
EMMA検査(Endometrial Microbiome Metagenomic Analysis)は、子宮内膜の細菌叢(マイクロバイオーム)を次世代シーケンス解析で詳細に評価する検査です。健康な子宮内には乳酸菌(ラクトバシラス属)が豊富に存在することが理想とされており、乳酸菌の比率が低い場合に着床率が低下するとする研究が報告されています。この記事では、EMMA検査の目的・方法・費用・結果の解釈を分かりやすく解説します。
この記事のポイント
- EMMA検査で何を調べるのか、乳酸菌と着床の関係が理解できる
- 検査の手順・採取タイミング・費用が分かる
- 乳酸菌が少なかった場合の改善策と次のステップが理解できる
EMMA検査とは何か
EMMA検査は、子宮内膜から採取した細胞・分泌物の16S rRNA遺伝子を次世代シーケンシング(NGS)で解析し、子宮内に存在する細菌の種類と比率を定量的に評価する検査です。スペインのigenomix(旧IVI Biotech)が開発し、2016年以降、世界中の不妊治療施設で実施されています。
子宮内フローラと着床の関係
子宮内はかつて無菌状態と考えられていましたが、現在では固有の細菌叢(マイクロバイオーム)が存在することが明らかになっています。健康な子宮内では、乳酸菌(主にLactobacillus crispatus、L. inersなど)が細菌叢の90%以上を占めることが理想的です。
スペインIVI研究グループの研究(Moreno I et al., Fertility and Sterility, 2019)では、乳酸菌比率が90%未満のグループは、90%以上のグループと比較して着床率・継続妊娠率が有意に低く(着床率:33.3% vs 60.7%)、子宮内フローラが着床に重要な役割を果たすことが示されました。
EMMA検査が推奨される対象者
- 反復着床不全(良好胚を3回以上移植しても妊娠に至らない)
- 習慣流産・反復流産(2回以上の流産歴)
- ERA・ALICEとセット(トリオ検査)で実施する場合
- 原因不明不妊で標準的な検査に異常がない
検査の流れと方法
EMMA検査の手順はALICE検査・ERA検査と共通しており、1回の子宮内膜採取で同時に実施できます。
採取から結果まで
- 採取タイミングの決定:月経周期の黄体期(ホルモン補充周期では黄体ホルモン投与後)に合わせる
- 子宮内膜液のサンプリング:細いカテーテルで子宮内膜液を採取(5〜10分程度、軽い痛みあり)
- NGS解析:16S rRNA遺伝子を解析し、乳酸菌・その他の細菌の種類・比率を特定(結果まで2〜4週間)
- 結果説明:乳酸菌の比率・フローラの状態についての報告と治療方針の説明
結果の読み方
EMMA検査の結果は、乳酸菌の比率を中心に以下のように分類されます。
結果パターン | 乳酸菌比率 | 対応 |
|---|---|---|
正常(Lactobacillus-dominated) | 90%以上 | 治療不要。胚移植へ進む |
軽度乱れ | 60〜90% | 乳酸菌腟錠(腟坐薬)を検討 |
異常(Non-Lactobacillus-dominated) | 60%未満 | 乳酸菌腟錠+フローラ改善治療。再検査後に移植 |
乳酸菌比率が低かった場合の改善策
- 乳酸菌腟錠(ラクトバシラス製剤):腟・子宮内環境を乳酸菌優位にする腟坐薬。一般的に1〜3か月程度使用し、再検査でフローラの改善を確認
- ALICE検査との組み合わせ:乳酸菌が少ない場合は病原菌が増殖している可能性があるため、同時にALICE検査で確認することが多い
- 生活習慣の見直し:腸内フローラの改善(食事・運動・睡眠)が子宮内フローラに間接的に影響するとされるが、直接的なエビデンスは限定的
EMMA検査とALICE検査の違い
項目 | EMMA検査 | ALICE検査 |
|---|---|---|
調べること | 細菌叢全体の組成・乳酸菌比率 | 慢性子宮内膜炎の原因菌(特定の病原菌) |
目的 | 着床に適した細菌環境かどうかの評価 | 慢性子宮内膜炎の診断 |
治療 | 乳酸菌腟錠でフローラ改善 | 抗菌薬治療 |
採取方法 | 子宮内膜液サンプリング(同じ採取で可) | 子宮内膜液サンプリング(同じ採取で可) |
費用の目安
費用区分 | 目安 |
|---|---|
EMMA単体(自費) | 5万〜10万円程度 |
ERA+EMMA+ALICEトリオセット | 15万〜25万円程度(割引あり) |
保険適用 | 現時点(2024年)では保険外 |
よくある質問
Q. 乳酸菌比率が低い原因は何ですか?
腸内フローラの乱れ、抗生物質の長期使用歴、ストレス・免疫低下、慢性子宮内膜炎、性感染症の既往などが関連するとされています。ただし明確な原因が特定できないケースも多く、ALICE検査で病原菌の有無を確認することが有用です。
Q. 乳酸菌腟錠は市販品でも代用できますか?
市販の腟洗浄剤・サプリメントは医療用の乳酸菌腟錠とは成分・濃度が異なり、子宮内フローラへの有効性は確認されていません。必ず担当医から処方された製剤を使用してください。
Q. EMMA検査で正常でも着床しない場合があります。なぜですか?
EMMA検査は着床環境の一つの側面(フローラ)を評価するものです。着床不全の原因は他にも多数あり(着床の窓のズレ=ERA、免疫異常、子宮形態異常、胚染色体異常など)、EMMA検査で問題がなかった場合は他の原因を調べる必要があります。
Q. 改善後に再EMMA検査は必要ですか?
乳酸菌腟錠での治療後に再検査(再EMMA検査)を行い、フローラが改善していることを確認してから胚移植に進む施設が多いです。再検査なしで移植する施設もあるため、担当医に確認してください。
Q. EMMA検査の信頼性はどれくらいですか?
研究報告は増加していますが、エビデンスの蓄積はまだ途上です。「EMMA検査でフローラを改善すれば必ず妊娠できる」とは言えません。ただし反復着床不全の原因を探るうえで有用な情報を提供する検査であり、担当医の判断のもと活用することが推奨されます。
まとめ
EMMA検査は子宮内フローラの状態を定量的に評価し、乳酸菌が少ない場合に適切な改善策を選択できる検査です。反復着床不全・習慣流産の原因究明に有用で、ERA・ALICE検査と組み合わせることで着床環境をより包括的に評価できます。
- 良好胚を複数回移植しても着床しない場合は、担当医にEMMA検査を相談
- 乳酸菌比率が低かった場合は、乳酸菌腟錠による改善治療を試みる
- 改善後の再検査でフローラ正常化を確認してから胚移植に進む
免責事項:本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療の代替となるものではありません。検査の実施・結果の解釈については必ず担当医にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
産婦人科・婦人科に関する正確で信頼性の高い情報をお届けします。医療監修のもと、女性の健康に役立つコンテンツを制作しています。
Next Action

