
PMSに効く漢方薬は体質別に異なります。気の滞り・血の不足・水分代謝の乱れといった漢方の「証(しょう)」によって最適な処方が変わります。この記事では、PMSに用いられる代表的な漢方薬を体質別に整理し、選び方のポイントを解説します。
この記事のポイント
- 加味逍遙散・当帰芍薬散・桂枝茯苓丸がPMSの三大処方として広く使用される
- 漢方はPMSの精神症状・身体症状の両方に対応できる
- 体質(証)に合った処方を選ぶことが効果の鍵。婦人科・漢方外来での処方が推奨
漢方でPMSを治療する考え方
漢方医学では、PMSを「気・血・水(き・けつ・すい)」のバランスの乱れとして捉えます。月経前はホルモン変動によりこのバランスが崩れやすく、体質によって現れる症状が異なります。そのため、全員が同じ漢方で良いわけではなく、個人の「証」に合わせた処方が重要です。
PMSに関係する3つの乱れ
乱れの種類 | 特徴的な症状 | 代表的な漢方 |
|---|---|---|
気滞(きたい) | イライラ・怒り・抑うつ・胸のつかえ | 加味逍遙散・逍遙散 |
血虚(けっきょ) | 貧血傾向・疲労感・冷え・抑うつ | 当帰芍薬散・四物湯 |
瘀血(おけつ) | のぼせ・下腹部痛・肩こり・月経痛 | 桂枝茯苓丸・桃核承気湯 |
水滞(すいたい) | むくみ・頭重感・胃もたれ | 五苓散・当帰芍薬散 |
加味逍遙散——イライラ・気分の波に
PMSの精神症状(イライラ・怒り・不安・抑うつ・不眠)に最も広く使われる漢方薬です。「気の滞り(気滞)と血の不足(血虚)が混在し、熱を帯びた状態」に対応します。
こんな方に向いている
- 月経前になるとイライラして家族に当たってしまう
- 些細なことで泣いてしまったり怒ったりと感情が不安定
- 疲れているのに寝付けない・眠りが浅い
- のぼせやすく、顔がほてる感じがある
- やや虚弱〜中程度の体力
含まれる主な生薬と働き
- 柴胡(さいこ)・薄荷(はっか):気の鬱滞を解消・精神安定
- 当帰・芍薬:血を補い、気持ちを落ち着かせる
- 山梔子(さんしし):熱を冷まし、イライラを鎮める
当帰芍薬散——冷え・貧血・むくみに
血の不足(血虚)と水分代謝の乱れ(水滞)が主体の体質に適します。PMSの身体症状(冷え・むくみ・疲労感・頭重感)が強い方、やせ型で色白・疲れやすい体質の方に向きます。
こんな方に向いている
- 手足が冷えやすく、月経前にむくみが強くなる
- 疲れやすく、貧血気味(顔色が悪い・めまいがある)
- 月経痛はあるが比較的軽め
- 精神症状はさほど強くない
- 胃腸が弱い虚弱体質
桂枝茯苓丸——のぼせ・月経痛・瘀血に
瘀血(血行の滞り)が主体の体質に用います。上半身のほてり・のぼせと下半身の冷えが同時にある「冷えのぼせ」、月経痛・肩こりが強い方に向きます。加味逍遙散より体力があり、実証〜中間証の方に適します。
こんな方に向いている
- のぼせやすく、頭に血が上る感じがある
- 月経痛が強く、経血に塊が混じる
- 肩こり・頭痛が月経前に悪化する
- 比較的体力があり、顔色がやや赤い
その他のPMS漢方——症状別の選択肢
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)——強い瘀血・便秘・激しいイライラ
桂枝茯苓丸より強い瘀血に対応します。月経前に強いイライラ・頭痛・便秘・のぼせがある方、実証(体力がある方)に使います。下剤成分(芒硝・大黄)を含むため、虚弱な方・下痢傾向の方には向きません。
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)——月経痛の急性期
強い痙攣性の月経痛に即効性があります。ただし甘草の含有量が多く、長期連用は偽アルドステロン症のリスクがあるため、月経痛の急性期のみの頓服使用が推奨されます。
烏薬(うやく)配合処方——冷えからくる月経痛に
天台烏薬散などは下腹部の冷えによる疝痛(仙痛)に使います。婦人科専門の漢方外来での処方が一般的です。
体質別・PMS漢方 選択ガイド
漢方薬 | 主な証 | 体力の目安 | 最も効く症状 |
|---|---|---|---|
加味逍遙散 | 気滞+血虚+熱 | 虚〜中 | イライラ・不眠・ほてり |
当帰芍薬散 | 血虚+水滞 | 虚弱 | 冷え・むくみ・貧血 |
桂枝茯苓丸 | 瘀血 | 中〜実 | のぼせ・月経痛・肩こり |
桃核承気湯 | 強い瘀血+熱 | 実証 | 激しいイライラ・便秘 |
漢方の飲み方と効果が出るまでの期間
一般的な服用期間の目安は1〜3カ月です。食前または食間(食後2時間)に温湯で服用します。月経1〜2周期では効果の評価が難しいため、最低2〜3周期の継続服用が推奨されます。
- 保険処方:婦人科・漢方外来で処方してもらうと費用を抑えられる(ツムラ・クラシエの院内処方)
- 市販薬:ドラッグストアでも購入可能だが、体質に合っているかの確認が重要
- 副作用:甘草含有処方(加味逍遙散・当帰芍薬散等)では偽アルドステロン症に注意
よくある質問
Q. 加味逍遙散と当帰芍薬散はどっちが自分に合っていますか?
イライラ・精神症状が強い→加味逍遙散、冷え・むくみ・疲労感が強い→当帰芍薬散が目安です。ただし自己判断より婦人科・漢方外来で証を診てもらうことをお勧めします。
Q. 漢方薬とピルを一緒に飲めますか?
明確な禁忌はありませんが、相互作用の可能性もあるため、処方する医師に両方服用中であることを必ず伝えてください。
Q. 漢方だけでPMSは完全に治りますか?
軽〜中等度のPMSでは漢方単独で十分なコントロールができる場合があります。PMDDなど重症の場合はSSRI・低用量ピルとの組み合わせが有効で、婦人科と心療内科の連携が推奨されます。
まとめ
PMSに効く漢方薬は体質によって異なります。イライラ・精神症状が強い方には加味逍遙散、冷え・貧血・むくみには当帰芍薬散、のぼせ・月経痛には桂枝茯苓丸が選ばれることが多いです。
自分の「証」に合った漢方を選ぶために、婦人科または漢方外来を受診し、専門家に処方してもらうことをお勧めします。
※本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療の代替となるものではありません。症状が続く場合は医療機関を受診してください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
産婦人科・婦人科に関する正確で信頼性の高い情報をお届けします。医療監修のもと、女性の健康に役立つコンテンツを制作しています。
Next Action

