EggLink

更年期の頻尿・尿漏れの原因と骨盤底筋トレーニング

2026/4/19

更年期の頻尿・尿漏れの原因と骨盤底筋トレーニング

更年期の頻尿・尿漏れは、エストロゲン低下による膀胱・骨盤底筋の変化が原因です。閉経後女性の約40〜50%が泌尿生殖器症状を経験するという報告があります。「年だから仕方ない」と諦める必要はなく、骨盤底筋トレーニングや医療的治療で改善できる症状です。

この記事のポイント

  • 更年期の頻尿・尿漏れは「泌尿生殖器症候群(GSM)」の一症状
  • 骨盤底筋トレーニングは腹圧性尿失禁に対して効果のエビデンスが最も強い
  • 週8回以上のトイレ(夜間2回以上)は「過活動膀胱」として治療対象になりえる
  • 改善しない場合は泌尿器科・婦人科・ウロギネコロジー外来への受診が有効

更年期に頻尿・尿漏れが起きる原因

エストロゲンは膀胱・尿道・骨盤底の組織を健康に保つ役割を担っています。更年期にエストロゲンが低下すると、これらの組織が萎縮・弱化し、泌尿器症状が出やすくなります。

エストロゲン低下が泌尿器に与える影響

  • 膀胱・尿道の粘膜が薄くなる(萎縮)
  • 尿道括約筋の締まりが弱くなる
  • 骨盤底筋・靭帯が緩みやすくなる
  • 膀胱の過敏性が増す(少量の尿でも尿意を感じやすくなる)

症状の種類

症状

特徴

主な原因

腹圧性尿失禁

咳・くしゃみ・笑い・運動時に漏れる

骨盤底筋・括約筋の弱化

切迫性尿失禁

急に強い尿意が来て間に合わない

過活動膀胱・膀胱過敏

混合性尿失禁

腹圧性と切迫性が混在

両方の要素が関与

頻尿(昼間)

1日8回以上のトイレ

膀胱過敏・水分過多

夜間頻尿

就寝後2回以上起きる

抗利尿ホルモン低下・過活動膀胱

骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操)の方法

骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操)は、腹圧性尿失禁に対してエビデンスが最も強い非薬物療法です。日本排尿機能学会のガイドラインでも第一選択として推奨されています。

骨盤底筋の正しい締め方

  1. 尿道・膣・肛門をまとめて「内側・上向き」にキュッと締める感覚で
  2. お腹・お尻・太ももの力は入れない(骨盤底筋だけを使う)
  3. 息を止めず、自然に呼吸しながら行う

トレーニングの手順(標準プログラム)

  • 強縮:骨盤底筋を5〜10秒間しっかり締め、その後5〜10秒間ゆっくりゆるめる × 10回
  • 速収縮:素早く締めてすぐゆるめる × 10回
  • 頻度:1日2〜3セット、週5日以上の継続
  • 効果が出るまで:最低3か月の継続が目安

トレーニングの姿勢

  • 仰向け(ひざを立てて)→ 初心者・産後に最適
  • 座位(椅子に座って)→ 通勤・デスクワーク中に可能
  • 立位 → 慣れてきたら応用

「骨盤底筋がどこにあるか分からない」場合は、排尿中に一瞬止める感覚を試すと見つけやすいですが、これを習慣にするのは推奨されません(尿路感染リスク)。

骨盤底筋トレーニングの効果の限界と注意点

骨盤底筋トレーニングは腹圧性尿失禁に特に有効ですが、以下の場合は効果が限定的です。

  • 過活動膀胱(切迫性尿失禁):薬物療法との併用が有効
  • 骨盤臓器脱が進行している場合:外科的治療を要することがある
  • 神経障害・糖尿病性神経障害がある場合

日常生活でできる改善策

トレーニング以外にも、生活習慣の見直しで頻尿・尿漏れが改善することがあります。

膀胱トレーニング(過活動膀胱向け)

