
更年期症状が仕事に与える影響
更年期症状は仕事のパフォーマンスに大きな影響を及ぼします。日本における調査では、更年期症状のある働く女性の約40%が「仕事に支障がある」と回答し、年間約4,200億円の労働損失が試算されています。更年期で離職した女性は約46万人にのぼるとの推計もあり、社会的な課題として認識が広がっています。
しかし適切なセルフケアと職場の制度活用により、更年期と仕事の両立は十分に可能です。「我慢するしかない」と考えず、使える手段を積極的に活用することが重要です。
仕事に影響しやすい更年期症状
症状 | 仕事への影響 | 頻度 |
|---|---|---|
ホットフラッシュ | 会議中の突然の発汗、集中力の途切れ | 約60〜70% |
疲労感 | 午後のパフォーマンス低下、残業が困難 | 約50% |
集中力・記憶力の低下 | ミスの増加、マルチタスクの困難 | 約40% |
不眠・中途覚醒 | 日中の眠気、判断力の低下 | 約40〜50% |
関節痛・筋肉痛 | デスクワークでの苦痛、立ち仕事の困難 | 約30% |
気分の変動 | 対人関係のストレス、モチベーション低下 | 約30〜40% |
職場でできるセルフケア
職場環境の中で実践できるセルフケアの方法を症状別にまとめました。
ホットフラッシュ対策
- 重ね着で体温調節しやすい服装を選ぶ(脱ぎ着しやすいカーディガン等)
- 卓上扇風機やハンディファンを準備
- 冷却タオルを常備
- デスクに冷たい飲み物を用意
- 席をエアコンの吹き出し口の近くに移動(相談可能な場合)
集中力・記憶力の低下対策
- 重要なタスクは集中力が高い午前中に
- メモ・チェックリストを徹底活用
- タスクを細分化し、一度に一つのことに集中
- 25分集中+5分休憩のポモドーロ・テクニック
- 重要な会議の前に5分間の深呼吸で集中力をリセット
疲労対策
- ランチ後に10〜15分の短い仮眠(パワーナップ)
- 血糖値の急上昇を避ける低GI食の昼食
- 1時間に1回は席を立ってストレッチ
- 水分をこまめに摂取(脱水は疲労を悪化させる)
活用できる職場の制度
法的な制度や企業独自の支援制度を把握しておくことで、更年期症状がつらい時期を乗り越える助けになります。
法的に認められた制度
制度 | 内容 | 活用のポイント |
|---|---|---|
時間単位の有給休暇 | 1時間単位で有給取得可能(労使協定がある場合) | 通院や体調不良時に活用 |
フレックスタイム制 | 始業・終業時間を柔軟に調整 | 不眠の翌朝、体調不良時に遅出勤 |
在宅勤務(テレワーク) | 自宅での勤務 | 症状がつらい日の選択肢として |
短時間勤務 | 所定労働時間の短縮 | 一定期間の利用で体力回復を図る |
企業独自の取り組み事例
- 更年期休暇の導入(一部企業)
- 女性の健康相談窓口の設置
- 管理職向けの更年期リテラシー研修
- 社内産業医への更年期相談
上司・同僚への伝え方
更年期症状を職場で伝えることには抵抗がある方も多いですが、必要な配慮を得るためにある程度の情報共有は有効です。
伝えるかどうかの判断基準
- 業務に支障が出ている場合は、最低限の情報共有が望ましい
- すべてを詳細に話す必要はない。「体調管理のため」程度でも可
- 人事部門や産業医に先に相談してから上司に伝えるルートもある
伝え方の例
- 「最近体調の波があり、急に席を外すことがあるかもしれません。ご了承いただけると助かります」
- 「婦人科の治療を受けていて、月に一度の通院が必要です」
- 「体調管理のためフレックスを活用させてください」
治療と仕事の両立
更年期症状の治療を受けることで仕事のパフォーマンスが回復するケースは多く、早めの受診が両立のカギです。
治療の選択肢と仕事への影響
治療法 | 効果発現 | 仕事への注意点 |
|---|---|---|
HRT | 1〜2週間で改善開始 | 特になし。通常通り勤務可能 |
漢方薬 | 2〜4週間 | 特になし |
抗うつ薬(SSRI/SNRI) | 2〜4週間 | 初期の眠気や悪心に注意 |
認知行動療法 | 6〜8週間 | 定期的な通院が必要 |
よくある質問
Q. 更年期を理由に仕事を辞めるべきですか?
すぐに辞める必要はありません。まず適切な治療を受け、利用可能な職場制度を活用してください。症状は適切な治療で改善することが多く、最もつらい時期を乗り越えれば以前のように働ける可能性が高いです。
Q. 更年期であることを会社に報告する義務はありますか?
法的な報告義務はありません。ただし、業務に支障が出ている場合は、配慮を受けるために最低限の情報共有が有益です。詳細な症状ではなく「体調管理のため」という伝え方でも配慮を得られる場合があります。
Q. 更年期でミスが増えて自信を失っています。
認知機能の低下は更年期の一般的な症状であり、あなたの能力が低下したわけではありません。HRTで症状が改善する場合も多いです。メモやチェックリストなどの対策を取り入れつつ、必要に応じて治療を受けてください。
Q. 男性の上司にどう伝えればよいですか?
直接伝えにくい場合は、人事部門、産業医、女性の先輩社員を経由する方法もあります。最近は男性管理職向けの更年期研修を実施する企業も増えています。
Q. パートタイムへの切り替えは可能ですか?
会社の就業規則によりますが、一時的な短時間勤務やパートタイムへの変更を相談する価値はあります。症状が安定したら元のフルタイム勤務に戻るプランを提示すると、会社側も対応しやすくなります。
まとめ
更年期症状は仕事のパフォーマンスに大きく影響しますが、適切なセルフケア・職場制度の活用・医療機関での治療の3本柱で両立は十分に可能です。年間約46万人が更年期を理由に離職しているとの推計もありますが、我慢せず早期に対策を講じることで、キャリアを維持しながら更年期を乗り越えることができます。
当院では更年期症状の治療を通じて、仕事との両立をサポートしています。仕事に影響が出ている方はお気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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