
ALICE検査(Analysis of Infectious Chronic Endometritis)は、慢性子宮内膜炎の原因となる細菌を遺伝子レベルで検出する検査です。慢性子宮内膜炎は症状がほとんどなく通常の検査では見つかりにくいため、反復着床不全・習慣流産の隠れた原因として注目されています。この記事では、ALICE検査の仕組み・対象者・結果の読み方・治療法を分かりやすく解説します。
この記事のポイント
- 慢性子宮内膜炎とは何か、なぜ着床に影響するのかが分かる
- ALICE検査の方法・採取タイミング・費用が理解できる
- 陽性だった場合の治療と次のステップが分かる
ALICE検査とは何か
ALICE検査は、子宮内膜から採取したサンプルを次世代シーケンス(NGS)解析し、慢性子宮内膜炎の原因となる特定の病原菌(エンテロコッカス・ストレプトコッカス・大腸菌・マイコプラズマ・ウレアプラズマなど)を定量的に検出する検査です。スペインのIVI Biotech(現igenomix)が開発し、世界中の不妊治療クリニックで採用されています。
慢性子宮内膜炎とは
慢性子宮内膜炎(CE:Chronic Endometritis)は、子宮内膜に持続的な低度炎症が起きている状態です。急性子宮内膜炎と異なり発熱・強い痛みなどの症状がほとんどなく、超音波検査でも特異的な所見が見られないことが多いため、不妊の原因と気づかれにくいのが特徴です。
イタリアのCicinelliら(2015)の研究では、反復着床不全の女性における慢性子宮内膜炎の有病率は約45%と報告されており、適切な抗菌薬治療後に着床率・妊娠継続率が有意に改善することが示されています。
ALICE検査が推奨される対象者
- 反復着床不全(良好胚を3回以上移植しても妊娠に至らない)
- 習慣流産・反復流産(2回以上の流産歴)
- 不妊原因が不明(標準的な不妊検査で異常が見つからない)
- 子宮鏡で子宮内膜の発赤・浮腫・微小ポリープが見られた
- ERA・EMMA検査とセット(トリオ検査)で実施する場合
検査の流れと採取方法
ALICE検査は子宮内膜液のサンプリングによって行われます。採取・分析の流れは以下のとおりです。
検査の手順
- 採取タイミングの決定:黄体期(ERA検査と同時実施の場合はpERT設定時)に合わせる
- 子宮内膜のサンプリング:細いカテーテルを子宮内に挿入し、子宮内膜液を採取(5〜10分程度)
- NGS解析:採取サンプルをigenomixの検査室に送付し、遺伝子解析で病原菌を定量(結果まで2〜3週間)
- 結果報告・治療方針決定:病原菌の種類と量に応じた抗菌薬治療を開始
採取時の痛みについて
生理痛に似た軽い痛みや違和感が生じる場合があります。採取自体は数分で終わりますが、子宮頸管が狭い方は事前に担当医に相談することをお勧めします。採取後は念のため30分程度安静にし、帰宅後も激しい運動は避けることが推奨されます。
結果の読み方
ALICE検査の結果は以下のように報告されます。
結果 | 意味 | 対応 |
|---|---|---|
陰性(Negative) | 慢性子宮内膜炎の原因菌が検出されなかった | 治療不要。胚移植へ進む |
陽性(Positive) | 特定の病原菌が検出された | 抗菌薬治療(2〜4週間)を実施。治療後に再検査を推奨 |
陽性だった場合の治療
検出された菌の種類に応じて、抗菌薬が処方されます。一般的に使用される薬剤は以下のとおりです(担当医の判断により異なります)。
- テトラサイクリン系抗生物質(ドキシサイクリンなど):広域スペクトラム、マイコプラズマ・ウレアプラズマにも有効
- フルオロキノロン系(レボフロキサシンなど):グラム陽性・陰性菌両方に有効
- 治療後2〜4週間で再検査(再ALICE検査)を実施し、陰性を確認してから胚移植に進む
費用の目安
費用区分 | 目安 |
|---|---|
ALICE単体(自費) | 5万〜10万円程度 |
ERA+EMMA+ALICEトリオセット | 15万〜25万円程度 |
保険適用 | 現時点(2024年)では保険外 |
よくある質問
Q. ALICE検査と子宮鏡検査はどう違いますか?
子宮鏡検査では子宮内を直接観察し、発赤・微小ポリープ・浮腫などの視覚的な異常を確認します。ALICE検査は肉眼では見えない病原菌を遺伝子レベルで検出します。子宮鏡で「慢性子宮内膜炎疑い」と診断された場合にALICE検査で確認するケースも多いです。
Q. ALICE陽性の場合、抗菌薬治療で必ず治りますか?
大多数の場合は抗菌薬治療で陰性化できますが、菌の種類や抗菌薬耐性によっては治療を繰り返す必要があることもあります。治療後の再検査で陰性確認が重要です。
Q. ALICE検査を受けなくても子宮鏡で慢性子宮内膜炎を診断できますか?
子宮鏡での診断は有効ですが、感度・特異度にはばらつきがあります。また子宮鏡では「炎症の存在」は分かりますが「原因菌の種類」は特定できません。どの菌を原因とするかを特定するためにはALICE検査が有用です。
Q. 慢性子宮内膜炎は性感染症と同じですか?
必ずしもそうではありません。慢性子宮内膜炎の原因菌にはクラミジアのような性感染症の病原体が含まれることもありますが、大腸菌・エンテロコッカスのような常在菌が過剰増殖して起きるケースも多いです。パートナーへの感染リスクについては担当医に相談してください。
Q. 抗菌薬服用中の副作用はありますか?
一般的な抗生物質の副作用として、胃腸障害(吐き気・下痢)、腸内フローラの乱れ、日光過敏(テトラサイクリン系)などがあります。治療中に気になる症状が現れた場合は担当医に相談してください。
まとめ
ALICE検査は慢性子宮内膜炎の原因菌を遺伝子レベルで特定できる検査で、反復着床不全・習慣流産の原因究明に有効です。陽性だった場合は抗菌薬治療で着床環境を改善できる可能性があります。
- 良好胚を複数回移植しても着床しない場合は、担当医にALICE検査を相談
- 陽性の場合は適切な抗菌薬治療を行い、再検査で陰性を確認してから胚移植に進む
- ERA・EMMA検査と組み合わせたトリオ検査で、着床環境を包括的に評価することも選択肢
免責事項:本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療の代替となるものではありません。検査の実施・結果の解釈については必ず担当医にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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