
ERA・EMMA・ALICE検査セット(トリオ検査)は、子宮内膜の着床環境を多角的に評価するために開発された3種類の検査を組み合わせたパッケージです。スペインのIVI(Instituto Valenciano de Infertilidad)が開発し、反復着床不全・習慣流産のカップルに対して実施されます。この記事では、各検査の意味・セットで行う理由・費用・期待できる効果を詳しく解説します。
この記事のポイント
- ERA・EMMA・ALICEそれぞれが何を調べる検査か分かる
- 3つをセットで行う理由・メリット・デメリットが理解できる
- 費用・保険適用・受けるべき対象者が分かる
トリオ検査とは何か
トリオ検査とは、ERA(子宮内膜受容能検査)・EMMA(子宮内膜微生物叢検査)・ALICE(慢性子宮内膜炎検査)の3つを1回の子宮内膜採取で同時に実施する検査パッケージです。それぞれ異なる角度から子宮内の状態を評価することで、反復着床不全の原因を包括的に探ります。
検査名 | 調べる内容 | 目的 |
|---|---|---|
ERA | 着床の窓(WOI)のタイミング | 個人最適な移植タイミングの特定 |
EMMA | 子宮内の細菌叢(ラクトバシラス比率) | 着床に適した子宮内環境の確認 |
ALICE | 慢性子宮内膜炎の原因菌 | 無症状の慢性炎症の検出・治療 |
ERA検査の詳細
ERA(Endometrial Receptivity Analysis)は、子宮内膜が胚を受け入れる準備が整っている時期(着床の窓:Window of Implantation)を遺伝子レベルで評価する検査です。
ERAが必要な理由
一般的な胚移植では、排卵後または黄体ホルモン投与後の決まった日程で移植が行われます。しかし、約25〜30%の女性では着床の窓が標準的なタイミングからずれており(前後1〜3日)、これが反復着床不全の一因となっている可能性があります。ERAでは236種類の遺伝子発現パターンを分析し、その患者に最適な移植タイミングを「pERT(個別化ERA推奨移植時間)」として算出します。
EMMA検査の詳細
EMMA(Endometrial Microbiome Metagenomic Analysis)は、子宮内膜の細菌叢(マイクロバイオーム)を次世代シーケンス解析で詳細に評価する検査です。健康な子宮内では乳酸菌(ラクトバシラス属)が90%以上を占めることが理想とされており、その比率が低い場合は着床率が低下するとする研究報告があります。
ALICE検査の詳細
ALICE(Analysis of Infectious Chronic Endometritis)は、慢性子宮内膜炎の原因となる病原菌(エンテロコッカス、ストレプトコッカス、大腸菌、マイコプラズマなど)を遺伝子レベルで検出する検査です。慢性子宮内膜炎は無症状のことが多く、通常の婦人科検診では発見が難しい疾患です。
慢性子宮内膜炎の有病率
反復着床不全の女性における慢性子宮内膜炎の有病率は30〜60%と報告されており(Cicinelli E et al., 2015)、適切な抗菌薬治療によって着床率・妊娠率が改善する可能性があります。
3つをセットで行う理由
トリオ検査を同時に実施する最大のメリットは、1回の採取で3つの情報を得られることです。
- 子宮内膜採取は患者への身体的負担(軽い疼痛・感染リスク)を伴う
- 採取タイミングは月経周期に合わせる必要があり、1回の採取で複数の検査を完了できれば時間・費用の節約になる
- 着床不全の原因が1つとは限らず、複合的に問題が存在することが多い(例:着床の窓がずれている+慢性子宮内膜炎がある)
費用と保険適用
トリオ検査はすべて自費診療が基本です(2024年時点で保険適用外)。
検査 | 単体費用の目安 |
|---|---|
ERA単体 | 8万〜15万円程度 |
EMMA単体 | 5万〜10万円程度 |
ALICE単体 | 5万〜10万円程度 |
トリオ(ERA+EMMA+ALICE)セット | 15万〜25万円程度(割引あり) |
※費用はクリニックや使用する検査会社によって大きく異なります。先進医療として認定されている施設では費用の一部が補助される場合があります。
トリオ検査が推奨される対象者
- 良好胚を3回以上移植しても着床しない(反復着床不全)
- 2回以上の流産歴がある(反復流産)
- 原因不明不妊で標準的な検査に異常がない
- 40歳以上で体外受精を控えている(貴重な胚を最善の環境で移植したい)
よくある質問
Q. トリオ検査を受ければ必ず妊娠できますか?
そのような保証はできません。トリオ検査は着床環境の改善を目的とするものですが、妊娠には卵子・精子の質、胚の染色体、子宮の形態など多くの要因が関わります。検査によって最適化できる要素を1つ除外できる、というイメージで捉えていただくのが適切です。
Q. ERAで「着床の窓がずれている」と分かった場合、移植はどうなりますか?
ERAの結果として「pERT(個別化移植タイミング)」が指定されます。次回以降の胚移植では、このpERTに合わせたホルモン補充スケジュールで移植を行います。pERT調整後の移植で着床率が向上した事例が多数報告されています。
Q. ALICE検査で病原菌が検出された場合の治療は?
検出された菌に合わせた抗菌薬治療(一般的には経口抗生物質を2〜4週間)が行われます。治療後に再検査してALICE陰性を確認してから胚移植に進むのが一般的な流れです。
Q. トリオ検査の採取はいつ(周期何日目)に行いますか?
ERA検査に合わせて採取タイミングが設定されます。ホルモン補充周期では黄体ホルモン投与開始後120時間(5日目)前後が一般的です。正確なタイミングは使用するホルモン薬の種類・投与量によって異なるため、担当医の指示に従ってください。
Q. 保険は使えますか?
2024年時点では保険適用外です。ただし高額療養費制度は個別の医療費(入院・手術など)が対象で、自費検査には通常適用されません。一部の自治体や施設では先進医療として認定されている場合があり、加入している医療保険(民間)の特約で補填できることがあります。加入している保険内容を確認してください。
まとめ
ERA・EMMA・ALICE検査のトリオセットは、反復着床不全・習慣流産の原因を1回の採取で包括的に調べることができる検査パッケージです。費用は高額ですが、原因が特定されれば治療方針が明確になり、次の移植に向けて最適化が可能です。
- 良好胚を複数回移植しても着床しない場合は、担当医にトリオ検査を相談してみる
- 採取タイミングは担当医の指示に厳密に従う
- 検査後の治療(pERT調整・抗菌薬治療・乳酸菌腟錠)と組み合わせることで効果を発揮する
免責事項:本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療の代替となるものではありません。検査の実施・結果の解釈については必ず担当医にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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