
クラミジア・淋病などの性感染症(STI)は、女性の不妊原因として知られていますが、男性の精路障害・精子機能にも深刻な影響を与えます。症状がなくても感染していることがあり、検査を受けなければ発見できません。
この記事のポイント
- 男性不妊に関わる主要な性感染症
- 各STIが精路・精子に与えるダメージのメカニズム
- 無症状感染が多い理由と検査の重要性
- 治療後の妊孕性回復について
クラミジア感染症
クラミジア・トラコマティスは最も頻度の高い性感染症で、日本では年間約2〜3万件(10〜20代が多い)が報告されていますが、実態はその数倍と推定されます。
男性での影響
- 精巣上体炎(副睾丸炎):クラミジアが精巣上体(副睾丸)に炎症を起こし、瘢痕化・閉塞性変化を生じると精子の通路が塞がれます
- 精子DNA損傷:クラミジアの局所炎症が産生する活性酸素により精子DNAが傷つく可能性があります
- 精子運動率・形態への影響:慢性感染では精液の質が持続的に低下するという報告があります
男性は感染しても症状が出ないケースが多く(排尿時の軽度不快感・尿道分泌物のみ、またはまったく無症状)、知らずにパートナーに感染させたり、自分の精路障害が進行したりします。
淋病(淋菌感染症)
淋菌(ナイセリア・ゴノレア)は男性に尿道炎として強い症状(膿性分泌物・強い排尿痛)を引き起こすことが多いですが、治療が遅れると精巣上体炎・精管炎に波及します。
- 精巣上体炎から精管への閉塞:閉塞性無精子症の原因になり得る
- 重症例では精路の瘢痕が不可逆的になる可能性がある
- 近年は薬剤耐性淋菌(QRNG)が増加しており、適切な抗菌薬選択が重要
マイコプラズマ・ウレアプラズマ
マイコプラズマ・ジェニタリウム・ウレアプラズマ・ウレアリチクムは、精子の運動率低下・精子DNA断片化と関連するという報告が複数あります。クラミジア陰性の非淋菌性尿道炎の原因として注目されています。通常の性病検査パネルには含まれないことがあるため、不妊検査時に専門医に検査を依頼することが必要です。
HPV(ヒトパピローマウイルス)
HPVは精子に感染し、精子の運動率低下・アポトーシス(細胞死)増加・受精率低下と関連するという研究があります(Garolla A et al., Fertil Steril 2012)。また母体がHPV陽性の精子で受精した場合に流産率が上がるという報告もあります。HPVワクチン(男性への接種も公費助成対象の自治体あり)は感染予防に有効です。
検査の重要性:なぜ検査を受けるべきか
STIは症状がなくても感染・感染力を持つことがあります。特に以下の場合は積極的な検査を推奨します。
- 過去に不特定多数との性的接触歴がある
- コンドーム未使用の性交渉があった
- 精液検査で精子の状態が良くない
- パートナーが過去にSTI診断を受けたことがある
- 不妊治療(体外受精等)を開始する前
クラミジア・淋菌検査は泌尿器科・性病科・一部のクリニックで受けられます。尿検査または尿道スワブ検体で実施し、費用は自費で3,000〜8,000円程度(クリニックにより異なる)。保険適用の場合は費用が下がります。
治療と妊孕性の回復
- クラミジア:アジスロマイシン単回投与またはドキシサイクリン7〜14日投与で除菌可能。早期治療で精路障害を防げる
- 淋菌:セフトリアキソン筋注が第一選択(耐性菌対策で培養・感受性検査も重要)
- 精路閉塞が残存した場合:精路再建手術(精巣上体精管吻合術等)や顕微授精が選択肢になる
- パートナーの同時治療:どちらか一方だけ治療しても再感染が起きるため、必ず二人同時に受診・治療する
予防策
- 正しいコンドームの使用(性交時の一貫した使用)
- HPVワクチン接種(男性も接種可能、性交渉開始前が最も効果的)
- 定期的なSTIスクリーニング検査(半年〜1年に1回が目安)
よくある質問
Q. 過去にクラミジアに感染して治療済みですが、今も精子に影響しますか?
治療で除菌できても、精巣上体炎などによる精路の瘢痕が残存している場合は精子の通過障害が持続することがあります。精液検査・超音波検査で現状を評価することをお勧めします。
Q. 性病検査は何科で受けられますか?
泌尿器科・性病科・内科・一部の不妊専門クリニックで受診できます。プライバシーを重視した自費専門クリニックもあります。
まとめ
クラミジア・淋菌・マイコプラズマなどの性感染症は、無症状でも精巣上体炎・精路閉塞・精子DNA損傷を引き起こし、男性不妊の原因になります。妊活前または不妊精査の一環として、パートナーと二人でSTI検査を受けることを推奨します。感染が見つかった場合は早期治療で精路障害の進行を防ぐことができます。
※本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療を行うものではありません。症状や治療方針については必ず専門の医師にご相談ください。薬の中止・変更は必ず処方医に相談してから行ってください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
産婦人科・婦人科に関する正確で信頼性の高い情報をお届けします。医療監修のもと、女性の健康に役立つコンテンツを制作しています。
Next Action

