EggLink

先天性副腎皮質過形成(CAH)の症状と治療

2026/4/19

先天性副腎皮質過形成(CAH)の症状と治療

「先天性副腎皮質過形成(CAH)とはどんな病気?」「生まれつきのホルモン異常はどう治療する?」——CAHは副腎皮質でのコルチゾール合成酵素が先天的に欠損する遺伝性疾患で、ホルモンバランスの異常と身体の変化を引き起こします。

【この記事のポイント】

  • CAHの約95%は21-水酸化酵素欠損症が原因で、常染色体劣性遺伝で発症する
  • コルチゾール合成が阻害され、代わりにアンドロゲン(男性ホルモン)が過剰産生される
  • 生涯にわたるグルココルチコイド補充と定期的なホルモンモニタリングが必要

CAHとは——副腎のステロイド合成経路が止まる

先天性副腎皮質過形成(Congenital Adrenal Hyperplasia:CAH)は、副腎皮質でコルチゾールを合成するために必要な酵素が遺伝的に欠損する疾患群です。最も多い21-水酸化酵素欠損症の発生頻度は約1万〜1万5千人に1人です。

ステロイド合成経路の障害

21-水酸化酵素が働かないと、コルチゾールの前駆体(17-OHプロゲステロン)が蓄積し、アンドロゲン合成経路に流れ込んで男性ホルモンが過剰産生されます。同時にACTHが上昇して副腎が肥大(過形成)します。

CAHの分類——古典型と非古典型

酵素活性の残存度によって2つの型に分類され、症状の重症度が異なります。

分類

酵素活性

発症時期

特徴

古典型・塩喪失型

ほぼゼロ

新生児期

副腎クリーゼ(塩喪失)のリスク。女児の外性器男性化

古典型・単純男性化型

わずかに残存

幼児期

塩喪失は軽度だが、思春期早発・男性化

非古典型(遅発型)

20〜50%残存

思春期〜成人

多毛・ニキビ・月経不順(PCOSと誤診されやすい)

女性の症状——外性器の変化からPCOS様症状まで

CAHの症状は型によって大きく異なります

古典型(女児)

  • 外性器の男性化:陰核肥大・陰唇融合(Prader分類で評価)。内性器(子宮・卵巣)は正常
  • 塩喪失型では生後1〜2週間で副腎クリーゼ(低ナトリウム血症・脱水・ショック)のリスク

非古典型(成人女性)

  • 多毛・ニキビ:アンドロゲン過剰による
  • 月経不順・稀発月経
  • 不妊:排卵障害に伴う
  • 症状がPCOSと酷似するため、17-OHプロゲステロンの測定で鑑別する

診断——17-OHプロゲステロンが鍵

CAHの診断は血中17-OHプロゲステロン(17-OHP)の測定が中心です。

  • 新生児スクリーニング:日本では先天性代謝異常等検査の項目に含まれる
  • 早朝の17-OHP:200ng/dL以上で古典型を示唆、基準値上限〜200ng/dLで非古典型の疑い
  • ACTH負荷試験:非古典型が疑われる場合、ACTH刺激後の17-OHPが1,000ng/dL以上で確定
  • 遺伝子検査:CYP21A2遺伝子の変異解析で確定診断

治療——グルココルチコイド補充が基本

CAHの治療は不足しているコルチゾールを補充し、過剰なACTH→アンドロゲンを抑制することが目標です。

薬物療法

  • ヒドロコルチゾン(小児):成長への影響が少ない短時間作用型を使用。10〜15mg/m²/日
  • プレドニゾロンまたはデキサメタゾン(成人):1日1〜2回の服用で管理しやすい
  • フルドロコルチゾン(塩喪失型):ミネラルコルチコイドの補充

非古典型の治療

症状が軽度で妊娠を希望しない場合は無治療で経過観察することもあります。多毛・ニキビに対しては低用量ピルや抗アンドロゲン薬が使用されます。

妊娠・出産について——適切な管理で妊娠は可能

CAHの女性は適切なホルモン管理のもとで妊娠・出産が可能です。

  • 古典型:排卵障害の改善のためグルココルチコイドの用量調整が必要
  • 非古典型:治療開始で約80%が排卵を回復するとの報告がある
  • 妊娠中はヒドロコルチゾンを継続(胎盤で不活化されるため胎児への影響が少ない)
  • 遺伝カウンセリング:パートナーの保因者検査が推奨される(常染色体劣性遺伝のため)

よくある質問(FAQ)

Q. CAHは完治しますか?

A. 遺伝性疾患のため根治は現時点ではできませんが、ホルモン補充で通常の日常生活が送れます。遺伝子治療の研究は進んでいます。

Q. 非古典型CAHとPCOSはどう見分けますか?

A. 早朝の17-OHプロゲステロンが基準値を超える場合はCAHの可能性があります。PCOSの精査時にはルーチンで測定することが推奨されています。

Q. CAHの子どもを持つ親が気をつけることは?

A. シックデイルール(ステロイド増量)の理解が最重要です。学校・保育園にも疾患情報を共有し、緊急時の対応を伝えておく必要があります。

Q. 成人になってから非古典型CAHと診断されることはありますか?

A. あります。不妊検査や多毛の精査で17-OHPを測定して発見されるケースが少なくありません。

Q. CAHの人は運動制限がありますか?

A. 適切にホルモン補充されていれば運動制限は基本的にありません。ただし、激しい運動時にはストレス量のステロイド増量を考慮する場合があります。

まとめ

先天性副腎皮質過形成(CAH)は副腎皮質のステロイド合成酵素の遺伝的欠損により、コルチゾール不足とアンドロゲン過剰を引き起こす疾患です。古典型は新生児期に発見されますが、非古典型は成人期にPCOS様症状で発見されることがあります。グルココルチコイド補充で管理が可能です。

次のステップへ

多毛・月経不順の原因としてCAHが疑われる場合は、内分泌内科で17-OHプロゲステロンの測定を受けてください。適切な診断と治療で症状の改善が期待できます。

E

この記事を書いた人

EggLink編集部

医療・婦人科専門メディア

産婦人科・婦人科に関する正確で信頼性の高い情報をお届けします。医療監修のもと、女性の健康に役立つコンテンツを制作しています。

公開:2026/4/19更新:2026/5/4