卵巣嚢腫の手術は、大きさだけで決まるものではありません。嚢腫の種類、画像での見え方、症状、閉経の有無、妊娠の希望を含めて、経過観察と手術の利益・負担を比較します。突然の強い下腹部痛があるときは、予約日を待たず医療機関に連絡してください。
手術を考えるのはどんなとき?
小さな機能性嚢胞などは自然に消えることもあり、超音波検査で経過をみる場合があります。一方、症状がある、大きくなる、画像で悪性が疑われるなどの場合には手術を検討します。CA125などの腫瘍マーカーだけでがんと決めることはできず、画像や診察を合わせて評価します。
日本婦人科腫瘍学会の一般向け説明には、大きさ4〜6cm以上や充実性部分などを手術検討の要素として挙げていますが、症状がある場合はその限りではありません。「5cm未満なら安全」「8cmを超えたら全員同じ手術」とする境界ではありません。
卵巣の付け根がねじれる茎捻転や、嚢腫の破裂で緊急手術が必要になることがあります。急な強い痛み、特に吐き気などを伴う場合は、自己判断で経過観察を続けないでください。
腹腔鏡・開腹と、卵巣を残すかどうかは別の話
| 確認すること | 違い |
|---|---|
| おなかからどう手術するか | 小さな切開でカメラを使う腹腔鏡、より大きな切開で行う開腹など |
| どこまで取り除くか | 嚢腫を取り正常な卵巣部分を残す方法、卵巣・卵管を含めて取る方法など |
| 途中で方針が変わる可能性 | 癒着や出血、腫瘍の状態、手術中の病理診断などによって変更が必要か |
良性と考えられる場合には腹腔鏡が選択肢になりますが、大きさや悪性の疑いなどから開腹を選ぶこともあります。腹腔鏡なら必ず卵巣が残る、開腹なら必ず全部取る、という関係ではありません。確定診断には、取り出した組織の病理検査が重要です。
妊娠を希望する場合に相談すること
妊娠を希望している、将来希望するかもしれない場合は、手術前に伝えてください。特に子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)では、病気や手術が卵巣の機能に影響するため、痛みの治療と妊娠に向けた方針を一緒に考えます。
日本内分泌学会も、手術による機能低下の可能性から、生殖補助医療を優先する場合があると説明しています。
卵巣を残せる見通し、左右どちらの処置か、術後の治療や妊娠を考える時期、不妊治療担当医との連携を確認しましょう。AMHの値一つだけで、術後の妊娠の可否や手術の必要性は決められません。
入院・仕事復帰は個別の見通しを聞く
入院日数や回復期間は、術式、手術範囲、合併症、仕事の内容で変わります。全国共通の「入院3〜5日、仕事は退院後1〜2週」という表で予定を確定しないでください。
- 術前検査・入院・退院の予定日と、延びる可能性を聞く。
- 座り仕事、通勤、立ち仕事、重量物など仕事内容を具体的に伝える。
- 入浴・運動・性交・運転を再開する条件を確認する。
- 診断書や勤務調整が必要なら、退院前に相談する。
- 退院後の受診日、病理結果の説明日、夜間の連絡先を確認する。
術後に強い痛み、多量の出血、発熱、悪臭のあるおりものなどがある場合は、手術した医療機関へ連絡してください。退院したことと、すべての活動に戻れることは同じではありません。
費用は見積もりと制度を分けて確認する
費用は手術・麻酔・検査・入院などで変わるため、病院に概算を依頼します。保険診療の自己負担と、食事代・希望した部屋の料金などを分け、どこまで概算に含むか確認してください。
高額療養費の上限は年齢・所得・診療月などで異なります。2026年8月からの制度見直しもあるため、古い「一般所得なら月8〜10万円」という一律案内は使わず、加入する保険者に確認しましょう。マイナ保険証や限度額適用認定証を利用する場合の手続きも、入院前に病院・保険者へ確認できます。
参考にした情報
編集部が2026年10月23日に出典と本文を照合しました。個別の術式・療養期間・負担額は担当医療機関で確認してください。

この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
公的機関や医学会などの情報をもとに、女性の健康と医療の選択に役立つ情報を整理しています。