
HRTの保険適用と月額費用について、「実際いくらかかるのか」「どうすれば安くなるのか」を具体的な金額で解説します。2024年度の保険適用ルールと、自治体の助成制度の活用方法まで産婦人科の臨床現場の視点からまとめました。
この記事のポイント
- HRTは保険適用で月1,500〜3,500円程度(3割負担)が目安
- 自費(未承認薬・自由診療)では月1万〜3万円超になるケースも
- 高額療養費制度・自治体助成金の活用で自己負担を軽減できる
HRTの保険適用の基本|何が適用されるのか
HRTは「更年期障害」「卵巣欠落症状」等の診断があれば健康保険が適用されます。2024年度時点で、日本で承認されている主要なHRT薬剤のほとんどが保険収載されており、適切な診断のもとで処方された場合は3割負担で受けられます。
保険適用される主なHRT薬剤(2024年度)
薬剤名 | 種類 | 用途 |
|---|---|---|
エストラーナテープ | 経皮パッチ(E2単独) | 子宮摘出後または黄体ホルモン別途処方 |
メノエイドコンビパッチ | 経皮パッチ(E2+MPA) | 子宮がある方の標準HRT |
ル・エストロジェルゲル | 経皮ジェル(E2単独) | 用量調整が必要な方 |
ディビゲルゲル | 経皮ジェル(E2単独) | 1包/日の簡便な使用 |
ジュリナ錠 | 経口(E2) | 錠剤希望の方 |
プレマリン錠 | 経口(結合型エストロゲン) | 古くから使われる標準薬 |
エストリール膣錠 | 局所腟剤 | 腟乾燥・性交痛に特化 |
デュファストン錠 | 黄体ホルモン | E2単独製剤と併用 |
保険が適用されないケース
- 日本未承認のエストロゲン製剤(海外製バイオアイデンティカルホルモンなど)
- 自由診療クリニックでの処方(一部のオンライン診療含む)
- 美容目的・アンチエイジング目的と判断された場合
月額費用のシミュレーション|保険適用と自費の比較
実際にかかる費用は、薬剤の種類・診察頻度・検査内容によって異なります。以下は3割負担の場合の目安です。
保険適用の場合(月額目安・3割負担)
費用項目 | 初診月 | 安定後(月) |
|---|---|---|
初診料 | 約900円 | — |
再診料 | — | 約220円 |
ホルモン検査(FSH・E2) | 約1,500〜2,500円 | 年1〜2回程度 |
経皮パッチ(メノエイドコンビ等) | 約900〜1,500円 | 約900〜1,500円 |
経皮ジェル(ル・エストロジェル等) | 約600〜1,200円 | 約600〜1,200円 |
黄体ホルモン(デュファストン等) | 約300〜600円 | 約300〜600円 |
合計目安(安定後) | — | 1,500〜3,500円程度 |
初診月は検査費用が加わるため5,000〜10,000円程度になることがあります。
自費(自由診療)の場合
費用項目 | 目安 |
|---|---|
初診料(自由診療) | 5,000〜15,000円 |
薬剤費(1ヶ月分) | 5,000〜15,000円 |
オンライン診療の場合 | 月3,000〜8,000円程度(薬代込み) |
合計目安(月) | 1万〜3万円超 |
自費診療は保険適用のHRTと同じ薬剤を使う場合でも、診察料・処方料が全額自己負担となるため高額になります。「便利さ」と費用のバランスを検討してください。
費用を抑えるための方法|保険・助成金・制度の活用
HRTの費用を抑えるために活用できる制度を解説します。特に月額が積み重なる長期治療では、制度の活用が重要です。
高額療養費制度の活用
月の医療費(自己負担)が一定額を超えた場合、超過分が払い戻される「高額療養費制度」があります。HRTのみでは上限に達しないケースが多いですが、手術・入院を伴う月は利用できます。
- 70歳未満・標準的な収入の方の自己負担上限: 約8万100円/月(医療費が26万7,000円を超えた場合)
- 申請方法: 加入している健康保険組合または市区町村の国民健康保険窓口へ
自治体の女性健康支援・更年期助成金
一部の自治体では、女性の健康支援として婦人科受診費用・検査費用の一部を助成しています。対象・金額は自治体によって異なります。
