
プラセンタ注射(メルスモン・ラエンネック)はヒト胎盤エキスを含む医薬品で、更年期症状の改善・肝機能改善を保険適用として持ちます。ホルモンそのものを補充するのではなく、自律神経・免疫・代謝を整えることでホルモンバランスの改善を補助します。
プラセンタ注射とは何か
プラセンタ(胎盤)注射とは、ヒト胎盤から抽出した有効成分を含む注射薬を皮下または筋肉内に投与する治療です。日本では「メルスモン」(丸石製薬)と「ラエンネック」(日本生物製剤)の2製品が医薬品として承認されています。
製品名 | 主な保険適用 | 主な投与法 |
|---|---|---|
メルスモン | 更年期障害・乳汁分泌不全 | 皮下注射(週2〜3回) |
ラエンネック | 慢性肝疾患(肝硬変・慢性肝炎) | 静脈注射・筋肉注射 |
メルスモンは2021年6月に原材料調達の問題から出荷停止となりましたが、2023年12月より出荷が再開されています。供給量は段階的に回復中で、取り扱いのある医療機関は増加傾向にあります。
プラセンタ注射に含まれる有効成分
プラセンタエキスには多様な生理活性物質が含まれており、これらが相互作用することで多面的な効果を発揮すると考えられています。
- アミノ酸:コラーゲン・タンパク質合成の素材(グリシン・プロリン等)
- ペプチド:成長因子様の作用を持つ生理活性ペプチド
- 核酸:DNA・RNA合成の材料、細胞再生をサポート
- 糖類・ムコ多糖:ヒアルロン酸前駆体含む保水成分
- 各種酵素・ビタミン・ミネラル:代謝促進
- 成長因子(EGF・FGF・HGF等):細胞増殖・組織修復促進
重要な注意点として、プラセンタ注射自体にエストロゲンなどの性ホルモンは含まれていません。ホルモン補充療法(HRT)とは作用機序が根本的に異なります。
ホルモンバランスへの作用メカニズム
プラセンタ注射が更年期症状に効果を示すメカニズムとして、主に以下の経路が考えられています。
自律神経系の調整
更年期のほてり・発汗・動悸の多くは、エストロゲン低下による視床下部の体温調節機能の乱れと自律神経の不均衡が原因です。プラセンタエキスは視床下部-下垂体系に作用し、自律神経バランスの改善を助けると考えられています。
下垂体ホルモン分泌への影響
動物実験では、プラセンタエキスが下垂体のゴナドトロピン(LH・FSH)分泌パターンに影響を与えることが報告されています。閉経後に高値となるFSH・LHが軽度低下することで、ほてりが緩和される可能性が示唆されています。
抗酸化・抗炎症作用
慢性的な酸化ストレスと炎症は、ホルモン産生細胞の機能低下を引き起こします。プラセンタエキスの抗酸化成分がこれを軽減することで、残存するホルモン産生機能を維持することに寄与する可能性があります。
臨床エビデンスと限界
プラセンタ注射の更年期症状への効果については、小規模の臨床試験やケースシリーズが存在しますが、大規模ランダム化比較試験(RCT)はまだ限られています。
- 更年期女性へのメルスモン投与で、ほてり・発汗・倦怠感の改善が報告(国内臨床試験)
- HRT(ホルモン補充療法)と比較した際の効果の強さは劣るとする見解が多い
- プラセボ効果の関与を否定できないため、エビデンスレベルはまだ低い
- 長期安全性データの蓄積が引き続き必要
適応・対象者
メルスモンの保険適用は以下の通りです。
- 更年期障害(血管運動神経症状:ほてり・のぼせ・発汗など)
- 乳汁分泌不全
上記以外(美容・疲労回復・アンチエイジング等)での使用は自由診療となり全額自己負担です。エストロゲン依存性腫瘍(乳がん・子宮体がん)の既往がある場合や、妊娠中・授乳中は使用を避け、必ず医師に相談してください。
安全性・副作用
- 注射部位の発赤・腫脹・疼痛(最も一般的な副作用)
- まれにアレルギー反応(蕁麻疹・発疹)
- 理論上のvCJD(変異型クロイツフェルト・ヤコブ病)感染リスク:現在まで国内での感染報告なし。献血不可となる
- 医薬品グレードの品質管理がされているため、化粧品・食品のプラセンタとは安全性が異なる
よくある質問(FAQ)
Q. メルスモンはいつから入手できますか?
2023年12月に出荷が再開されました。ただし供給量は段階的な回復中のため、すべての医療機関で即時入手できるわけではありません。かかりつけの婦人科・産婦人科に在庫状況を問い合わせてください。
Q. プラセンタ注射とHRT(ホルモン補充療法)はどう違いますか?
HRTは不足したエストロゲンを直接補充するため、更年期症状への効果は確立されています。プラセンタ注射はホルモンを含まず、自律神経・免疫系への作用で間接的に症状改善を狙います。重症の更年期症状にはHRTの方が有効とされる場合が多く、医師との相談で適切な選択をしてください。
Q. どのくらいの頻度・期間使えばいいですか?
メルスモンの標準的な投与は週2〜3回の皮下注射です。効果の実感には個人差があり、1〜3カ月を目安に効果を評価します。長期継続については担当医と相談のうえ決定してください。
Q. 献血ができなくなると聞いたが本当ですか?
はい。ヒトプラセンタ製剤を投与された方は、日本赤十字社の規定により献血が永久に不可となります。投与前に必ずこの点を確認してください。
Q. プラセンタ注射で生理が戻ることはありますか?
閉経後の方に月経が再来することはありません。ただし、更年期移行期(ペリメノポーズ)で月経が不規則な場合に、ホルモンバランスの改善により周期が整うことを経験される方はいます。これは症状の改善であり、妊娠能力の回復とは別のことです。
まとめ
プラセンタ注射(メルスモン・ラエンネック)は更年期症状の改善に一定の効果が期待できる医薬品ですが、ホルモン補充療法とは異なる作用機序を持ちます。メルスモンは2023年12月に出荷が再開され、保険診療での使用が可能になっています。更年期症状にお悩みの場合は、産婦人科・更年期外来でHRTを含めた治療法の比較・相談をおすすめします。
免責事項:本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療を目的としたものではありません。個別の症状については必ず医師にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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