
DHEAサプリメントと卵巣機能の関係
DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)は副腎から分泌されるホルモンで、体内でテストステロンやエストロゲンに変換される性ホルモンの前駆体です。不妊治療の分野では、卵巣予備能が低下した女性(DOR: Diminished Ovarian Reserve)に対してDHEAサプリメントの補充が注目されており、採卵数や胚の質の改善を期待して使用されるケースが増えています。
DHEAの体内での役割
- 性ホルモンの原料 — テストステロン、エストロゲンに変換
- 卵胞の発育サポート — 前胞状卵胞の成長を促進する可能性
- 卵巣のアンドロゲン環境の改善 — 卵胞液中のアンドロゲン濃度を適正化
- 加齢に伴う減少 — 20代をピークに30代以降急速に低下
不妊治療におけるDHEAの使用エビデンス
DHEAの不妊治療への応用は2000年代からイスラエルやアメリカのクリニックで始まり、現在では複数の臨床研究で効果が報告されています。ただし、大規模なランダム化比較試験(RCT)は限定的であり、エビデンスレベルは中程度です。
報告されている効果
項目 | 効果 | エビデンスレベル |
|---|---|---|
採卵数の増加 | 平均1〜3個増加の報告 | 中等度 |
胚の質の改善 | 良好胚率の上昇 | 中等度 |
妊娠率の向上 | 卵巣予備能低下例で改善傾向 | 中〜低 |
流産率の低下 | 染色体異常胚の減少の可能性 | 低 |
AMH値の上昇 | 一部の報告で軽度上昇 | 低〜中 |
2018年のコクランレビューでは「卵巣予備能低下の女性においてDHEAが体外受精の成績を改善する可能性がある」としつつ、さらなる研究が必要と結論づけています。
推奨される用量と服用方法
不妊治療で使用されるDHEAの標準的な用量とスケジュールは以下のとおりです。サプリメントは医師の指導のもとで使用することが推奨されます。
一般的なプロトコル
- 用量: 1日75mg(25mg×3回に分割)
- 服用タイミング: 食後に服用(朝・昼・夕)
- 服用期間: 効果が現れるまで6〜16週間(卵胞の発育サイクルに基づく)
- 採卵周期の前: 最低2か月前から開始するのが理想
服用前の検査
検査 | 目的 |
|---|---|
DHEA-S血中値 | ベースラインの確認。低値の方がサプリ効果を得やすい |
テストステロン | アンドロゲン過剰でないことを確認 |
AMH | 卵巣予備能の評価 |
肝機能 | 長期服用による肝臓への影響を確認 |
副作用と注意点
DHEAはアンドロゲンの前駆体であるため、過剰摂取によりアンドロゲン過剰症状が出る可能性があります。適切な用量と定期的なモニタリングが重要です。
起こりうる副作用
- ニキビ — アンドロゲン上昇による皮脂分泌増加
- 多毛 — 顔面や体幹の体毛が濃くなる
- 脂性肌 — 皮脂腺の活性化
- 脱毛 — まれにアンドロゲン性脱毛
- 声の低下 — 高用量の長期使用で報告(まれ)
DHEAを避けるべきケース
- PCOS(アンドロゲンが既に高い場合)
- ホルモン感受性のがん(乳がん、子宮体がん)の既往
- 肝機能障害がある方
- テストステロン値が正常上限を超えている方
DHEAサプリメントの選び方
日本ではDHEAは医薬品ではなくサプリメントとして流通しており、品質や含有量にばらつきがある点に注意が必要です。
選択のポイント
- マイクロナイズドDHEAを選ぶ(吸収率が高い)
- 1カプセル25mgが用量調整しやすい
- GMP認証を受けた製造元の製品
- 不妊治療クリニックで取り扱いのある製品がベスト
- 海外通販は品質保証の面でリスクがある
DHEA以外の卵巣機能サポート
卵巣予備能低下に対しては、DHEAと並行して以下のサプリメントや生活習慣改善も検討されています。
サプリメント | 作用 | 用量目安 |
|---|---|---|
CoQ10(コエンザイムQ10) | ミトコンドリア機能の改善、卵子の質向上 | 200〜600mg/日 |
メラトニン | 抗酸化作用で卵子の酸化ストレスを軽減 | 3mg/日(就寝前) |
ビタミンD | 卵巣機能とAMH値に関連 | 1000〜4000IU/日 |
レスベラトロール | 卵巣の抗加齢効果の可能性 | 150〜200mg/日 |
よくある質問
DHEAは市販で購入できますか?
日本では医薬品ではなくサプリメントの扱いですが、国内販売が限られているため、不妊治療クリニックでの購入やiHerbなどの海外通販で入手するケースが多いです。クリニック経由が品質面で安心です。
DHEAはいつから飲み始めるべきですか?
採卵周期の最低2か月前から開始するのが理想です。卵胞が成熟卵に至るまでには約3か月かかるため、早めの開始が効果的です。
DHEAでAMHは上がりますか?
一部の報告でAMHの軽度上昇が見られていますが、大幅な改善は期待しにくいとされています。主な効果は採卵数や胚の質の改善にあります。
DHEAと他の薬やサプリの相互作用はありますか?
ホルモン製剤(ピル、HRT)との併用は医師の判断が必要です。糖尿病薬や抗凝固薬との相互作用も報告されているため、服用中の薬がある場合は必ず主治医に申告してください。
男性がDHEAを飲んでも効果がありますか?
男性の精子質改善に対するDHEAのエビデンスは限定的です。男性不妊に対しては、亜鉛・CoQ10・カルニチンなど他のサプリメントの方がエビデンスが豊富です。
まとめ
DHEAサプリメントは、卵巣予備能が低下した女性の不妊治療において採卵数と胚の質を改善する可能性がある補助療法です。1日75mgを最低2か月前から服用し、DHEA-S・テストステロン値をモニタリングしながら使用します。PCOSやホルモン感受性のがん既往がある方は使用を避け、必ず医師の指導のもとで開始してください。
卵巣予備能低下で悩んでいる方は、不妊治療専門クリニックでDHEA補充の適応について相談してみましょう。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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