
フェゾリネタント(商品名:ベオーザ)は2023年に日本で承認された更年期ホットフラッシュの新薬です。従来のホルモン補充療法(HRT)と異なり、ホルモンを使わない非ホルモン性の治療薬として、HRTが使えない方にも選択肢を提供します。
フェゾリネタント(ベオーザ)とは
フェゾリネタントは、ニューロキニン3(NK3)受容体拮抗薬という新しい作用機序を持つ経口薬です。更年期のホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)は、エストロゲン低下により視床下部の体温調節中枢(KNDyニューロン)が過活動状態になることで引き起こされます。フェゾリネタントはこの過活動を抑制することで、ホルモンを使わずにホットフラッシュを軽減します。
- 一般名:フェゾリネタント(fezolinetant)
- 商品名:ベオーザ(Veoza)
- 製造販売元:アステラス製薬
- 承認年:2023年(日本・米国・EU)
- 薬効分類:NK3受容体拮抗薬(非ホルモン性更年期治療薬)
- 用法・用量:1回45mgを1日1回経口投与
作用メカニズム:KNDy仮説
ホットフラッシュの発生には、視床下部のKNDyニューロン(キスペプチン・ニューロキニンB・ダイノルフィンを産生する神経細胞)が関与しています。
KNDyニューロンとホットフラッシュ
- 閉経によりエストロゲンが低下する
- KNDyニューロンのエストロゲンによる抑制が解除される
- KNDyニューロンからニューロキニンB(NKB)が過剰分泌される
- NKBが体温調節中枢に作用し、皮膚血管拡張→ほてり・発汗を引き起こす
フェゾリネタントはNKBが結合するNK3受容体を阻害することで、このカスケードを上流でブロックします。エストロゲンを使わずに中枢神経系に直接作用する点が革新的です。
臨床試験データ(SKYLIGHT試験)
フェゾリネタントの有効性は、グローバル第3相臨床試験「SKYLIGHTプログラム」で検証されました。
試験 | 対象 | 主要評価項目 | 結果 |
|---|---|---|---|
SKYLIGHT 1 | 閉経後女性 501例 | 中等度〜重度ホットフラッシュ頻度・重症度(12週) | プラセボ比有意に改善(p<0.001) |
SKYLIGHT 2 | 閉経後女性 501例 | 同上 | プラセボ比有意に改善(p<0.001) |
SKYLIGHT 4 | 長期安全性試験 1832例 | 52週安全性 | 忍容性良好 |
- 12週時点でホットフラッシュ頻度:フェゾリネタント群で週平均-60〜65%減少(プラセボ群-45〜50%比)
- 重症度スコアも有意に改善
- 効果の発現は投与1週目から確認されている
適応・使用対象
ベオーザが特に適切な対象は以下の通りです。
- 閉経後または閉経移行期の中等度〜重度のホットフラッシュがある女性
- HRT(ホルモン補充療法)が禁忌または希望しない女性:乳がん既往・血栓症既往・ホルモン感受性腫瘍など
- SSRIやSNRIなど他の非ホルモン療法が無効または忍容性不良だった女性
ベオーザは乳がん・子宮体がんの既往がある方でも使用できる可能性がある点で、従来のHRTとは大きく異なります。ただし、個別の状況に応じて腫瘍専門医・産婦人科医との相談が必要です。
副作用と安全性
主な副作用
- 腹痛・下痢(5〜10%程度)
- 不眠(5〜8%程度)
- 倦怠感
- 肝酵素上昇:ALT/ASTの上昇が一部で報告。肝機能モニタリングが推奨される
禁忌・使用上の注意
- 重篤な肝障害がある場合は禁忌
- CYP1A2を強く阻害する薬剤(フルボキサミン等)との併用禁忌(血中濃度が著しく上昇)
- 喫煙者・CYP1A2誘導薬(リファンピシン等)との相互作用に注意
- 定期的な肝機能検査の実施が推奨される
HRTおよび他の非ホルモン治療との比較
治療法 | 作用機序 | ホットフラッシュへの効果 | HRT禁忌への適用 |
|---|---|---|---|
HRT(エストロゲン) | エストロゲン補充 | 最も高い(70〜90%減少) | 不可(原則) |
フェゾリネタント(ベオーザ) | NK3受容体拮抗 | 高い(60〜65%減少) | 可能な場合がある |
SSRI/SNRI | セロトニン・ノルアドレナリン再取込阻害 | 中程度(50%程度) | 可能 |
ガバペンチン | GABA類似薬 | 中程度 | 可能 |
漢方薬(加味逍遙散等) | 不明 | 軽〜中程度 | 可能 |
費用・保険適用
ベオーザは2023年に薬価収載され、健康保険適用の対象です(閉経後の血管運動神経症状)。2024年時点での薬価は1錠(45mg)あたり約540円で、1カ月分(30錠)の薬代は約1万6,200円(3割負担で約4,900円)です。診察料・検査料は別途かかります。薬価は改定される場合があるため、処方を受ける医療機関でご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q. ベオーザはどこで処方してもらえますか?
産婦人科・更年期外来・婦人科を標ぼうする医療機関で処方を受けることができます。2023年承認の新薬であるため、すべての施設で処方されているわけではありません。受診前に電話で取り扱いを確認することをお勧めします。
Q. フェゾリネタントはホットフラッシュ以外の更年期症状にも効きますか?
現時点ではホットフラッシュ(血管運動神経症状)が主要な適応です。気分の落ち込み・関節痛・性交痛など他の更年期症状については、HRTや他の治療法との組み合わせを医師と相談してください。
Q. 乳がん治療中でも使えますか?
乳がん治療中の使用については、腫瘍内科医・乳腺外科医・産婦人科医が連携して個別に判断する必要があります。SKYLIGHT試験では乳がん既往患者は除外されており、この集団での安全性データは限られています。
Q. 服用をやめるとホットフラッシュが再燃しますか?
服用中止後にホットフラッシュが再発する可能性はあります。更年期は一般的に閉経後2〜5年で症状が落ち着くため、ある程度の期間服用を継続した後、症状の変化をみながら医師と相談の上で減薬・中止を検討してください。
Q. 妊娠中・授乳中に使えますか?
ベオーザは妊娠中・授乳中の安全性は確立されていません。これらの状況での使用は避けてください。
まとめ
フェゾリネタント(ベオーザ)は、NK3受容体拮抗という新しい機序を持つ非ホルモン性の更年期ホットフラッシュ治療薬です。HRTが使えない乳がん既往者や血栓症リスクの高い方にも選択肢となりうる点が最大の特徴です。2023年日本で保険適用となり、産婦人科での処方が可能です。更年期症状でお悩みの場合は、婦人科・産婦人科で自分の状態に合った治療法を相談してください。
免責事項:本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療を目的としたものではありません。個別の症状については必ず医師にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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