
女性の体にもテストステロンは存在する
テストステロンは「男性ホルモン」として知られていますが、女性の体内でも卵巣と副腎から分泌されている重要なホルモンです。女性のテストステロン濃度は男性の約1/10〜1/20ですが、エストロゲンの原料となるほか、筋肉の維持、骨密度、性欲、気力・活力など多くの生理機能に関わっています。
女性のテストステロン正常値
指標 | 正常範囲 |
|---|---|
総テストステロン | 0.1〜0.8 ng/mL(10〜80 ng/dL) |
遊離テストステロン | 0.3〜2.0 pg/mL |
テストステロンが女性の体に与える影響
適正量のテストステロンは女性の心身の健康に多面的に寄与しています。不足しても過剰でも不調が生じるため、バランスが重要です。
テストステロンの主な作用
作用 | 適正量の効果 | 過剰時の症状 |
|---|---|---|
筋肉・骨 | 筋力維持、骨密度保持 | 筋肉質な体型 |
性欲・性機能 | リビドーの維持 | 性欲過剰(まれ) |
気力・活力 | 意欲・集中力の維持 | 攻撃性の増加(まれ) |
皮膚・毛髪 | 正常な皮脂分泌 | ニキビ、多毛、脱毛 |
代謝 | 脂肪分布の調整 | 内臓脂肪の蓄積 |
生殖機能 | 卵胞発育のサポート | 排卵障害(PCOS) |
テストステロン過剰(高アンドロゲン血症)の原因と症状
女性のテストステロン過剰の最も一般的な原因はPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)で、生殖年齢女性の5〜10%に認められます。
主な原因
- PCOS — 卵巣からのアンドロゲン過剰産生
- 副腎過形成(先天性副腎過形成) — 副腎からのアンドロゲン過剰
- クッシング症候群 — コルチゾール過剰に伴うアンドロゲン上昇
- 卵巣腫瘍・副腎腫瘍 — アンドロゲン産生腫瘍(まれ)
- インスリン抵抗性 — 高インスリンが卵巣のアンドロゲン産生を刺激
テストステロン過剰の症状
- ニキビ — 特に顎・フェイスラインに繰り返すニキビ
- 多毛症 — 顔面(口周囲・顎)、腹部、大腿部の体毛増加
- 男性型脱毛 — 頭頂部を中心とした薄毛
- 月経不順 — 希発月経、無月経
- 不妊 — 排卵障害による
- 体型の変化 — 腹部肥満、ウエスト周囲径の増加
テストステロン低下の影響
テストステロンは加齢とともに減少し、更年期以降はさらに低下します。テストステロン低下はエストロゲン低下とは異なる症状パターンを呈し、QOL(生活の質)に大きく影響します。
テストステロン低下の症状
- 性欲の低下 — エストロゲン補充だけでは改善しない性欲減退
- 疲労感・倦怠感 — 休息をとっても回復しにくい
- 筋力低下 — 筋肉量の減少、握力低下
- 気力・集中力の低下 — モチベーションの減退
- 骨密度低下 — エストロゲンと相乗的に骨を守る作用が減弱
- 抑うつ気分 — 意欲低下を伴う気分の落ち込み
テストステロンが低下しやすいタイミング
- 卵巣摘出後 — テストステロンの約50%が卵巣由来のため急激に低下
- 副腎機能低下 — 残りの50%を担う副腎の機能低下
- 加齢(40代後半〜) — 閉経前後から緩やかに低下
- 低用量ピル長期服用 — SHBGが上昇し遊離テストステロンが低下
検査と治療の選択肢
テストステロンの過剰・不足が疑われる場合は、血液検査でホルモン値を確認したうえで治療方針を決定します。
検査項目
検査 | 目的 |
|---|---|
総テストステロン | 全体的なアンドロゲン量の評価 |
遊離テストステロン | 活性型テストステロンの評価 |
SHBG | テストステロンの結合タンパク量 |
DHEA-S | 副腎由来のアンドロゲン評価 |
17-OHプロゲステロン | 先天性副腎過形成の除外 |
テストステロン過剰の治療
- 低用量ピル — 卵巣のアンドロゲン産生を抑制し、SHBGを上昇させて遊離テストステロンを低下
- スピロノラクトン — 抗アンドロゲン作用で皮膚症状を改善
- メトホルミン — インスリン抵抗性の改善を通じてアンドロゲンを低下
- 生活習慣改善 — 減量、低GI食、運動
テストステロン低下の治療
女性のテストステロン補充療法は研究段階であり、日本では女性への適応のある製剤はありません。海外では更年期女性の性欲低下に対して低用量テストステロンパッチやクリームが処方されるケースがありますが、長期安全性のデータは限られています。
よくある質問
テストステロンが高いとPCOSですか?
テストステロン高値はPCOSの一つの所見ですが、それだけでは診断できません。月経異常、超音波での多嚢胞性卵巣所見を含む複数の基準で総合的に判断されます。
ピルを飲むとテストステロンは下がりますか?
はい。低用量ピルはSHBGを上昇させて遊離テストステロンを低下させ、さらに卵巣のアンドロゲン産生も抑制します。特に抗アンドロゲン作用のある黄体ホルモン(ドロスピレノン、酢酸シプロテロン)を含むピルが効果的です。
筋トレをすると女性もテストステロンが上がりますか?
一時的に上昇しますが、健康的な範囲内であり、男性化するほどの上昇は起こりません。適度な筋力トレーニングは骨密度や代謝の維持に有益です。
更年期でテストステロンが低いと言われました。治療できますか?
日本では女性向けのテストステロン補充製剤は未承認です。DHEA補充が間接的にテストステロンを上昇させる可能性がありますが、産婦人科医と相談のうえで判断してください。
テストステロンの値は月経周期で変わりますか?
はい。排卵前後にやや上昇し、月経期に低下する傾向があります。正確な評価には卵胞期早期(月経3〜5日目)の測定が推奨されます。
まとめ
テストステロンは女性の体内でも筋肉・骨・性欲・気力の維持に重要な役割を果たしています。過剰(PCOSなど)ではニキビ・多毛・排卵障害、不足(更年期・卵巣摘出後など)では性欲低下・疲労・筋力低下が問題となります。テストステロンのバランス異常が疑われる場合は、血液検査で確認したうえで、原因に応じた治療(ピル、スピロノラクトン、生活習慣改善など)を行いましょう。
ニキビ・多毛や性欲低下・疲労感が気になる方は、婦人科でテストステロンを含むホルモン検査を受けることをおすすめします。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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