尿意を感じてからトイレに行くまでの時間を意図的に延ばす訓練。最初は5分延ばすことから始め、徐々に15〜30分まで延ばしていく。

生活習慣の改善

  • 水分摂取:1日1.5〜2L程度が目安。コーヒー・アルコール・炭酸は膀胱を刺激するため減らす
  • 便秘改善:便秘は骨盤底への負担を増やす。食物繊維・水分摂取で改善
  • 体重管理:肥満は骨盤底への圧力を高める。BMI25未満を目標に
  • 禁煙:慢性的な咳は骨盤底へのダメージを蓄積させる

医療的な治療の選択肢

3か月のセルフケアで改善が見られない場合、または症状が日常生活に著しく支障をきたす場合は、医療機関を受診することで治療の選択肢が広がります。

薬物療法

薬剤

対象症状

代表薬

抗コリン薬

過活動膀胱・切迫性尿失禁

ベシケア、デトルシトール

β3作動薬

過活動膀胱

ベタニス(副作用が少ない)

局所エストロゲン製剤

膣萎縮・尿道萎縮による症状

エストリオール膣錠など

外科的治療(重症例)

  • TOT・TVT手術:腹圧性尿失禁に対するスリング手術(根治率高い)
  • ボトックス膀胱注射:過活動膀胱が薬物療法に反応しない場合

受診の目安と診療科

症状の種類によって受診先が異なります。迷った場合は婦人科または泌尿器科に相談してください。

症状

推奨受診先

腹圧性尿失禁が主

泌尿器科・ウロギネコロジー外来

更年期症状が同時にある

婦人科・更年期外来

夜間頻尿・過活動膀胱が主

泌尿器科

膣乾燥・性交痛もある

婦人科(GSM専門外来)

よくある質問(FAQ)

Q. ケーゲル体操はいつやればよいですか?

特定の時間帯に縛られる必要はありません。通勤中・就寝前・テレビを見ながら等、習慣化しやすいタイミングに組み込んでください。1日2〜3セットを週5日以上継続することが重要です。

Q. 1日何回トイレに行けば正常ですか?

昼間は6〜7回、就寝中は0〜1回が概ね正常範囲です。昼間8回以上・夜間2回以上が続く場合は頻尿として医療評価の対象になります。

Q. 産後に始まった尿漏れと更年期の尿漏れは同じですか?

どちらも骨盤底筋の弱化が原因の腹圧性尿失禁であることが多く、骨盤底筋トレーニングが有効である点は共通しています。ただし更年期ではエストロゲン低下が加わるため、症状が複合的になることがあります。

Q. パッドをずっと使い続けてよいですか?

パッドの使用は生活の質を保つための現実的な対処策ですが、根本的な改善にはなりません。かぶれ・尿路感染症を防ぐためにも、治療を並行して検討することを推奨します。

Q. ホルモン補充療法(HRT)は頻尿にも効きますか?

局所エストロゲン製剤(膣内投与)は膣・尿道萎縮による症状の改善に有効です。全身投与のHRTは泌尿器症状への効果は限定的であることが多く、主症状に応じた治療選択が重要です。

まとめ

更年期の頻尿・尿漏れは、エストロゲン低下による泌尿生殖器の変化が原因です。骨盤底筋トレーニングは特に腹圧性尿失禁に対してエビデンスが高く、3か月の継続で多くの方に改善が見られます。改善が見られない場合は泌尿器科・婦人科の受診で薬物療法・外科的治療という選択肢もあります。「年だから仕方ない」と諦めず、適切な対処を早めに始めることが重要です。

※本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の治療を推奨するものではありません。参考:日本排尿機能学会「尿失禁診療ガイドライン2017年版」、日本産科婦人科学会「更年期障害診療ガイドライン2023」

E

この記事を書いた人

EggLink編集部

医療・婦人科専門メディア

産婦人科・婦人科に関する正確で信頼性の高い情報をお届けします。医療監修のもと、女性の健康に役立つコンテンツを制作しています。

公開:2026/4/19更新:2026/5/2