
DHEA膣座薬(プラステロン、商品名:インターロース)は、閉経関連泌尿生殖器症候群(GSM: Genitourinary Syndrome of Menopause)の治療薬として米国FDAが2016年に承認した新しい選択肢です。膣内にDHEAを投与することで局所的にエストロゲン・テストステロンに変換され、萎縮性膣炎の症状を改善します。全身へのホルモン吸収が少ないため、乳がん既往者でも使用できる可能性があります。
この記事のポイント
- DHEA膣座薬の作用機序とGSMへの効果
- 全身ホルモン療法との違い・乳がん既往者での検討
- 使用方法・副作用・注意事項
GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)とは何か
GSMは、閉経後のエストロゲン低下により膣・外陰部・下部尿路に生じる慢性症状の総称です。以前は「萎縮性膣炎」と呼ばれていました。適切な治療なしには自然軽快しないため、積極的な介入が推奨されます。
- 主症状:膣乾燥感、性交時疼痛、おりもの変化、外陰部掻痒感
- 泌尿器症状:頻尿、尿意切迫感、再発性尿路感染症
- 有病率:閉経女性の約50〜60%が何らかの症状を経験(NAMS 2020)
DHEA膣座薬の作用機序——局所変換の仕組み
DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)は副腎から分泌されるステロイドホルモンの前駆体です。膣粘膜細胞にはDHEAをエストロゲン・テストステロンに変換する酵素(アロマターゼ、3β-HSDなど)が存在します。DHEA座薬を膣内に投与することで、膣粘膜内で局所的にエストロゲンとテストステロンが産生され、粘膜の萎縮を改善します。
全身ホルモン療法との主な違い
項目 | DHEA膣座薬 | 全身HRT(経口・貼付) |
|---|---|---|
作用部位 | 主に局所(膣・外陰部) | 全身 |
血中ホルモン上昇 | わずか(閉経前基準値以下) | あり |
骨密度・全身症状 | 効果は限定的 | ほてり・骨粗鬆症にも有効 |
乳がん既往者への使用 | 検討可能(要担当医判断) | 原則禁忌(ER+乳がん) |
子宮内膜への影響 | 最小限 | プロゲスチン追加が必要 |
臨床試験で示された効果
FDA承認の根拠となったPhase III試験(ERC-231試験、n=1462)では、DHEA6.5mg膣座薬(1日1回12週間)投与により以下の改善が確認されました。
- 中等度〜重度の膣乾燥感:有意に改善(プラセボ比)
- 性交時疼痛(最も困っている症状):約37%の患者で著明改善
- 膣成熟度指数:表層細胞比率の有意な増加(粘膜修復の指標)
- 膣pH:正常範囲(4.5以下)への改善
(参考:Portman DJ et al., Menopause. 2019;26(2):151-155)
乳がん既往者での使用可能性
ER陽性乳がん既往者は全身エストロゲン補充が原則禁忌であり、GSM症状に悩む患者が多いです。DHEA膣座薬は血中エストロゲン上昇が閉経前基準値以下にとどまるため、乳がん既往者でも使用を検討できる可能性があります。ただし、アロマターゼ阻害薬(AI)服用中は効果が減弱する可能性があり、乳腺外科・婦人科の両科との連携が不可欠です。自己判断での使用は避け、必ず担当医に相談してください。
使用方法と注意事項
DHEA膣座薬の標準的な使用方法は就寝前に1錠を膣内深部に挿入します。
- 標準用量:6.5mg 1日1回(就寝前)
- 効果発現:2〜4週で乾燥感改善、性交時疼痛は4〜12週で改善
- 維持療法:症状が改善した後も継続投与が推奨される場合あり
- 保管:直射日光・高温多湿を避ける(冷蔵不要)
副作用
- 膣分泌物の増加(約10〜14%):薬剤の溶解によるもので多くは問題なし
- 膣不快感(軽度):使用初期に生じることあり
- 全身性の副作用は少ないが、ニキビや体毛増加などアンドロゲン様作用の報告がまれにあり
日本での入手・現状
プラステロン膣座薬は米国ではFDA承認(インターロース)されていますが、2026年時点での日本での承認状況は限定的です。類似薬剤として局所エストリオール製剤が保険適用されており、担当医と現在利用可能な選択肢を相談することが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q. DHEA膣座薬は使用中に性交渉はできますか?
性交前2〜3時間は使用を避けることが推奨されます。パートナーへの影響を考慮し、就寝前に使用するのが一般的です。
Q. 効果はいつごろから感じられますか?
膣乾燥感は2〜4週間で改善を感じる方が多いですが、性交時疼痛の改善には4〜12週かかることがあります。個人差があるため、少なくとも12週は継続することが推奨されます。
Q. 乳がんの術後に使えますか?
ER陽性乳がん既往者でも検討できる場合がありますが、必ず乳腺外科と婦人科の両方に相談してください。アロマターゼ阻害薬との相互作用も考慮が必要です。
Q. 通常のホルモン補充療法と何が違いますか?
全身HRTはほてりや骨粗鬆症など全身症状にも有効ですが、血中ホルモン濃度を上昇させます。DHEA膣座薬は局所への作用を主とし、全身への影響が少ない点が特徴です。
Q. 閉経前でも使えますか?
GSMは主に閉経後に生じる状態で、DHEA膣座薬は閉経後女性を対象に承認されています。閉経前の使用については担当医に相談してください。
まとめ
DHEA膣座薬(プラステロン)はGSMの新しい局所療法として注目されています。全身へのホルモン吸収が少なく、乳がん既往者への選択肢として研究が進んでいます。膣乾燥感・性交時疼痛への有効性は臨床試験で確認されており、日本でも医師への相談を通じて治療選択肢として検討できます。
- 作用:膣粘膜内でDHEA→エストロゲン・テストステロンに局所変換
- 効果:膣乾燥感・性交時疼痛の改善(12週以上で評価)
- 特徴:全身ホルモン上昇が最小限→乳がん既往者での検討可能性
免責事項:本記事は医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を推奨するものではありません。必ず担当医にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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