
プロラクチンとは|授乳以外の重要な役割
プロラクチン(PRL)は脳の下垂体前葉から分泌されるホルモンで、乳汁分泌を促す作用が最もよく知られています。しかし、プロラクチンの役割はそれだけではなく、免疫機能、代謝、生殖機能など300以上の生理機能に関与するとされ、女性の妊活においても重要な評価項目です。
プロラクチンの基準値
状態 | PRL値 |
|---|---|
正常(非妊娠・非授乳時) | 3〜15 ng/mL |
軽度高値(要経過観察) | 15〜30 ng/mL |
高プロラクチン血症 | 30 ng/mL以上 |
妊娠中 | 200 ng/mL以上に上昇 |
授乳中 | 100〜300 ng/mL |
プロラクチンが妊活に与える影響
プロラクチンの過剰分泌(高プロラクチン血症)は、GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)の分泌を抑制し、排卵障害を引き起こします。不妊症の原因精査で見つかる内分泌異常の中でも比較的頻度の高い疾患です。
排卵障害のメカニズム
- プロラクチンが過剰に分泌される
- 視床下部のGnRHパルス分泌が抑制される
- 下垂体からのFSH・LH分泌が低下する
- 卵胞の発育と排卵が障害される
- 黄体機能不全または無排卵に
高プロラクチン血症の症状
- 月経不順(希発月経、無月経)
- 乳汁漏出(非妊娠・非授乳時の乳汁分泌)
- 不妊(排卵障害による)
- 性欲低下
- 黄体機能不全(高温期が短い)
高プロラクチン血症の原因
プロラクチンが上昇する原因は多岐にわたります。薬剤性が最も多く、次いで下垂体腫瘍(プロラクチノーマ)が重要です。
分類 | 原因 | 頻度 |
|---|---|---|
薬剤性 | 抗精神病薬、制吐薬(ドンペリドン、メトクロプラミド)、抗うつ薬(SSRI) | 最も多い |
下垂体腫瘍 | プロラクチノーマ(微小腺腫が多い) | 比較的多い |
甲状腺機能低下症 | TRH上昇がPRL分泌も刺激 | 時に認める |
ストレス・睡眠 | ストレスや睡眠不足で一過性に上昇 | よくある |
特発性 | 原因不明 | 少なくない |
潜在性高PRL血症 | 安静時は正常だがTRH負荷で過剰反応 | 見落とされやすい |
潜在性高プロラクチン血症とは
安静時のプロラクチン値は正常範囲にあるものの、TRH負荷試験で異常な上昇を示す状態を「潜在性高プロラクチン血症」と呼びます。不妊症の女性の一部にこの病態が隠れていることがあり、見逃されやすい原因の一つです。
TRH負荷試験の流れ
- 安静時のプロラクチンを採血
- TRH(500μg)を静脈注射
- 15分後、30分後にプロラクチンを再測定
- 15分値で70 ng/mL以上、または基礎値の5倍以上に上昇 → 潜在性高PRL血症と判定
治療法と妊活への対応
高プロラクチン血症の治療は原因に応じて選択されますが、妊活中の第一選択はドパミン作動薬です。
治療薬の比較
薬剤 | 服用法 | 特徴 |
|---|---|---|
カベルゴリン(カバサール) | 週1〜2回 | 効果が強い、副作用が少ない、第一選択 |
ブロモクリプチン(パーロデル) | 1日1〜2回 | 妊娠中の安全性データが豊富 |
テルグリド | 1日1回 | カベルゴリンの代替 |
妊活中の治療フロー
- ドパミン作動薬でPRLを正常化 → 排卵が回復
- 妊娠が成立したら薬の中止を検討(プロラクチノーマの場合は主治医判断)
- 潜在性高PRL血症の場合も、排卵誘発と併用してドパミン作動薬を使用
プロラクチノーマがある場合の妊活
プロラクチノーマ(下垂体のプロラクチン産生腫瘍)がある場合でも、多くのケースで薬物療法により腫瘍の縮小とPRL正常化が可能です。
腫瘍サイズ別の対応
- 微小腺腫(10mm未満): カベルゴリンで治療し、妊娠成立後に中止可能なケースが多い
- 巨大腺腫(10mm以上): 妊娠中の腫瘍増大リスクがあるため、治療方針を慎重に検討。手術→妊活の順序も選択肢
よくある質問
ストレスでプロラクチンは上がりますか?
はい。身体的・精神的ストレスで一過性にプロラクチンが上昇することがあります。採血時の緊張でも上昇するため、安静にしてから測定するのが望ましいとされています。
薬を飲んでいてもプロラクチンが下がりません。どうすればよいですか?
用量の増量や薬剤の変更を主治医と相談してください。まれにドパミン作動薬に抵抗性のプロラクチノーマがあり、その場合は手術が検討されます。
プロラクチンが高いのに乳汁は出ません。それでも異常ですか?
乳汁漏出は高プロラクチン血症の一部の症状であり、全員に認められるわけではありません。月経不順や排卵障害があれば、乳汁分泌がなくても治療対象です。
授乳をやめたらプロラクチンはすぐ下がりますか?
断乳後、通常2〜4週間でプロラクチンは正常値に戻ります。ただし、排卵再開にはさらに数か月かかることがあります。
プロラクチンの検査はいつ受けるべきですか?
月経3〜5日目の基礎ホルモン検査(Day3検査)に含めるのが一般的です。ストレスの影響を避けるため、採血前30分程度の安静が推奨されます。
まとめ
プロラクチンは授乳だけでなく生殖機能に深く関わるホルモンで、過剰分泌はGnRHの抑制を通じて排卵障害・不妊を引き起こします。薬剤性、プロラクチノーマ、甲状腺機能低下症などが主な原因であり、カベルゴリンなどのドパミン作動薬で多くの場合改善が可能です。潜在性高プロラクチン血症は見逃されやすいため、原因不明の不妊ではTRH負荷試験も検討しましょう。
月経不順や不妊でお悩みの方は、Day3検査でプロラクチン値を測定してもらうことをおすすめします。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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