の初期検査は目的が異なります。検査の名前をまとめて「精密検査一式」とせず、自分の経過に対する適応と、妊娠・出生などの結果を改善する根拠を確認しましょう。
日程・痛み・費用は、受ける検査ごとに確認します
月経や排卵の時期に合わせる検査もあり、初診日に全部が終わるとは限りません。一方、全員が同じ1〜2周期で終了するともいえません。予約時に月経日と、検査のための準備・来院回数、結果が出る時期を聞いてください。
保険の扱いは検査の目的や条件、組み合わせなどによって変わります。AMHが全員一律の金額で保険対象になる、すべての基本検査が同じ総額になる、とは決めません。
初診・再診、薬や画像検査などを含む見積もりと、保険・自費の内訳を施設で確認します。痛みへの対応や、帰宅後に強い痛み・発熱・多量の出血があるときの連絡先も事前に聞いておきましょう。
いつ相談するかと、初診で伝えること
ASRM2026は、特に妊娠しにくさが疑われる事情がなければ、避妊せず定期的に性交を持って35歳未満で12か月、35歳以上で6か月を評価の目安としています。
40歳を超える場合や、月経の問題、子宮・卵管の病歴、男性側の問題などがあれば、より早い評価を検討します。目安まで相談を我慢する必要はありません。
妊娠を希望している期間、月経と症状、前の検査・妊娠や治療、持病と薬を伝えます。「今回何を確かめ、結果が出たら何を決めるか」を一緒に確認し、必要な検査から進めましょう。
出典と確認日
2026年10月26日にASRM2026の不妊評価・反復着床不全とNICE NG257の採用箇所を確認しました。海外指針を日本の保険や全施設共通の実施方法として転記していません。医師による本記事の個別監修はありません。

この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
公的機関や医学会などの情報をもとに、女性の健康と医療の選択に役立つ情報を整理しています。