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精子運動性のA〜D分類|前進運動精子の重要性

2026/4/19

精子運動性のA〜D分類|前進運動精子の重要性

精子運動性のA〜D分類とは:WHO第6版の定義

精子の運動性は、WHO精液検査マニュアル(第6版、2021年)に基づき4つのカテゴリーに分類されます。この分類は精液検査の最も重要な指標の一つであり、自然妊娠・不妊治療の予後を判断する基準として世界中で使用されています。

WHO第6版の精子運動性分類(2021年)

分類

定義

旧名称(第5版)

PR(前進運動)

直線的または大きな円を描いて前進する精子

クラスA+B

NP(非前進運動)

動いているが前進していない精子(小円を描くなど)

クラスC

IM(不動精子)

まったく動いていない精子

クラスD

なお、旧WHO第5版(2010年以前の教科書・クリニックでよく見られる)では「A〜Dの4段階」が使用されていました。現在の多くのクリニックはWHO第6版に移行しつつありますが、A〜D表記のまま使用している施設もあります。

A〜D分類の詳細(旧WHO基準)

「A〜D」表記のクリニックで検査を受けた場合の定義は以下の通りです。

分類

定義

特徴

クラスA(高速前進運動)

25μm/秒以上の速度で直線的または大きな円軌跡で前進

卵子への到達力が最も高い。妊孕性に最も寄与

クラスB(低速前進運動)

25μm/秒未満で前進(直線的・緩やか)

前進するが速度が遅い。自然妊娠には不利

クラスC(非前進運動)

前進しないが動いている(回転・原位置)

卵子に到達する可能性は低い

クラスD(不動精子)

まったく動かない

不動精子。ただし凍結融解後も一定数は顕微授精に使用可能

WHO基準値と「前進運動精子(PR)」の重要性

WHO第6版の正常下限値は以下の通りです(精子運動性に関する基準)。

パラメータ

WHO第6版 基準値(下限)

総運動率(PR+NP)

42%以上

前進運動率(PR)

30%以上

総精子数(1回射精中)

3,900万個以上

精子濃度

1,600万/mL以上

自然妊娠において最も重要なのは「前進運動精子(クラスAまたはPR)の数と割合」です。クラスAの前進運動精子が卵管を通過し卵子に到達するため、この精子の絶対数が少ないほど自然妊娠率は低下します。

前進運動精子の数と治療選択の目安

前進運動精子数(PR)

治療の一般的目安

1,000万個以上

自然妊娠・タイミング法が可能

500万〜1,000万個

人工授精(AIH)を検討

100万〜500万個

体外受精(IVF)を検討

100万個未満

顕微授精(ICSI)が適応

ほぼ0(無精子症)

TESE・micro-TESEを検討

これらはあくまで目安であり、女性側の年齢・卵巣機能・不妊期間などを総合的に考慮した上で専門医が判断します。

精子運動率が低下する原因

前進運動率が基準を下回る「精子無力症(アステノゾオスペルミア)」の原因は多岐にわたります。

カテゴリー

主な原因

感染症・炎症

前立腺炎・精巣上体炎・クラミジア感染

精索静脈瘤

精巣温度上昇→精子産生・運動障害

酸化ストレス

活性酸素種(ROS)による精子膜・DNA損傷

ホルモン異常

低テストステロン・甲状腺機能異常

遺伝性疾患

カルタゲナー症候群(線毛不動症)—全精子が不動

生活習慣

喫煙・過剰飲酒・サウナ・肥満・睡眠不足

採取条件

禁欲期間(短すぎ・長すぎ)・採取から検査までの時間

精子の運動率を改善できるか:エビデンスのある対策

運動率低下の原因が特定された場合、以下の対策で改善が期待できます。

医療的介入

  • 精索静脈瘤手術:精子運動率・総精子数の改善率は術後6ヶ月で約60〜70%
  • 感染症治療:前立腺炎・クラミジア治療後に精液パラメータが改善した報告あり
  • ホルモン治療:低テストステロン・低ゴナドトロピン性性腺機能低下症に対してhCG・FSH製剤が有効

生活習慣の改善

  • 禁煙:喫煙は前進運動率を約10〜15%低下させるとのデータがあります(禁煙で改善可能)
  • アルコール制限:大量飲酒は精子運動率・テストステロンを低下させます
  • 適切な体重管理:BMI30以上の肥満は精子運動率の低下と関連
  • 陰嚢部の過熱回避:ノートPC膝上使用・長時間サウナの回避

栄養補助(補助的エビデンス)

  • コエンザイムQ10(CoQ10):抗酸化効果による精子運動率改善の報告あり(1日200〜300mg)
  • ビタミンC・E:酸化ストレス軽減
  • 葉酸・亜鉛:精子DNA完全性の維持

※サプリメントの効果は個人差があり、単独での劇的な改善は期待しすぎないことが重要です。

精液検査の結果を正しく読む:注意すべき点

精液検査は条件によって結果が大きく変動します。一度の検査で結論を出すことは避け、最低2回以上の検査で評価することが推奨されています(WHO基準)。

検査精度に影響する主な要因

  • 禁欲期間:2〜7日が推奨。短すぎると精子数が少なく、長すぎると運動率が低下
  • 採取後の時間:採取から30分〜1時間以内に検査室で処理することが基本
  • 採取方法:自慰による採取が標準。コンドームによる採取は精子運動率を低下させる場合がある
  • 体調・ストレス:直前の発熱・体調不良は精液所見を一時的に悪化させます

よくある質問(FAQ)

Q. クラスAの精子が少なくても顕微授精で妊娠できますか?

A. 顕微授精(ICSI)では1個の精子があれば受精が可能です。精子運動率が低くても、不動精子の中から生存精子を選別してICSIに使用できます。精子が極めて少ない場合はTESEによる精巣内精子採取も選択肢です。

Q. A〜D分類とWHO第6版のPR/NP/IMの対応関係を教えてください。

A. WHO第6版ではA+B→PR(前進運動)、C→NP(非前進運動)、D→IM(不動)に対応します。施設によって表記が異なるため、受診先の記載方式を確認することをおすすめします。

Q. 精子運動率が低い場合、体外受精より顕微授精の方が確実ですか?

A. 前進運動精子数が100万個未満の場合はICSIが適応になる場合が多いです。ただし、IVF(媒精)でも受精できる可能性はあるため、専門医との相談が必要です。

Q. 不動精子(クラスD)は使えないのですか?

A. 不動でも「生存精子」であれば顕微授精(ICSI)に使用できます。HOS(低張膨化)試験で生存精子を選別する方法があります。凍結融解後の精子でも同様です。

まとめ

精子運動性のA〜D分類(またはWHO第6版のPR/NP/IM)は、男性不妊の評価において最も重要なパラメータの一つです。特に前進運動精子(クラスA/PR)の数と割合が自然妊娠・治療選択の基準となります。

運動率低下には原因があり、精索静脈瘤・感染症・生活習慣など治療可能なものも多く含まれます。精液検査で基準値を下回った場合は、泌尿器科・不妊治療専門医に相談し、適切な原因精査と治療選択を行うことが妊娠への最短経路です。

免責事項
本記事はWHO精液検査マニュアル第6版(2021年)等の資料に基づく一般的な医療情報です。個別の精液検査結果の解釈・治療方針については必ず泌尿器科・不妊治療専門医にご相談ください。

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この記事を書いた人

EggLink編集部

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公開:2026/4/19更新:2026/5/2