
男性ホルモン検査とは、血液検査でテストステロン・FSH(卵胞刺激ホルモン)・LH(黄体形成ホルモン)などの値を測定し、精子形成能力や男性不妊の原因を特定する検査です。精液検査と組み合わせることで、男性不妊の約80%の原因が特定できます。
この記事のポイント
- テストステロン・FSH・LH・プロラクチンの役割と正常値
- 検査値の異常パターンと考えられる原因
- 検査の費用・保険適用・結果の読み方
男性ホルモン検査が必要な理由
精液検査で精子数が少ない・運動率が低いという結果が出た場合、ホルモン検査をおこなうことで「なぜ精子が少ないのか」という根本原因に迫れます。ホルモン値の組み合わせパターンから、治療方針が大きく変わります。
主要な男性ホルモン検査項目
ホルモン | 役割 | 正常値の目安 |
|---|---|---|
テストステロン(総) | 男性の主要な性ホルモン。精子形成・性欲・筋肉量に関与 | 250〜1,100 ng/dL |
FSH(卵胞刺激ホルモン) | 精細管に働きかけ精子形成を促進する | 1.5〜12.4 mIU/mL |
LH(黄体形成ホルモン) | ライディッヒ細胞に作用しテストステロン産生を促す | 1.7〜11.2 mIU/mL |
プロラクチン(PRL) | 高値になると性機能・精子形成を抑制する | 3〜14.7 ng/mL |
エストラジオール(E2) | 過剰な場合、精子形成を抑制する | 8〜43 pg/mL |
※正常値はクリニック・測定法により異なります。担当医の解説を参照してください。
FSH高値の意味——精巣の機能低下を示すサイン
FSHが高い場合、下垂体が「精子が足りない」と感知して過剰に分泌している状態です。FSH高値+精子数低下は、非閉塞性無精子症(精巣の精子産生能力低下)を強く示唆します。
FSH値と精子形成の関係
- FSH 正常 + 無精子症:閉塞性無精子症の可能性が高い(精路が詰まっている)
- FSH 高値 + 無精子症または乏精子症:非閉塞性無精子症・精巣機能不全の疑い
- FSH 低値 + テストステロン低値:視床下部・下垂体レベルの問題(低ゴナドトロピン性性腺機能低下症)
テストステロン低値が男性不妊に与える影響
テストステロンは精細管内でも高濃度に保たれており、精子形成に直接関与します。テストステロン低値は精子数減少・運動率低下・性欲減退・勃起障害(ED)などを引き起こす可能性があります。
テストステロン低値の主な原因
- 加齢(男性更年期障害 / LOH症候群)
- 精索静脈瘤(精巣の静脈が逆流し精巣温度が上昇、精子形成を障害する)
- 肥満(脂肪組織でテストステロンがエストロゲンに変換される)
- 慢性的なストレス・睡眠不足
- クラインフェルター症候群などの染色体異常
注意点として、テストステロン補充療法(注射・ジェル)は外から補充することで内因性のテストステロン産生がさらに低下し、精子形成が悪化するリスクがあります。不妊治療中は安易にテストステロン補充をおこなわないことが重要です。
プロラクチン高値——見落とされがちな原因
プロラクチン(PRL)の過剰分泌(高プロラクチン血症)は、FSH・LHの分泌を抑制してテストステロン産生を低下させます。精子形成障害・EDの原因として見落とされがちな項目です。
高プロラクチン血症の主な原因
- 下垂体腺腫(プロラクチノーマ)
- 抗精神病薬・胃腸薬(ドンペリドン等)の副作用
- 甲状腺機能低下症
- 慢性的な精神的ストレス(軽度の上昇)
高プロラクチン血症と診断された場合、カベルゴリンなどのドパミン作動薬で多くのケースが改善します。
検査の受け方——採血だけで完了
男性ホルモン検査は採血のみで完了します。特別な前処置は不要ですが、正確な結果を得るためのポイントがあります。
採血のタイミングと注意点
- 採血時間:テストステロンは午前中(8〜10時)に最も高く、日中低下する日内変動がある。午前中の採血が推奨される
- 禁欲期間:精液検査と同時施行する場合は2〜7日間の禁欲が必要
- 空腹状態:ホルモン検査自体は空腹不要だが、脂質検査等を同時おこなう場合は注意
- ステロイド薬・ホルモン剤:服用中の場合は事前に医師に申告する
費用と保険適用
ホルモン検査は2022年の不妊治療保険適用拡大以降、適応条件を満たす場合は保険診療でおこなえます。
検査項目 | 自費診療 | 保険診療(3割負担目安) |
|---|---|---|
テストステロン | 3,000〜5,000円 | 約400〜600円 |
FSH・LH(各) | 3,000〜5,000円 | 約400〜600円 |
プロラクチン | 3,000〜5,000円 | 約400〜600円 |
ホルモンパネル(一括) | 1万5,000〜3万円 | 2,000〜5,000円 |
検査結果に基づく治療の選択肢
ホルモン値の異常が特定されれば、原因に合わせた治療が可能です。
主な治療アプローチ
異常パターン | 主な治療法 |
|---|---|
低ゴナドトロピン性(FSH/LH低値) | ゴナドトロピン療法(hCG・FSH注射)で精子形成を促進 |
高プロラクチン血症 | ドパミン作動薬(カベルゴリン)の投与 |
精索静脈瘤+ホルモン異常 | 精索静脈瘤結紮術でテストステロン・精子数が改善する場合あり |
SCO症候群(FSH高値) | 根本治療は困難。micro-TESEによる精子採取を試みる |
よくある質問
Q. テストステロンが低いと男性不妊になりますか?
A. テストステロン低値は精子形成障害の原因になり得ますが、テストステロン補充療法は逆効果になるため、必ず専門医に相談してください。
Q. FSHが高いと治療できませんか?
A. FSH高値でも治療の選択肢はあります。ゴナドトロピン療法や精索静脈瘤手術で改善するケースもあり、micro-TESEで精子採取できるケースもあります。
Q. 何科で受ければいいですか?
A. 泌尿器科(男性不妊専門)または不妊専門クリニックの男性外来が適切です。内科での検査も可能ですが、不妊治療との連携という観点では専門科が望ましいです。
Q. 生活習慣を変えるとホルモン値は改善しますか?
A. 肥満解消・禁煙・禁酒・睡眠確保・ストレス管理でテストステロンが改善するケースがあります。ただし医学的原因がある場合は生活習慣だけでは不十分なため、まず検査が先決です。
Q. 筋トレのためにテストステロン補充をしていますが問題ありますか?
A. 外因性テストステロンは精子形成を強く抑制します。妊活中のテストステロン補充は原則避け、使用中の場合は必ず医師に申告してください。
まとめ:ホルモン検査は男性不妊の「原因の地図」
テストステロン・FSH・LH・プロラクチンを測定することで、精子形成障害の原因が下垂体・精巣・精路のどこにあるかを特定できます。
- FSH高値:精巣機能低下(非閉塞性無精子症)の可能性
- テストステロン低値:LOH症候群・精索静脈瘤・染色体異常等
- プロラクチン高値:下垂体腺腫・薬剤性——治療で改善しやすい
免責事項
本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療の代替となるものではありません。個々の症状・状況については、必ず医療機関の医師にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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