
ゴナールF(FSH製剤)とは
ゴナールF(一般名:ホリトロピン アルファ)は、遺伝子組み換え技術で製造された高純度のFSH(卵胞刺激ホルモン)製剤です。不妊治療において卵胞の発育を促すために使用され、タイミング法・人工授精・体外受精のいずれの段階でも処方される可能性があります。
FSHの役割と卵胞発育
FSHは脳の下垂体前葉から分泌されるホルモンで、卵巣内の原始卵胞を刺激して成熟卵胞へと育てる働きがあります。自然周期では通常1個の主席卵胞が選択されますが、ゴナールFを投与することで複数の卵胞を同時に発育させることが可能です。
HMG製剤との違い
項目 | ゴナールF(rFSH) | HMG製剤 |
|---|---|---|
成分 | FSHのみ | FSH+LH |
製法 | 遺伝子組み換え | 閉経後女性の尿由来 |
純度 | 非常に高い | 製品により異なる |
投与方法 | 皮下注射(自己注射可) | 筋肉注射が多い |
ロット間差 | 極めて少ない | やや大きい |
ゴナールFが処方されるケース
ゴナールFは排卵障害がある方だけでなく、体外受精での複数卵胞採取を目的とした調節卵巣刺激(COS)でも広く使用されます。処方される主なケースは以下のとおりです。
- 排卵障害: クロミフェンで反応が不十分な場合のステップアップとして
- 体外受精(IVF): 複数の成熟卵を得るための排卵誘発
- 人工授精(IUI): 卵胞発育を確実にし、妊娠率を高める目的
- PCOS(多嚢胞性卵巣症候群): 低用量漸増法で慎重に使用
- 原因不明不妊: 排卵のタイミングを最適化するため
自己注射の方法と実際の手順
ゴナールFはペン型注射器(ゴナールFペン)で提供されており、自宅での自己注射が可能です。初回はクリニックで看護師から指導を受け、2回目以降は自宅で行うのが一般的です。
ゴナールFペンの使い方
- ペンのキャップを外し、新しい注射針をセットして空打ち確認
- 医師から指定された用量をダイヤルで設定
- 注射部位(おへその下あたり、左右交互)をアルコール綿で消毒
- 皮膚をつまみ、90度の角度で針を刺す
- ダイヤルが「0」になるまでボタンを押し切り、10秒間そのまま待つ
- 針を抜いて軽く押さえ、使用済み針は専用容器に廃棄
注射時の注意点
- 冷蔵保存(2〜8℃)の製剤は、注射前に室温に戻してから使用すると痛みが軽減
- 残量が設定用量に足りない場合は、新しいペンに交換して残量分を追加注射
- 注射の時間は毎日同じ時間帯に固定するのが望ましい
- 皮下脂肪が薄い部位は避け、おへそ周囲の柔らかい部分を選ぶ
用量の決め方とモニタリング
ゴナールFの用量は、年齢・体重・卵巣予備能(AMH値)・治療目的によって個別に設定されます。過剰刺激を避けるため、投与中は超音波検査と血液検査で卵胞の発育状況を頻繁にモニタリングします。
一般的な用量目安
治療目的 | 開始用量 | 調整 |
|---|---|---|
排卵誘発(タイミング法・AIH) | 50〜75IU/日 | 7〜14日ごとに25〜37.5IU増量 |
体外受精(通常反応) | 150〜225IU/日 | 超音波で卵胞径を見ながら調整 |
体外受精(低反応) | 225〜300IU/日 | 反応に応じて増減 |
PCOS(低用量漸増法) | 37.5〜50IU/日 | 慎重に漸増(OHSS予防) |
モニタリングの頻度
投与開始後、3〜5日ごとに経膣超音波検査で卵胞の数・サイズを確認します。血中エストラジオール(E2)値の測定も併用し、卵胞1個あたりE2値200〜300pg/mLが目安とされています。
副作用とリスク管理
ゴナールFの最も重要なリスクはOHSS(卵巣過剰刺激症候群)と多胎妊娠です。適切なモニタリングと用量調整により、これらのリスクを最小限に抑えることが可能です。
主な副作用
- 注射部位の反応: 赤み、痛み、腫れ(最も一般的)
- 腹部膨満感・下腹部痛: 卵巣腫大に伴う症状
- 頭痛: 比較的軽度なことが多い
- OHSS: 重症例では腹水貯留、呼吸困難、血栓症のリスク
- 多胎妊娠: 複数卵胞が排卵した場合に起こりうる
OHSSの警告サイン
以下の症状が出た場合は速やかにクリニックに連絡してください。
- 急激な体重増加(2〜3日で2kg以上)
- 強い腹部の張り・痛み
- 尿量の減少
- 息苦しさ
- 吐き気・嘔吐
費用と保険適用
2022年4月から不妊治療の保険適用が拡大され、ゴナールFも保険診療で使用可能となりました。ただし、年齢や回数の制限があるため事前に確認が必要です。
費用の目安(3割負担)
製剤 | 規格 | 3割負担時の概算 |
|---|---|---|
ゴナールFペン300 | 300IU | 約3,000〜4,000円 |
ゴナールFペン450 | 450IU | 約4,500〜6,000円 |
ゴナールFペン900 | 900IU | 約8,000〜10,000円 |
体外受精1周期で使用するゴナールFの総量は個人差がありますが、1,500〜3,000IU程度が一般的です。高額療養費制度を利用すれば自己負担の上限が設定されるため、事前に加入している健康保険に確認しましょう。
よくある質問
ゴナールFの注射は痛いですか?
ペン型注射器の針は非常に細く(29〜30G)、痛みは軽微です。冷蔵保存の場合は室温に戻してから注射すると刺激が少なくなります。
注射を打つ時間がずれても大丈夫ですか?
数時間のずれであれば大きな影響はありませんが、毎日できるだけ同じ時間帯に投与するのが理想です。大幅にずれる場合はクリニックに相談してください。
ゴナールFで太ることはありますか?
FSH製剤自体に体重増加作用はありませんが、卵巣刺激によるホルモン変動で一時的にむくみや腹部膨満を感じることがあります。急激な体重増加はOHSSの兆候の可能性があるため注意が必要です。
クロミフェンとゴナールFの違いは?
クロミフェンは経口の排卵誘発薬で作用がマイルド、ゴナールFは注射剤で直接卵巣に作用するためより強力です。クロミフェンで十分な効果が得られない場合にゴナールFへステップアップするのが一般的な流れです。
自己注射がどうしても怖い場合は?
クリニックへの通院注射に切り替えることが可能です。また、練習用キットやYouTubeの手技動画を参考にしながら徐々に慣れていく方法もあります。不安な場合は看護師に相談しましょう。
まとめ
ゴナールF(FSH製剤)は不妊治療における排卵誘発の中心的な注射薬で、高純度の遺伝子組み換えFSHにより安定した卵胞発育を促します。ペン型注射器による自己注射が可能で通院負担を軽減できる反面、OHSS予防のための適切なモニタリングが不可欠です。用量は個々の卵巣機能に応じて設定されるため、超音波検査と血液検査を定期的に受けながら治療を進めましょう。
排卵誘発の方法や薬剤選択について疑問がある方は、主治医に相談のうえ、ご自身に最適なプロトコルを確認してください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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