- 「〇〇市 更年期 助成金」「〇〇区 女性健康支援」で検索するか、市区町村の保健センターに問い合わせる
- 2023〜2024年にかけて、東京都・神奈川県・大阪府など複数の自治体が更年期外来の費用助成を開始
ジェネリック医薬品の利用
HRTの薬剤にはジェネリック(後発薬)が存在するものがあります。先発品と同一の有効成分・品質で、費用が20〜50%程度安くなるケースがあります。主治医または薬剤師に「後発品で構わない」と伝えることで切り替えられます。
被扶養者・扶養家族の保険利用
配偶者の健康保険の被扶養者(専業主婦等)でもHRTの保険適用は通常通り受けられます。加入している保険組合によっては付加給付(一部自己負担の払い戻し)の制度があるため確認をお勧めします。
見落としがちな追加費用
HRT開始前・継続中に発生しやすい追加費用があります。事前に把握しておくことで、費用計画が立てやすくなります。
- 子宮頸がん・体がん検診: HRT開始前・継続中の定期検査。子宮がある方は子宮内膜への影響チェックが必要(年1回程度、検診費用は別途)
- 乳がん検診(マンモグラフィ・超音波): 推奨頻度は年1〜2回。費用は医療機関・検診機関によって3,000〜8,000円程度
- 骨密度測定: HRTの骨への効果確認に定期実施。保険適用の場合で1,000〜2,000円程度
- 血液検査(定期): 肝機能・脂質・ホルモン値の定期確認。年1〜2回
よくある質問(FAQ)
Q. HRTは何年使い続けると費用がどのくらいになりますか?
月額3,000円(保険適用・3割負担)の場合、年間3.6万円、5年間で約18万円の計算です。定期検診(乳がん・子宮がん検診)を加えると年間5〜8万円程度になります。症状のある期間の「QOL投資」として、費用対効果を主治医と話し合うことをお勧めします。
Q. 婦人科でなく内科で処方してもらえますか?
HRTの処方は産婦人科・婦人科が専門ですが、更年期外来や内科でも処方可能な場合があります。ただし、適切なホルモン値の評価・禁忌チェック・定期フォローのためには婦人科専門医のもとで治療を受けることが安全です。
Q. オンライン診療でHRTを処方してもらうと安いですか?
オンライン診療は、多くの場合自由診療(保険適用外)となります。利便性は高いですが、月額費用は保険適用の対面診療より高くなるケースが一般的です。保険適用を重視する場合は、対面の婦人科受診が費用を抑えられます。
Q. 転居して担当医が変わった場合、また検査費がかかりますか?
転院時は改めて初診料・基本検査が必要になることが多いです。前の医療機関から検査結果(ホルモン値・画像等)の紹介状・データを受け取っておくと、検査の重複を減らせます。
Q. 保険組合の健康診断で更年期検査を受けられますか?
一部の健康保険組合では付加健診として婦人科検診・ホルモン検査を提供していますが、HRTの適応評価には含まれないことが多いです。症状がある場合は、健診と別に婦人科外来を受診することをお勧めします。
まとめ
HRTは保険適用で月額1,500〜3,500円程度(3割負担・安定期)と、比較的手頃な費用で継続できる治療です。初診月は検査費が加わり5,000〜10,000円程度になります。自費診療は利便性がある反面、月1万円超になるケースもあるため費用対効果を比較してください。高額療養費制度・自治体助成金・ジェネリック薬の活用で、長期的な自己負担をさらに軽減できます。費用の不安がある場合は、受診前に医療機関に概算費用を問い合わせることも有効です。
参考資料
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- 日本女性医学学会「女性医学ガイドブック 更年期医療編 2019年度版」
- 社会保険診療報酬支払基金 薬価基準(2024年度)
本記事は医療情報の提供を目的としており、記載の費用はあくまで目安です。実際の費用は医療機関・保険種別・使用薬剤によって異なります。必ず受診先に直接ご確認ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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