
「アジソン病って何?」「副腎不全と診断されたけど、どんな治療が必要?」——アジソン病(原発性副腎不全)は副腎皮質が破壊されてコルチゾールやアルドステロンの分泌が不足する疾患です。症状、診断、ホルモン補充療法の実際を解説します。
【この記事のポイント】
- アジソン病は副腎からのコルチゾール・アルドステロン分泌が慢性的に不足する状態
- 倦怠感・体重減少・皮膚の色素沈着が特徴的な症状
- 生涯にわたるホルモン補充が必要で、ストレス時のステロイド増量が命を守る
アジソン病とは——副腎皮質の機能が失われる
アジソン病は副腎皮質の90%以上が破壊されることで、コルチゾール(糖質コルチコイド)、アルドステロン(鉱質コルチコイド)、副腎アンドロゲンの分泌が不足する疾患です。有病率は10万人あたり約4〜6人とまれですが、見逃されやすい病気です。
主な原因
- 自己免疫性(約70〜80%):免疫が副腎皮質を攻撃する。橋本病やバセドウ病を合併することがある
- 結核性:かつては最多の原因。現在でも途上国では主因
- 感染症:真菌感染・CMVなど(免疫不全者に多い)
- 副腎出血:抗凝固薬使用中や重症感染症時
症状——倦怠感・色素沈着・低血圧の三徴
アジソン病の症状は非特異的で徐々に進行するため、診断までに数か月〜数年を要することがあります。
症状 | 原因 | 頻度 |
|---|---|---|
慢性的な倦怠感・脱力 | コルチゾール不足 | 約100% |
体重減少・食欲不振 | 代謝低下・消化器症状 | 約90% |
皮膚の色素沈着(口腔粘膜・関節部) | ACTH過剰(メラノコルチン作用) | 約90% |
起立性低血圧・めまい | アルドステロン不足による脱水 | 約85% |
塩分への渇望 | ナトリウム喪失 | 約60% |
嘔気・腹痛 | 消化管への影響 | 約50% |
診断——ACTH負荷試験が決め手
アジソン病の確定診断にはACTH(コシントロピン)負荷試験が用いられます。
検査の流れ
- 早朝の血中コルチゾールを測定(3μg/dL未満は副腎不全を強く示唆)
- 合成ACTH 250μgを静注し、30分後・60分後にコルチゾールを再測定
- 刺激後コルチゾールが18μg/dL未満であれば副腎不全と診断
追加検査
- 血中ACTH:原発性では著明高値(500pg/mL以上も)
- 副腎自己抗体(21-水酸化酵素抗体):自己免疫性の確認
- CT/MRI:副腎の萎縮(自己免疫性)または腫大(感染・出血)の鑑別
ホルモン補充療法の実際——薬剤と用量調整
アジソン病は生涯にわたるホルモン補充が必要です。適切な補充により通常の日常生活が送れます。
使用する薬剤
薬剤 | 補充するホルモン | 標準用量 | 服用タイミング |
|---|---|---|---|
ヒドロコルチゾン(コートリル) | コルチゾール | 15〜25mg/日 | 起床時2/3+午後1/3の分割投与 |
フルドロコルチゾン(フロリネフ) | アルドステロン | 0.05〜0.2mg/日 | 朝1回 |
DHEA(必要に応じて) | 副腎アンドロゲン | 25〜50mg/日 | 朝1回 |
シックデイルール——体調不良時のステロイド増量
アジソン病患者にとって最も危険なのが副腎クリーゼ(急性副腎不全)です。発熱・嘔吐・外傷・手術など身体的ストレスがかかる場面では、コルチゾール需要が急増するため通常量では不足します。
増量ルール
- 軽い発熱(38℃未満)・軽い風邪:通常量の2倍に増量
- 高熱(38℃以上)・嘔吐・下痢:通常量の3倍に増量。経口摂取できない場合は注射
- 手術・重症外傷:ヒドロコルチゾン100mg静注→以後25mg/6時間で点滴
緊急キット
自己注射用のヒドロコルチゾン(ソル・コーテフ100mg筋注)を常時携帯することが推奨されます。嘔吐で経口薬が飲めない場合に使用します。
日常生活のポイント——医療情報カードと周囲への共有
アジソン病は適切なホルモン補充を続ければ日常生活に大きな制限はありませんが、以下の点に注意が必要です。
- 医療情報カード・ブレスレットの携帯:意識不明時に副腎不全であることを伝えるため
- 家族・職場への情報共有:副腎クリーゼ時の緊急対応を周囲が知っていることが重要
- 旅行時の準備:薬剤を多めに持参、時差のある場所では服薬時間を調整
- 定期検査:3〜6か月ごとの受診。電解質・血圧・体重のモニタリング
よくある質問(FAQ)
Q. アジソン病は治りますか?
A. 自己免疫性の場合、副腎皮質の機能は通常回復しないため生涯のホルモン補充が必要です。ただし、薬で補充すれば健康な生活を送れます。
Q. アジソン病でも妊娠は可能ですか?
A. はい。ホルモン補充を適切に調整しながら妊娠・出産が可能です。妊娠中はヒドロコルチゾンの増量が必要になることがあります。
Q. 副腎クリーゼはどんな症状ですか?
A. 激しい嘔吐・腹痛・高度の脱水・意識障害・低血圧性ショックが起こります。治療が遅れると生命に関わるため、疑ったら即座に救急受診してください。
Q. コルチゾールの補充で太りますか?
A. 生理的な補充量(15〜25mg/日)ではクッシング症候群のような体重増加は通常起こりません。過剰投与の場合はその限りではないため、定期的な用量調整が重要です。
Q. 副腎不全と副腎疲労は同じですか?
A. 異なります。副腎不全は医学的に確立された疾患で、ACTH負荷試験で診断されます。「副腎疲労」は代替医療の用語であり、内分泌学会では正式な診断名として認められていません。
まとめ
アジソン病は副腎皮質の破壊によるホルモン不足で、倦怠感・色素沈着・低血圧が主な症状です。ヒドロコルチゾンとフルドロコルチゾンの補充で通常の生活が可能ですが、体調不良時のステロイド増量と副腎クリーゼへの備えが不可欠です。
次のステップへ
原因不明の倦怠感・体重減少・皮膚の黒ずみが続く方は、内分泌内科で副腎機能の検査を受けてください。早期診断が生活の質と安全の確保につながります。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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