子宮内膜症のGnRHアゴニスト療法は、卵巣からのエストロゲンの働きを抑え、痛みなどの症状を軽くするための治療です。「偽閉経療法」と呼ばれますが、永久に閉経させるという意味ではありません。ほてりなどの低エストロゲン症状や骨への影響を考慮し、妊娠希望、これまでの薬の効果、続ける期間を相談して選びます。
治療中に先に相談したいこと
| 状況 | 確認・対応 |
|---|---|
| ほてり・不眠・気分の落ち込みなどがつらい | 生活への影響を治療先へ伝え、薬の調整や対策を相談する |
| 痛みが増す、出血が多い、症状が改善しない | 初期の一時的な変化と決めず、次回を待たず治療先へ相談する |
| 注射日を過ぎた・点鼻などを使い忘れた | 製品名と時刻を伝え、対応を確認する。自分で間隔や量を変更しない |
| 強い息苦しさ、胸痛、激しい頭痛や急な見え方の変化など | 直ちに医療の助けを求める。重い副作用などの評価が必要なことがある |
| 妊娠の可能性がある・授乳中・妊娠を希望している | 使用前から必ず伝え、禁忌、避妊、治療と妊娠計画を確認する |
痛みを抑える選択肢で、全員の第一選択ではありません
GnRHアゴニストは、使い始めにホルモン分泌を一時的に促した後、継続により下垂体・卵巣の働きを抑えます。例えばリュープリンの電子添文は、卵巣からのエストラジオールが低下し、通常は排卵と月経が抑えられると説明しています。初期には一時的に症状が悪化することもあります。
ESHRE2022は、痛みへの治療選択肢としつつ、副作用を踏まえ、ホルモン配合剤や黄体ホルモン製剤などで十分な効果が得られない場合の次の選択肢として使う考え方を示しています。
ジエノゲストやLEPなどと「最強・中程度」の順位だけで比較せず、効き方、使えない条件、副作用と本人の希望を確認します。ESHRE2022:推奨11〜20
使用間隔と期間は、製品・適応を確認します
例えば国内のリュープリン注射用・注射用キット1.88mg/3.75mgは、子宮内膜症では4週に1回の皮下注射で、初回は月経周期1〜5日目と記載されています。量は体重などを踏まえて医師が決めます。別の規格や他の病気の用法を、そのまま入れ替えることはできません。PMDA:リュープリン電子添文(6・7)
同添文は、子宮内膜症では骨塩量低下のため6か月を超える投与を原則行わず、6か月を超える安全性は確立していないとしています。やむを得ない長期使用や再投与では、可能な限り骨の検査を行い慎重に判断します。「6か月までは誰でも安全」「一定期間休めば何度でも再開できる」という意味ではありません。
点鼻薬などを使う場合も、回数、使用忘れ、妊娠の確認、骨への注意を製品ごとに確認します。注射を「月1回か3か月に1回」と一括りにせず、自分の薬の正式名と次回日を確認してください。
骨への影響と、つらい症状への対策
ほてり、発汗、頭痛、不眠などに加え、気分の落ち込みや骨塩量の低下にも注意が必要です。骨密度が一定の割合だけ低下し、終了後1年以内に全員回復する、とは保証できません。骨折歴、骨粗鬆症、以前の治療や他の薬などを伝え、検査や対策が必要か確認しましょう。
ESHREは、骨量低下や低エストロゲン症状を抑えるため、ホルモンを少量補う「アドバック療法」を考慮するとしています。国内での処方内容や保険の扱い、本人に使える組み合わせは治療先で確認します。手持ちのピルやホルモン剤、漢方薬、サプリメントを自分で追加する方法ではありません。
薬の間隔を延ばす、つらさを我慢する、といった対応を一人で決めず、いつから何がどの程度つらいかを伝えてください。リュープリンの患者向ガイドにも、骨への注意や症状が改善しない場合の見直しが記載されています。PMDA:リュープリン患者向医薬品ガイド(3〜4ページ)
痛みの治療と、妊娠を目指す治療を分けます
リュープリンの電子添文では、妊娠中・妊娠の可能性がある場合や授乳中は禁忌で、治療中はホルモン剤以外の方法による避妊を求めています。月経が止まっていることを避妊の保証にしないでください。
ESHREは、子宮内膜症による不妊に対し、妊娠率を上げることだけを目的とする卵巣機能の抑制は勧めていません。また、ART前に長期間アゴニストを投与して出生率を上げる方法も、利益が不確かなため勧めていません。
痛みの管理の必要性と、妊娠を目指す時期は分けて相談します。ESHRE2022:推奨39〜41・53
治療後に月経や排卵が戻る時期には個人差があり、全員が1〜3か月で妊娠可能になると決められません。終了後の診察、妊娠を試みる時期、必要な不妊評価などを相談してください。
手術や長期管理は、症状と希望から考えます
薬を使えば必ず手術を避けられる、嚢胞が4cm以上なら必ず手術、という一つの基準では決めません。痛み、画像の所見、年齢、過去の手術、卵巣機能、妊娠希望などを合わせて検討します。痛みを抑える目的と、将来の妊娠や採卵に向けた目的を確かめましょう。
費用は製品・量・診察や検査、保険の条件によって変わります。すべて一律に保険で月いくら、とせず、治療期間中に必要な検査も含めた見通しを確認してください。症状や今後の妊娠希望が変わったときも、計画を見直せます。
出典と確認日
2026年10月26日にPMDAのリュープリン電子添文(2026年9月改訂)・現行患者向ガイドと、ESHRE2022の採用箇所を確認しました。効果・副作用の一律の割合や回復期限は示していません。医師による本記事の個別監修はありません。

この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
公的機関や医学会などの情報をもとに、女性の健康と医療の選択に役立つ情報を整理しています。