
四物湯(シモツトウ)は、血虚(けっきょ)——血(けつ)が不足・停滞した状態——による生理不順・月経痛・貧血・肌荒れ・冷えに用いる漢方薬の基本処方です。当帰・川芎・芍薬・地黄の4つの生薬からなる「補血剤の基本方」として、多くの婦人科漢方処方の土台となっています。
四物湯とはどんな漢方薬か
四物湯は漢方医学における「血虚」の治療に特化した基本処方です。「四物(よつのもの)」とは当帰・川芎・芍薬・地黄の4生薬を指し、それぞれが補血・活血の役割を担います。日本では多くの婦人科漢方薬(当帰芍薬散・温経湯・四物湯加減方等)の中核を成す処方として、古来から使われてきました。
項目 | 内容 |
|---|---|
ツムラ番号 | 71番 |
主な構成生薬 | 当帰・川芎・芍薬・地黄(各等量) |
適した体質 | 顔色が悪い・貧血傾向・皮膚乾燥・冷え・月経不順 |
主な適応 | 産後あるいは流産後の疲労回復、月経不順、月経異常、更年期障害、血の道症 |
保険適用 | あり(医師処方) |
四物湯の各生薬の役割と効果
四物湯の4つの生薬はそれぞれ異なる作用を持ち、組み合わせることで補血・活血の相乗効果を発揮します。
生薬 | 主な作用 | 主な効果 |
|---|---|---|
当帰(トウキ) | 補血・活血・調経・鎮痛 | 血を補い月経を整える・冷えの改善 |
川芎(センキュウ) | 活血・行気・鎮痛 | 血行促進・頭痛・月経痛の緩和 |
芍薬(シャクヤク) | 補血・緩急・鎮痛 | 筋肉の緊張緩和・腹痛・筋痙攣 |
地黄(ジオウ) | 滋陰・補血・清熱 | 血を補う・皮膚・粘膜の潤い補充 |
四物湯が適応する主な症状
生理不順・月経異常への効果
血虚による月経周期の乱れ(月経遅延・稀発月経)や月経量の減少に対して、当帰・地黄の補血作用が月経を整えます。特に、ダイエット後の急激な体重減少・過度の運動・慢性疲労による月経停止や稀発月経に適することがあります。
貧血・顔色が悪い
四物湯は「血を補う」処方ですが、西洋医学の「鉄欠乏性貧血の治療薬」ではありません。漢方医学的な「血虚」(血の量・質の低下)を改善することで、顔色の悪さ・めまい・動悸・爪の割れ等の血虚症状を緩和します。鉄欠乏性貧血が確定している場合は、鉄剤との組み合わせを医師と相談してください。
皮膚の乾燥・肌荒れへの効果
地黄と当帰の滋潤作用が皮膚・粘膜の乾燥を改善します。アトピー性皮膚炎の漢方治療でも四物湯加減方が使われることがあります。
産後・流産後の体力回復
分娩・流産による出血(血の消耗)からの回復に、四物湯の補血作用が活用されます。産後の疲労・悪露の停滞・母乳の出が悪いケースに処方されることがあります。
不妊治療・女性ライフサイクルでの活用
- 血虚による卵巣機能低下の補助:子宮内膜の薄さ・卵質改善を目的とした補助的使用
- 月経周期の整備:タイミング法前の体質改善
- 更年期の皮膚乾燥・血虚症状:ホルモン低下による乾燥・冷えに
- 産後・流産後の回復:出血による気血消耗の回復に
当帰芍薬散・温経湯との使い分け
漢方薬 | 特徴 | 適した状態 |
|---|---|---|
四物湯(71番) | 補血の基本処方、シンプルな構成 | 血虚が主体、水滞なし |
当帰芍薬散(23番) | 補血+利水(むくみ改善) | 血虚+水滞(むくみ・冷え) |
温経湯(106番) | 補血+温め(冷えが強い)+補陰 | 血虚+冷え+乾燥(手足の冷え・皮膚乾燥が強い) |
十全大補湯(48番) | 補血+補気(全身の虚弱) | 血虚+気虚(疲労・食欲不振も伴う) |
副作用と注意事項
- 胃腸症状:地黄による胃もたれ・食欲不振・軟便(胃腸が弱い方に出やすい)
- 出血傾向:当帰・川芎の活血作用により、抗凝固薬・抗血小板薬との併用時は医師に申告が必要
- 妊娠中の注意:川芎の子宮収縮作用が懸念されることがあるため、妊娠中は必ず医師に相談
- のぼせ・ほてり:熱証(体に熱がこもりやすい)の方には不適な場合がある
よくある質問(FAQ)
Q. 四物湯は貧血の薬として使えますか?
西洋医学の鉄欠乏性貧血の治療薬(鉄剤)とは異なります。漢方医学的な「血虚」を改善する処方であり、血液検査で貧血が確認されている場合は鉄剤との組み合わせを医師と相談してください。
Q. 不妊治療中に四物湯を追加したいのですが?
子宮内膜の薄さや卵巣機能低下に対して、補血目的で不妊治療に組み合わせるケースがあります。ただし、自己判断での追加は避け、治療担当医に相談してください。採卵・移植周期中の使用継続についても担当医の指示を優先してください。
Q. 四物湯と鉄サプリは一緒に飲めますか?
鉄の吸収を阻害する成分(タンニン等)は四物湯には含まれないため、大きな問題はないとされています。ただし、服用間隔を1〜2時間あけることが一般的に推奨されます。
Q. 胃が弱くて地黄が合わない場合はどうすればいいですか?
地黄は四物湯の主成分ですが、胃腸が弱い方には負担になることがあります。その場合、地黄を熟地黄(加工品)から生地黄に変えたり、陳皮や生姜を加えた加減方にすること、または当帰芍薬散などに変更することを医師・漢方専門医と相談してください。
Q. 四物湯の服用期間はどのくらいですか?
月経改善・貧血症状の緩和には1〜3ヶ月の継続服用が目安です。産後・流産後の回復目的では2〜4週間の服用例が多いです。自己判断での長期服用は避け、定期的に医師に経過を診てもらうことが大切です。
まとめ:四物湯が適している方
四物湯は「血虚」——顔色が悪い・貧血傾向・月経が遅れがち・皮膚が乾燥する——という状態に特化した補血の基本処方です。当帰芍薬散・温経湯・十全大補湯など多くの婦人科漢方薬の土台となる処方であり、個人の体質・症状に合わせた加減(加味・合方)で幅広く活用されています。胃腸が弱い方には地黄の負担が出ることがあるため、漢方専門医のもとで適切な処方を選ぶことが重要です。
※本記事の情報は一般的な知識の提供を目的としており、個別の医療アドバイスを行うものではありません。具体的な服用については、必ず医師・薬剤師にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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