
プロゲステロンクリームとは?天然プロゲステロンの経皮吸収製剤
プロゲステロンクリームは、天然型(バイオアイデンティカル)プロゲステロンを皮膚から吸収させるホルモン製剤です。合成プロゲスチンとは分子構造が異なり、体内で自然に産生されるプロゲステロンと同一の構造を持つため、副作用が少ないとされています。
主にHRT(ホルモン補充療法)の一環や更年期症状の緩和、黄体機能不全の補助として使用されます。経口剤と比較して肝臓での初回通過効果を受けないため、消化器系への負担が軽減される利点があります。
天然プロゲステロンと合成プロゲスチンの違い
項目 | 天然プロゲステロン | 合成プロゲスチン |
|---|---|---|
分子構造 | 体内産生物と同一 | 人工的に改変された構造 |
代謝産物 | アロプレグナノロン(鎮静作用あり) | 構造により異なる |
乳房への影響 | リスク上昇が少ないとの報告 | 一部で乳がんリスク上昇の報告 |
血栓リスク | 上昇させないとの報告が多い | 一部の製剤でリスク上昇 |
気分への影響 | アロプレグナノロンによる抗不安効果 | うつ症状の悪化の報告あり |
プロゲステロンクリームの適応と効果
プロゲステロンクリームは、プロゲステロン不足に起因するさまざまな症状の改善に用いられます。特にエストロゲンとのバランスを整える「エストロゲン優勢」の是正に効果が期待されます。
主な適応
- 更年期症状の緩和:ほてり、発汗、不眠、イライラの軽減
- HRTにおける子宮内膜保護:エストロゲン投与時の子宮内膜増殖症予防
- 黄体機能不全:黄体期のプロゲステロン補充
- PMS・PMDD:月経前の症状緩和
- 不正出血:プロゲステロン不足による機能性出血の改善
- 骨密度維持:プロゲステロンの骨形成促進作用
期待される効果と発現までの期間
効果 | 発現目安 |
|---|---|
睡眠の質改善 | 1〜2週間 |
ほてり・発汗の軽減 | 2〜4週間 |
気分の安定 | 2〜4週間 |
月経周期の安定 | 1〜3ヶ月 |
PMS症状の軽減 | 1〜3周期 |
正しい使い方と塗布方法
プロゲステロンクリームの効果を最大限に得るためには、正しい塗布方法と用量の管理が重要です。自己判断での増減は避け、医師の指示に従って使用してください。
塗布部位
皮膚の薄い部位から吸収が良好です。以下の部位をローテーションで使用します。
- 前腕の内側
- 上腕の内側
- 胸の上部(デコルテ部分)
- 太ももの内側
- 手首の内側
同じ部位に連続して塗布すると局所的に蓄積しやすいため、毎日違う部位に塗るのがポイントです。
一般的な用量と使用スケジュール
- 閉経前(PMS・黄体不全):月経周期の12〜26日目(黄体期)に1日20〜40mgを塗布
- 閉経後(HRT):エストロゲンと併用し、月の25日間使用・5日間休薬、または連日使用
- 用量:1回の塗布量は製品により異なるが、1/4〜1/2ティースプーン程度が一般的
使用上の注意
- 塗布後は完全に乾くまで衣服の着用を避ける
- 塗布部位に傷や炎症がある場合は別の部位を選ぶ
- 入浴・シャワーの前後30分は塗布を避ける
- 定期的な血中プロゲステロン値のモニタリングを受ける
科学的エビデンスと安全性
天然プロゲステロンの経皮投与に関する研究は増加しており、経口投与と比較した際の利点がいくつか報告されています。
経皮投与のエビデンス
- E3N研究(フランス、約8万人):天然プロゲステロンとエストロゲンの併用は、合成プロゲスチンと比較して乳がんリスクの有意な上昇を認めなかった
- WHI研究の再解析:リスク上昇が示されたのは合成プロゲスチン(MPA)であり、天然プロゲステロンは異なる安全性プロファイルを持つ可能性
- 血栓リスク:経皮投与の天然プロゲステロンは静脈血栓塞栓症のリスクを上昇させないとの報告が複数
注意すべき点
- 市販のクリーム製品は含有量や品質にばらつきがある場合がある
- 大豆やヤムイモ由来のプロゲステロンは体内での変換が保証されないものもある
- 子宮内膜保護効果は経口投与と比較してデータが限定的
- 乳がん既往歴がある場合は使用前に腫瘍専門医に相談が必要
入手方法と費用
日本でのプロゲステロンクリームの入手にはいくつかのルートがあります。品質と安全性の確保のため、医療機関を通じた入手が推奨されます。
入手経路と費用の目安
入手方法 | 費用の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
医療機関での処方 | 月3,000〜8,000円(自費) | 品質保証あり、用量管理が適切 |
調剤薬局での院内製剤 | 月5,000〜1万円 | 医師の処方に基づくオーダーメイド |
個人輸入(海外サプリ) | 月2,000〜5,000円 | 品質管理に不安あり、自己責任 |
日本ではプロゲステロンクリームは一般的な保険適用薬ではないため、多くの場合自費診療となります。ただし、不妊治療における黄体補充として経腟プロゲステロン製剤(ルティナス、ウトロゲスタン等)は保険適用の場合があります。
よくある質問
Q. プロゲステロンクリームは市販品で効果がありますか?
海外の一部製品にはUSP基準の天然プロゲステロンが含まれていますが、含有量や品質は製品によって大きく異なります。効果と安全性を確保するため、医療機関で処方を受けることをおすすめします。
Q. 妊娠希望の場合、経腟製剤とクリームのどちらがよいですか?
不妊治療における黄体補充は、子宮に直接作用する経腟製剤(ルティナス、ウトロゲスタン等)が標準的です。経皮クリームは全身循環を介するため、子宮内膜への到達が間接的です。妊娠希望の方は担当医と相談し、最適な投与経路を選択してください。
Q. 副作用はありますか?
天然プロゲステロンは副作用が比較的少ないとされますが、眠気(アロプレグナノロンの鎮静作用)、塗布部位の発赤、頭痛、乳房の張りなどが生じることがあります。就寝前の塗布で眠気を活用できます。
Q. エストロゲンクリームと併用できますか?
HRTの一環としてエストロゲンとプロゲステロンを併用するのは一般的です。ただし、併用のスケジュールや用量は個人の状態によって異なるため、必ず医師の管理下で行ってください。
Q. 男性が触れても問題ありませんか?
塗布後に乾いた後は他者への移行は少ないですが、塗布直後に肌が直接触れると微量のホルモンが移行する可能性があります。塗布後は手を洗い、乾くまで他の人との肌接触を避けてください。
まとめ
プロゲステロンクリームは天然型プロゲステロンを経皮吸収させる製剤で、更年期症状・PMS・黄体機能不全の改善に用いられます。合成プロゲスチンと比較して副作用リスクが低い可能性が示唆されていますが、エビデンスはまだ蓄積中です。
正しい塗布方法と医師による用量管理が効果を最大化するカギです。自己判断での使用は避け、ホルモンバランスの専門的な評価を受けた上で使用を検討してください。
当院では天然ホルモン療法を含むさまざまなホルモン治療について個別にご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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