
不妊検査の結果の見方 — 基本の考え方
不妊検査の結果は「正常値の範囲内か否か」だけで判断するのではなく、年齢・月経周期・複数の検査値の組み合わせで総合的に解釈します。一つの検査値が基準範囲を外れていても、即座に「不妊の原因」と断定できるわけではなく、逆に全て正常でも妊娠しないケースも存在します。
ホルモン検査(採血)の結果の読み方
月経2〜5日目に採血し、卵巣機能・排卵障害・甲状腺・プロラクチン(高プロラクチン血症)の有無を評価します。
検査項目 | 略称 | 正常値の目安 | 異常時に考えること |
|---|---|---|---|
卵胞刺激ホルモン | FSH | 3〜10 mIU/mL(月経期) | 10以上:卵巣機能低下の可能性 |
黄体形成ホルモン | LH | 2〜15 mIU/mL | 著しく高い:多嚢胞性卵巣症候群(PCOS) |
エストラジオール | E2 | 20〜60 pg/mL(月経期) | 高い:卵胞が残っている可能性 |
プロラクチン | PRL | 4〜30 ng/mL | 高値:排卵障害・下垂体腺腫の可能性 |
甲状腺刺激ホルモン | TSH | 0.4〜4.0 μIU/mL | 異常:甲状腺機能異常→流産リスク上昇 |
抗ミュラー管ホルモン | AMH | 年齢によって異なる(下表参照) | 低値:卵巣予備能低下 |
AMH正常値の年齢別目安
年齢 | AMH正常値(ng/mL) |
|---|---|
25〜29歳 | 2.0〜6.8 |
30〜34歳 | 1.7〜5.3 |
35〜39歳 | 1.0〜3.5 |
40〜44歳 | 0.5〜2.0 |
※AMHは施設間・測定法によって基準値が異なります。結果の解釈は担当医に確認してください。
超音波検査(エコー)の見方
経腟超音波検査では子宮と卵巣の形態を確認します。
- 子宮の大きさ・形:子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮奇形の有無を確認。成人女性の正常子宮は長径7cm以下が目安
- 卵巣の大きさ・卵胞数:月経2〜5日目のAFC(胞状卵胞数)が5〜10個以上あると卵巣予備能が良好とされる。2〜4個以下では低AMHと合わせて卵巣機能低下を疑う
- チョコレート嚢胞:卵巣内に血液が溜まった嚢胞(子宮内膜症)。超音波で特徴的な「磨りガラス状」の像として確認できる
- PCOS(多嚢胞性卵巣):一側卵巣に12個以上の小卵胞が並ぶ「ネックレスサイン」が特徴
卵管造影検査(HSG)の見方
造影剤を子宮内に注入し、卵管を通って腹腔内に広がるかをX線で確認します。
- 正常:両側卵管が造影剤で満たされ、腹腔内への広がり(spillage)が確認できる
- 卵管閉塞:造影剤が途中で止まり広がらない。片側閉塞なら反対側から妊娠を目指せる。両側閉塞は体外受精が必要
- 水腫(ハイドロサルピンクス):卵管が水で膨らんでいる状態。体外受精の着床率を下げる可能性があり、手術的処置を検討することがある
精液検査の見方(WHO2021年版基準)
2021年改訂のWHO基準では、以前の基準よりも若干厳格化されています。
項目 | 正常基準値(WHO2021) |
|---|---|
精液量 | 1.4mL以上 |
精子濃度 | 1,600万/mL以上 |
総精子数 | 3,900万以上 |
前進運動率 | 32%以上 |
総運動率 | 42%以上 |
正常形態率 | 4%以上(厳密基準) |
一度の検査で基準を下回っても、精液の状態は日によって変動します。2週間以上の間隔をおいて再検査することが推奨されます。
異常値が出た場合の次のアクション
検査結果を受け取った後は、担当医と以下の点について確認することをお勧めします。
- 異常値の臨床的意味(治療が必要か、経過観察でよいか)
- 追加検査の必要性(ホルモン異常なら原因精査、卵管閉塞なら腹腔鏡の適応か)
- 治療方針の選択肢(複数の選択肢と各々のメリット・デメリット)
- 妊娠の確率(年齢・検査結果に基づいた現実的な見通し)
よくある質問
Q. 結果は当日わかりますか?
超音波検査の結果は当日確認できます。採血の結果は1〜2週間後の再診時に説明を受けることが多いです。HSGは検査直後に映像を見ながら説明を受けられます。
Q. 結果が正常でも治療を勧められることはありますか?
あります。年齢・妊活期間・パートナーの検査結果を合わせて総合判断するため、個々の検査が「正常」でも、全体的な妊孕性低下があれば治療を勧める場合があります。
Q. 自分で基準値を調べると心配になります。どう判断すれば?
基準値はあくまで目安です。一つの値だけで判断せず、複数の検査の組み合わせと年齢を含めて解釈する必要があります。ネットの情報で不安になった場合は、次の受診時に担当医に確認するのが最も確実です。
まとめ
不妊検査の結果は単独の数値ではなく、複数の検査値・年齢・月経周期・症状を組み合わせて読み解くものです。ホルモン値・超音波・卵管造影・精液検査それぞれの意味を理解した上で、担当医と次のステップを話し合うことが、最も効率的な妊活への近道です。
本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療の代替ではありません。検査結果の解釈は必ず担当医に確認してください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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