
乏精子症と診断されたら——治療法と妊娠の可能性を整理する
乏精子症(精子数が少ない状態)と診断されると不安を感じるのは当然です。しかし乏精子症は男性不妊の中で最も多い状態のひとつであり、治療の選択肢も豊富です。精子数の程度によって推奨される治療が異なりますので、まず現状を正確に把握しましょう。
乏精子症の定義と重症度分類
WHO(2021年版)の基準では、精子濃度が1600万/mL未満を乏精子症と定義しています。
分類 | 精子濃度 | 治療の方向性 |
|---|---|---|
軽度乏精子症 | 500〜1600万/mL | タイミング法・IUIを試みてよい |
中等度乏精子症 | 100〜500万/mL | IUI→IVFへのステップアップ |
重度乏精子症 | 100万/mL未満 | IVF+ICSI(顕微授精)が推奨 |
極度乏精子症 | 数十万/mL以下 | ICSI。無精子症に近い評価が必要 |
精子濃度だけでなく、運動率・形態率・DNAフラグメンテーション指数(DFI)も合わせて評価することが重要です。
乏精子症の主な原因
- 精索静脈瘤:男性不妊の35〜40%に見られる。精巣温度上昇が精子産生を阻害
- ホルモン異常:テストステロン低下、下垂体機能異常
- 生活習慣:喫煙、大量飲酒、肥満、長時間の熱暴露
- 染色体異常:Y染色体微小欠失(AZF領域)
- 薬剤の影響:ステロイド、一部の抗生物質
- 特発性(原因不明):約40〜50%を占める
治療法——状況別に選ぶ3つのルート
ルート1:原因治療(精索静脈瘤手術・ホルモン療法)
原因が特定できた場合、まず原因治療を行います。精索静脈瘤の手術では、術後3〜6ヶ月で精液所見が改善することが多く、自然妊娠率も向上します。クロミフェン(クロミッド)等のホルモン療法で精子産生を刺激する方法もあります。
ルート2:人工授精(IUI)
運動精子を選別・濃縮して子宮内に直接注入します。1周期あたりの妊娠率は5〜15%程度で、3〜6周期試みます。軽〜中等度の乏精子症で、女性側に問題がない場合に有効です。
ルート3:体外受精+顕微授精(IVF/ICSI)
重度乏精子症や原因治療・IUIで妊娠しない場合はIVFへステップアップします。ICSIは1個の精子を直接卵子に注入するため、精子数が極めて少ない場合でも受精が可能です。
精子数を増やす生活習慣——3〜6ヶ月で変化を確認
- 禁煙:喫煙は精子産生・DNA損傷の両方に悪影響。禁煙3ヶ月後に精液所見改善の報告あり
- 過体重の解消:BMI 30以上では精子数が有意に低下。適正体重に近づけることで改善が期待
- 陰嚢の過熱を避ける:サウナ・長時間の熱暴露を避ける。精巣は体温より2〜4℃低い必要がある
- 亜鉛・葉酸・抗酸化物質:食品(牡蠣・レバー・ナッツ類)またはサプリで補充
- 禁欲期間の調整:長すぎる禁欲(10日以上)は精子の質を下げる場合がある。2〜5日が推奨
治療のタイムライン目安
- 受診〜原因精査:1〜2ヶ月(精液検査×2〜3回、ホルモン検査、超音波)
- 精索静脈瘤手術後の確認:術後3〜6ヶ月で再検査
- IUI:3〜6周期(3〜6ヶ月)
- IVF/ICSIへのステップアップ:IUI不成功後
女性のパートナーの年齢も考慮し、年齢が高い場合(35歳以上など)は原因治療とIVFを並行して検討することも重要です。
よくある疑問Q&A
Q. 乏精子症でも自然妊娠できますか?
軽度の乏精子症であれば自然妊娠は可能です。しかし女性側の年齢・周期数を考慮すると、早めの医療介入が合理的なことが多いです。
Q. 精子数は薬で増やせますか?
ホルモン補充(FSH注射、クロミフェン)や漢方(補中益気湯、八味地黄丸)などで精子数が増加したという報告があります。ただし効果の大きさには個人差があります。
Q. 精子数が少ないのは遺伝しますか?
特発性の場合は必ずしも遺伝しません。ただしY染色体微小欠失による乏精子症は男児に遺伝するため、遺伝カウンセリングが推奨されます。
Q. ICSIで生まれた子どもへの健康影響は?
現在のエビデンスでは、ICSIで生まれた子どもの重大な健康問題の増加は示されていませんが、長期フォローアップ研究は継続中です。主治医に最新情報を確認してください。
Q. 治療開始のタイミングはいつがよいですか?
パートナー女性の年齢が35歳以上、または不妊期間が1年以上であれば早急に専門医を受診することをお勧めします。
まとめ
乏精子症と診断されたら、以下のステップで対応しましょう。
- 精子の重症度・原因を精査(精索静脈瘤・ホルモン・染色体)
- 原因がある場合は治療(手術・ホルモン療法)を先に行う
- 軽〜中等度ならIUI、重度ならICSIへ。女性の年齢も考慮してステップを組む
- 生活習慣の改善を並行して3〜6ヶ月継続
乏精子症は適切な治療でパートナーとの妊娠が十分可能な状態です。専門医とともに最善の道を探しましょう。
【免責事項】本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。治療方針については必ず担当医師にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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