
CT検査は不妊診断の場面で使われることがありますが、「なぜCTなのか」「放射線の影響が心配」と感じる方も多いでしょう。この記事では、CT検査が不妊診断においてどのような場面で選択され、超音波・MRIと何が違うのかを、放射線の影響も含めて詳しく解説します。
この記事のポイント
- 不妊診断でCT検査が使われる具体的な場面と目的
- CT検査の放射線量と妊娠・卵巣への影響
- 超音波・MRIとCTの使い分けの基準
不妊診断でCT検査が使われる場面
不妊の初期検査では超音波(エコー)が第一選択ですが、CT検査は骨盤内腫瘍の性状把握、子宮筋腫・卵巣嚢腫の詳細評価、腹腔内の癒着や血管異常の確認が必要な場合に選択されます。通常の不妊スクリーニングでCTを最初から使うことは少ないです。
CT検査が選択される主なケース
- 卵巣腫瘍の性状評価:超音波で確認された卵巣嚢腫の内部構造を詳しく評価する場合
- 子宮筋腫の術前評価:多発筋腫の位置・数の全体把握や血管との関係を確認する場合
- 骨盤内臓器全体の評価:子宮内膜症による深部浸潤の範囲確認(ただし通常はMRIが優先)
- 骨盤内炎症性疾患(PID)の評価:抗生剤治療の効果確認や膿瘍形成の有無
- 腫瘍マーカー高値の場合:CA125上昇など悪性腫瘍が疑われる際の全身評価
通常の不妊検査でCTが不要な理由
不妊検査の基本(ホルモン検査・超音波・精液検査・卵管造影)で大多数の原因は特定できます。CTは軟部組織の分解能がMRIより低く、放射線被ばくを伴うため、不妊診断の最初から使われることはほとんどありません。
CT検査の放射線量と妊娠・生殖器への影響
CT検査の最大の懸念は放射線被ばくです。骨盤部CT1回の実効線量は約3〜10mSv程度です。これは自然放射線の年間被ばく量(日本平均約2.1mSv)の1〜5倍に相当しますが、確定的影響(細胞死・奇形)が生じるしきい値(100mSv以上)には大きく下回ります。
卵巣・卵子への影響
検査 | 卵巣への推定線量 | リスク評価 |
|---|---|---|
腹部・骨盤部CT | 約20〜40mGy | 過剰リスクは非常に低い(確率的影響の理論的増加は無視できるレベル) |
胸部CT | 0.01mGy未満 | 卵巣への影響はほぼゼロ |
X線胸部撮影 | 0.001mGy未満 | 影響なし |
卵子の放射線感受性は細胞分裂期に高く、休止期(原始卵胞)は比較的低いとされています。骨盤部CT1回の線量で卵子が大量に失われる可能性は極めて低いと考えられています(日本産科婦人科学会 放射線治療に関するガイドライン)。
妊娠中にCTを受けた場合
妊娠中の腹部CTは胎児への影響が懸念されますが、緊急時(腹部外傷・急性虫垂炎など)には診断上の利益がリスクを上回る場合があります。妊娠初期(器官形成期:妊娠2〜8週)の被ばくは特に注意が必要で、胎児への線量が50mGyを超えると奇形リスクが上昇するとされています。妊活中・妊娠の可能性がある場合は、必ず検査前に担当医へ申告してください。
CT・MRI・超音波の使い分け
不妊診断において各画像検査には役割の違いがあります。担当医は目的に応じて最適な検査を選択します。
検査 | 得意な評価 | 不得意な評価 | 放射線 | 費用目安(保険3割) |
|---|---|---|---|---|
経腟超音波 | 卵胞発育、子宮内膜、卵巣嚢腫スクリーニング | 深部・広範囲の評価 | なし | 数百円〜 |
MRI | 子宮内膜症、筋腫変性、軟部組織詳細 | 石灰化、緊急時 | なし | 約5,000〜1万5,000円 |
CT | 骨盤内全体、腫瘍の石灰化・血管、急性病変 | 子宮内膜・卵巣詳細 | あり(低〜中) | 約5,000〜1万5,000円 |
子宮卵管造影(HSG) | 卵管の開存性、子宮腔内形態 | 卵巣・腸管 | あり(微量) | 約1万〜2万5,000円 |
CT検査の手順と当日の流れ
CT検査の当日は絶食が必要な場合(造影剤使用時)があります。事前に担当医・検査技師から説明を受けてください。
検査当日の流れ
- 受付・問診:アレルギー歴・腎機能・妊娠の可能性を確認
- 更衣:金属類(ブラジャーのワイヤー、ピアスなど)をすべて外す
