
HRTにテストステロンを追加する治療は、エストロゲン補充だけでは改善しにくい性欲低下・慢性疲労・集中力低下に対して検討される選択肢です。日本ではまだ保険適用外ですが、海外(英国・オーストラリア)のガイドラインでは更年期女性の性欲低下に対して推奨されています。
この記事のポイント
- テストステロン追加が必要なケース——エストロゲン単独HRTとの違い
- 女性へのテストステロン投与の効果と安全性データ
- 日本での入手方法・費用の現状
なぜHRTにテストステロンを追加するのか
テストステロンは男性ホルモンのイメージが強いですが、女性の卵巣・副腎からも産生され、性欲・活力・筋力・認知機能の維持に重要な役割を担っています。閉経後はエストロゲンだけでなくテストステロンも著しく低下するため、エストロゲン補充だけでは改善しきれない症状が残ることがあります。
女性のテストステロンが低下すると起こること
- 性欲低下・性的刺激への反応低下(最も証拠が豊富な症状)
- 慢性的な疲労感・活力低下
- 集中力低下・記憶力の衰え
- 筋力低下・骨量の減少促進
- 気分の落ち込み・意欲の低下
テストステロン追加の効果——エビデンスの整理
2019年に発表されたGlobal Consensus Positionでは、女性のHISD(Hypoactive Sexual Desire Disorder:性欲低下障害)に対するテストステロン療法を条件付きで推奨しています。メタ分析では、HRTにテストステロンを追加した群でプラセボ群と比較して性的満足度・性欲・性興奮が有意に改善したことが示されています。
主要な効果(エビデンスの強さ別)
症状・項目 | エビデンスの強さ | 効果 |
|---|---|---|
性欲低下(HISD) | 強(複数のRCT) | 有意な改善 |
性的満足度 | 強 | 有意な改善 |
疲労感・活力 | 中程度 | 一部で改善 |
気分・うつ症状 | 中程度 | 一部で改善 |
認知機能 | 弱〜中程度 | 研究によって差あり |
骨密度 | 弱 | エストロゲンとの相乗効果の可能性 |
安全性——女性化できる副作用はあるか
女性に対するテストステロン投与では、血中テストステロン値を女性の生理的範囲(閉経前女性の上限程度)に維持することが重要です。適切な用量管理のもとでは、男性化(声の低下・多毛・陰核肥大)のリスクは低いとされています。
主な副作用と発生頻度
- ニキビ・皮脂増加:最も多い副作用(用量依存性)
- 多毛(顔・体):過剰投与時に発生リスク
- 声の低下:生理的用量では通常起こらない
- 乳がんリスク:現時点では増加を示すエビデンスなし(長期データ不足)
- 心血管リスク:現時点では明確な増加なし
投与方法と日本での現状
日本では女性向けのテストステロン製剤は保険適用がなく、男性用テストステロンゲルを少量使用するオフラベル処方が行われる場合があります。海外ではAndroFeme(クリーム剤)やIntrinsa(パッチ:欧州承認)が使用されています。
日本での入手方法(2024年現在)
- 男性用テストステロンゲル(グローミン等)のオフラベル処方——一部の婦人科・更年期専門クリニックで対応
- 費用は自由診療で月5,000〜1万5,000円程度が目安(施設によって異なる)
- 海外個人輸入は品質・安全性管理の観点から推奨されない
テストステロン追加療法の候補となる人
- エストロゲン補充のHRTを十分に行っているにもかかわらず性欲低下が持続する
- 性生活の変化が精神的なストレスになっている
- 疲労感・活力低下が慢性的に続く
- 血中テストステロン値が低値(測定できる場合)
よくある質問
男性化してしまいませんか?
女性の生理的範囲のテストステロン値を維持する用量管理が行われます。適切な用量であれば声の低下や顕著な多毛は起こりにくいですが、定期的な血中テストステロン値の確認が重要です。
保険は適用されますか?
日本では現時点で女性のテストステロン補充療法に保険適用はなく、自由診療となります。費用は施設によって異なるため、事前に確認してください。
いつまで続ける必要がありますか?
症状の改善が見られる限り継続する場合もありますが、定期的に効果と副作用を評価して継続の必要性を判断します。中止後に症状が再燃する場合もあります。
乳がんのリスクは高まりますか?
現時点では女性へのテストステロン療法が乳がんリスクを増加させるという明確なエビデンスはありません。ただし長期的なデータが不足しているため、定期的なマンモグラフィ等の検診を継続することが重要です。
まとめ
HRTへのテストステロン追加は、エストロゲン補充だけでは改善しにくい性欲低下・慢性疲労に対して海外ガイドラインで推奨されている選択肢です。日本ではオフラベル処方となりますが、更年期専門クリニックで相談できます。適切な用量管理のもとで行えば副作用リスクは低いとされますが、定期的なモニタリングが必要です。
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療の推奨を意図するものではありません。治療方針については必ず専門医にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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