
PCOSの診断基準|Rotterdam基準と日本産科婦人科学会基準の違い
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の診断は、①排卵障害(月経不順)、②高アンドロゲン血症、③多嚢胞性卵巣の所見——の3項目を組み合わせて行います。国際的にはRotterdam基準(3項目中2つで診断)が主流ですが、日本産科婦人科学会では3項目すべてを満たすことを求めるより厳格な基準を採用しています。
【この記事のポイント】
- 国際基準(Rotterdam)は3項目中2つで診断。日本基準は3項目すべてが必要
- 超音波でのネックレスサイン(小卵胞の配列)が画像診断のポイント
- 甲状腺疾患・高プロラクチン血症・先天性副腎過形成などの除外が必須
PCOS診断の3つの柱
PCOSの診断は、以下の3つの臨床所見に基づいて行われます。
診断項目 | 具体的な基準 | 評価方法 |
|---|---|---|
①排卵障害 | 無月経、稀発月経(周期39日以上)、無排卵性周期 | 月経歴の問診、基礎体温表 |
②高アンドロゲン血症 | テストステロン高値、臨床的高アンドロゲン症状(多毛・ニキビ) | 血液検査、Ferriman-Gallweyスコア |
③多嚢胞性卵巣 | 卵巣内に直径2〜9mmの小卵胞が12個以上、または卵巣体積10mL以上 | 経腟超音波検査 |
Rotterdam基準 vs 日本基準
基準 | 必要項目数 | 特徴 |
|---|---|---|
Rotterdam基準(2003年、国際) | 3項目中2項目 | 幅広い表現型を含む。有病率やや高い推定 |
日本産科婦人科学会基準 | 3項目すべて | より厳格。確実なPCOSのみを診断 |
AE-PCOS Society基準 | ①+②が必須(③は任意) | 高アンドロゲンを重視 |
検査の流れ|初診から診断確定まで
PCOSが疑われた場合、以下の検査を段階的に行い、診断を確定します。
Step 1:問診
- 月経歴(初経年齢、周期、月経量の変化)
- 体重変化の履歴
- 多毛・ニキビ・脱毛の有無
- 家族歴(PCOS、2型糖尿病、心血管疾患)
- 妊娠希望の有無
Step 2:血液検査
検査項目 | PCOSでの典型的な所見 | 採血タイミング |
|---|---|---|
LH、FSH | LH/FSH比 ≥ 1(LH優位) | 月経3〜5日目 |
テストステロン | 上昇(基準値上限付近〜超え) | 月経3〜5日目 |
DHEA-S | 正常〜軽度上昇 | 時間不問 |
SHBG | 低下 | 時間不問 |
空腹時血糖・インスリン | HOMA-IR ≥ 2.5でインスリン抵抗性 | 空腹時 |
HbA1c | 耐糖能異常の評価 | 時間不問 |
Step 3:超音波検査
経腟超音波検査で卵巣の形態を評価します。PCOSでは卵巣辺縁に直径2〜9mmの小卵胞が真珠の首飾りのように配列する「ネックレスサイン」が特徴的です。2018年の国際基準では、高解像度超音波の普及を受け「片側卵巣に20個以上の卵胞」または「卵巣体積10mL以上」に基準が更新されました。
Step 4:除外診断
PCOSと類似した症状を呈する疾患を除外することが必須です。
- 甲状腺機能異常:TSH検査で除外
- 高プロラクチン血症:プロラクチン測定
- 先天性副腎過形成(遅発型):17-OHP測定
- クッシング症候群:24時間尿中コルチゾール等
- アンドロゲン産生腫瘍:急速な男性化徴候がある場合に画像検査
思春期のPCOS診断の難しさ
思春期(初経後1〜3年)では、不規則な月経周期やLH優位のホルモンパターンが生理的にも見られるため、PCOSの確定診断が難しい時期です。
思春期の診断基準
- 初経後2年以上経過しても月経周期が45日以上 or 無月経3ヶ月以上
- 生化学的高アンドロゲン血症(臨床症状のみでは不十分)
- 超音波所見は思春期では診断基準から除外される場合が多い
PCOSの表現型分類|4つのフェノタイプ
Rotterdam基準では3項目中2つの組み合わせにより、4つの表現型(フェノタイプ)が存在します。
フェノタイプ | 排卵障害 | 高アンドロゲン | 多嚢胞卵巣 | 代謝リスク |
|---|---|---|---|---|
A(完全型) | ✓ | ✓ | ✓ | 最も高い |
B | ✓ | ✓ | — | 高い |
C(排卵型) | — | ✓ | ✓ | 中等度 |
D(非高アンドロゲン型) | ✓ | — | ✓ | 低い〜中等度 |
よくある質問
Q. PCOSは何科を受診すればよいですか?
A. 産婦人科(婦人科)が第一選択です。インスリン抵抗性の管理が必要な場合は内分泌内科との連携も行われます。
Q. PCOSは血液検査だけで診断できますか?
A. 血液検査だけでは不十分です。超音波検査による卵巣形態の評価と、除外診断のための追加検査が必要です。
Q. AMH(抗ミュラー管ホルモン)はPCOSの診断に使えますか?
A. PCOSではAMHが高値になることが多く、補助的な診断マーカーとして注目されています。ただし、現時点では正式な診断基準には含まれていません。
Q. PCOSの検査費用はどのくらいですか?
A. 保険適用で、血液検査+超音波検査で3割負担の場合、約5,000〜8,000円程度が目安です。初診料を含めて1万円前後を想定しておくとよいでしょう。
Q. PCOSと診断されたら必ず治療が必要ですか?
A. 症状がなく妊娠希望もない場合は、定期的な経過観察のみで対応することもあります。ただし、長期的な子宮体がんリスクや代謝リスクの管理は必要です。
まとめ
PCOSの診断は排卵障害・高アンドロゲン血症・多嚢胞性卵巣の3項目に基づいて行われ、国際基準では2項目、日本基準では3項目すべてが必要です。血液検査と超音波検査に加えて、甲状腺疾患などの除外診断が必須。4つの表現型があり、フェノタイプによって代謝リスクや治療方針が異なります。
📋 次のステップ:月経不順やPCOSの可能性が気になる方は、MedRoot提携クリニックのオンライン診療でご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断を代替するものではありません。症状がある方は産婦人科を受診してください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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