- 造影剤投与(造影CTの場合):静脈から造影剤を注射。ヨード造影剤アレルギーがある方は事前申告が必須
- 撮影:装置に入り、息を止めながら撮影。所要時間は5〜15分程度
- 安静・経過観察:造影剤使用後は30分程度の経過観察(アレルギー反応の確認)
造影剤と妊娠・授乳への影響
ヨード造影剤は胎盤を通過するため、妊娠中の使用は原則避けられます。授乳中の場合、造影剤の乳汁への移行は少量ですが、検査後24時間の授乳中断を指示する施設もあります。担当医の指示に従ってください。
CT検査の費用と保険適用
CTは保険診療で行われることがほとんどですが、検査の目的や施設によって費用が異なります。
費用の目安
CT検査の種類 | 保険点数(参考) | 自己負担(3割)目安 |
|---|---|---|
腹部・骨盤CT(単純) | 約900〜1,200点 | 約2,700〜3,600円 |
腹部・骨盤CT(造影) | 約1,600〜2,000点+造影剤 | 約5,000〜8,000円 |
16列以上マルチスライスCT(骨盤) | 約1,020点 | 約3,060円 |
※2024年4月時点の参考値です。診察料・注射料・薬剤料が別途加算されます。
CT検査前後の注意事項
CT検査を安全に受けるために、事前に確認すべき点があります。特に不妊治療中の方は担当医への申告を怠らないようにしましょう。
- 金属・磁性体:ペースメーカーはCTでは問題ありませんが、MRIでは禁忌です
- 腎機能:造影剤は腎臓で排泄されるため、腎機能が低下している方は事前に血液検査が必要
- 糖尿病治療薬(メトホルミン):造影剤使用前後48時間は服用を中断する必要があります(乳酸アシドーシス予防)
- 妊娠・妊活中:必ず事前に申告。妊娠中は代替検査(MRI・超音波)を優先
- 授乳中:造影剤使用後の授乳中断について確認
よくある質問
Q. 不妊治療中にCTを受けても大丈夫ですか?
担当医が必要と判断した場合は受けても問題ありません。骨盤部CT1回の卵巣への線量は確定的影響のしきい値を大幅に下回ります。ただし、必要性が低い場合は超音波やMRIで代替できないか担当医に確認しましょう。
Q. CT検査後すぐに体外受精の移植はできますか?
通常は問題ありません。ただし造影剤を使用した場合、甲状腺機能への影響(ヨード負荷)が移植周期に与える可能性について担当医に確認することを推奨します。
Q. 子宮内膜症はCTでわかりますか?
子宮内膜症の詳細な評価にはMRIが優れています。CTでは深部浸潤型の一部は確認できますが、卵巣チョコレート嚢胞の内部特徴や子宮腺筋症の評価はMRIが第一選択です。
Q. 卵巣嚢腫を指摘されてCTを勧められました。必要ですか?
卵巣嚢腫の初期評価は超音波が基本ですが、腫瘍の性状(悪性の可能性)を詳しく評価する場合はCTやMRIが追加されることがあります。担当医の説明を聞き、必要性を確認してください。
Q. 放射線の影響を最小にするにはどうすればよいですか?
必要な検査のみを受けること、同じ検査の重複を避けること、施設間で画像データを共有することが有効です。「前の病院でも撮りました」と申告すれば、再撮影を回避できる場合があります。
まとめ
CT検査は不妊診断の標準的な初期検査ではなく、骨盤内腫瘍の評価・術前精査・急性病変の確認など特定の目的に使われます。放射線量は1回の検査では確定的影響のリスクはほぼなく、医師が必要と判断した場合は過度に恐れる必要はありません。ただし、妊娠中・妊活周期中の場合は必ず担当医に申告し、代替検査の可能性を確認してください。
次のステップ:「CTが必要といわれたが不安」「放射線の影響が心配」という方は、担当医に検査の目的と代替手段を具体的に質問することをお勧めします。説明を受ける権利はすべての患者にあります。
※本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療を目的とするものではありません。症状や治療については必ず担当医にご相談ください。掲載情報は2024年時点のものです。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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