
体外受精で凍結保存された胚(受精卵)のグレードと、融解(解凍)後の生存率について詳しく知りたい方へ。胚のグレードは移植前に渡される資料に記載されていますが、「この数字が何を意味するか」を正確に理解している患者さんは多くありません。この記事では凍結胚のグレード評価体系・融解後の生存率データ・移植成功率との関係を解説します。
この記事でわかること
- 凍結胚のグレード評価システム(初期胚・胚盤胞)
- 融解後の生存率のデータ
- グレードと妊娠率の関係
- グレードが低い胚の移植価値
- 凍結・融解技術の進歩と現状
凍結胚のグレード評価体系
胚のグレード評価は発育段階によって異なる分類システムが使われます。
初期胚(Day2〜Day3)のグレード
分割段階の胚は細胞数(割球数)と均一性・フラグメンテーション(細胞の断片)で評価します。
- Grade 1:割球が均等で透明・フラグメンテーションなし(最良)
- Grade 2:割球がほぼ均等・フラグメンテーション10%未満
- Grade 3:割球の不均一あり・フラグメンテーション10〜25%
- Grade 4:フラグメンテーション25〜50%(移植対象になることも)
- Grade 5:フラグメンテーション50%超(通常移植対象外)
胚盤胞(Day5〜Day6)のGardner分類
胚盤胞は拡張度(1〜6)・内細胞塊(ICM:A/B/C)・栄養外胚葉(TE:A/B/C)の3軸で評価します(詳細は「胚盤胞グレードの見方」記事参照)。
- 4AA / 5AA / 6AA:最高グレード。妊娠率50〜60%以上(年齢による)
- 4AB / 4BA:良好グレード。妊娠率40〜55%
- 4BB:中グレード。妊娠率30〜45%
- 4BC / 4CB:低グレード。妊娠率15〜30%
融解後の生存率 — ガラス化凍結の現状
現在の凍結技術の主流はガラス化法(vitrification)です。超高速冷却(−196℃の液体窒素)により氷晶形成を防ぎ、細胞ダメージを最小化します。
- 胚盤胞の融解後生存率:95〜99%(良質な施設の場合)
- 初期胚(Day3)の融解後生存率:85〜95%
- 生存の定義:融解後に細胞の損傷が50%未満で継続発育可能なもの
以前使われていたスロー凍結法(緩慢凍結法)の生存率は70〜85%程度であったため、ガラス化法の普及により凍結胚移植の成績は大幅に向上しました。
融解後の妊娠率 — グレード・年齢・周期の影響
融解後の妊娠率はグレードだけでなく年齢・子宮内膜の状態・移植周期(自然周期 vs ホルモン補充周期)にも影響されます。
胚盤胞グレード | 35歳未満の妊娠率目安 | 38〜40歳の妊娠率目安 |
|---|---|---|
4〜6AA | 55〜65% | 35〜45% |
4〜6AB/BA | 45〜55% | 28〜38% |
4〜6BB | 35〜45% | 20〜30% |
4〜6BC/CB | 20〜35% | 10〜20% |
※上記は文献データに基づく参考値です。施設・移植条件・個人差により大きく異なります。
グレードが低い胚でも移植する価値はあるか
グレードが低い胚でも妊娠・出産につながるケースがあります。特に以下の場合は移植が検討されます。
- 他に移植できる胚がない場合
- 年齢的に次回の採卵を待てない場合
- 採卵できる卵子数が少なく、貴重な胚として保存してある場合
Grade 3〜4の初期胚でも妊娠報告は多数あり、形態学的グレードだけが移植価値のすべてではありません。着床前診断(PGT-A)によって染色体正常胚を選別することで、グレードの低さを補う方法もあります。
凍結保存期間と品質の関係
凍結保存期間と胚の品質・妊娠率については以下のエビデンスが報告されています。
- 適切な液体窒素管理下では10年以上の凍結保存でも妊娠率に大きな変化なし(複数の研究データあり)
- 温度管理が不十分な場合(停電・液体窒素補充ミス)は胚の損傷リスクあり
- 凍結保存料は多くのクリニックで年間2〜5万円程度
よくある質問
Q. グレードが低い胚を移植するかどうか、どう判断すればいいですか?
担当医と相談して決めるべき問題ですが、参考として「他に移植できる胚はあるか」「年齢・次の採卵の見込み」「これまでの移植歴」を考慮することが多いです。低グレード胚でも妊娠できた事例は多数あります。
Q. 融解後に生存しなかった胚はどうなりますか?
融解後の観察で生存していない・著しく損傷している胚は移植されません。その旨を担当医から説明を受けます。
Q. 凍結保存をいつまで続けられますか?
法的には決まった上限はありませんが、クリニックごとに保存期間の規定があります(多くは治療終了まで、または年更新)。詳細は通院中のクリニックに確認してください。
まとめ
凍結胚のグレードは形態学的な評価であり、それだけで妊娠の可否は決まりません。ガラス化凍結技術の普及により融解後の生存率は95%以上に達しています。グレードが低くても妊娠につながるケースはあるため、移植判断は担当医と十分に相談して決めることが重要です。
免責事項
本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。凍結胚の移植に関する判断は必ず担当医にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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