
副精巣管閉塞(精巣上体管閉塞)は、精子が精巣から精管へ運ばれる「副精巣(精巣上体)」内の管が詰まることで生じる閉塞性無精子症です。閉塞性無精子症の中で最も頻度が高い病態のひとつで、適切な手術(精巣上体管吻合術)または精子採取+ICSIによって妊娠が期待できます。
【この記事のポイント】
- 副精巣管閉塞の原因(感染・炎症・先天性)と診断方法
- 精巣上体管吻合術(VE)の成功率・術後妊娠率
- 手術 vs PESA/TESE+ICSI:どちらを選ぶべきか
副精巣管閉塞(精巣上体閉塞)とは
精巣上体(副精巣)は、精巣の後面に沿って走行する約6mの極細の管で、精子が成熟・輸送される場所です。この管が閉塞すると、精子は精管に到達できず精液中に現れません。精巣機能は正常なため、手術で閉塞を解除すれば自然妊娠が可能になります。
主な原因
原因 | 詳細 |
|---|---|
感染・炎症後瘢痕 | クラミジア・淋病・精巣上体炎後の瘢痕が最多。性感染症の既往がある男性に多い |
精管結紮後(パイプカット後) | 精管結紮(vasectomy)後に精巣上体内の圧が上昇し、自然破裂→閉塞が起きる |
先天性 | CBVADなど精管欠損に伴う場合、精巣上体遠位部も欠損することがある |
外傷・手術後 | 陰嚢手術(精索静脈瘤手術・ヘルニア手術)の合併症として発生 |
診断の流れ
副精巣管閉塞の診断は、精液検査・触診・ホルモン検査の組み合わせで行います。閉塞性無精子症の典型パターン(FSH正常・精巣正常・精巣上体腫大)が確認されれば、手術(顕微鏡下精巣上体管吻合術)の適応評価に進みます。
診断のポイント
- 精液検査:無精子症(精液量は正常、フルクトース陽性)
- 血液検査:FSH正常〜軽度上昇(精巣機能は保たれている)
- 触診:精巣上体の腫大・硬結(閉塞部位より近位側に精子が貯留している)
- 精巣生検:手術前に精巣生検で精子産生を確認する施設もある
精巣上体管吻合術(VE: Vasoepididymostomy)
副精巣管閉塞の根治的治療は、手術顕微鏡下で精巣上体管と精管を直接吻合する顕微鏡下精巣上体管吻合術(Micro-VE)です。熟練した男性不妊専門医による手術で、閉塞解除後の精管開通率は高く達せられます。
Micro-VEの成績
指標 | 数値 |
|---|---|
精路開通率(射精精液に精子出現) | 60〜80% |
自然妊娠率(術後2年以内) | 30〜45% |
閉塞期間との関係 | 閉塞後3年以内で成績が良く、10年以上では低下 |
手術時間 | 2〜4時間(全身麻酔) |
閉塞期間が長いほど成績が下がる理由: 精管結紮後に精巣上体内の圧が長期間高まると、管壁が障害を受け精巣上体内に抗精子抗体が産生されることがあります。閉塞後10年を超えると開通しても精子機能が低下しているケースがあり、早期の手術相談が重要です。
手術 vs 精子採取+ICSI:どちらを選ぶか
副精巣管閉塞の治療選択は「Micro-VE(手術)」と「PESA/TESE+ICSI(体外受精)」の2軸です。以下の比較を参考に、主治医と相談してください。
項目 | Micro-VE(手術) | PESA/TESE+ICSI |
|---|---|---|
妻への侵襲 | なし(自然妊娠が目標) | 採卵が必要(ホルモン刺激) |
妊娠回数 | 成功すれば複数回可能 | 毎周期採卵・採精が必要 |
総費用(妊娠まで) | 手術費用+自然妊娠コスト(低) | ICSI複数周期(高くなる場合も) |
妻の年齢との兼ね合い | 若い場合に有利 | 高齢の場合はICSIが現実的 |
よくある質問(FAQ)
Q. 精管結紮(パイプカット)後の閉塞にもMicro-VEは有効ですか?
有効ですが、結紮後の経過年数が長いほど成績が下がります。10年以内であれば開通率・妊娠率ともに比較的良好です(文献により開通率60〜70%、妊娠率30〜40%)。
Q. 副精巣管閉塞は両側にあることが多いですか?
感染・炎症後の閉塞は両側性になることが多く、両側閉塞の場合は手術の難易度が上がります。一方、精管結紮後は処置した部位のみ(外鼠径部)が閉塞しているため、比較的単純な逆転手術(精管吻合術)で対応できる場合があります。
Q. Micro-VE術後、精液に精子が出るまでどのくらいかかりますか?
吻合が成功すれば術後3〜6ヵ月で精液中に精子が出現します。術後3ヵ月の精液検査で確認し、精子が確認できれば妊娠を試みられます。
Q. 精索静脈瘤手術後に副精巣管閉塞が起きることはありますか?
まれに術中の副精巣上体への血管操作で局所的な閉塞が生じることがあります。術後に無精子症が出現した場合は担当医に相談してください。
Q. 片側だけMicro-VEに成功した場合でも妊娠できますか?
精路が片側でも開通すれば、精液中に精子が出現し妊娠の可能性があります。両側が開通した場合に比べ精子数は少なくなりますが、妊娠例は多数報告されています。
まとめ
副精巣管閉塞は、精巣機能が保たれている「治せる」男性不妊疾患です。閉塞期間が短いほど手術(Micro-VE)の成績が良く、長期閉塞ではPESA/TESE+ICSIが現実的な選択肢となります。無精子症を指摘されたら、まず泌尿器科(男性不妊専門)を受診し、閉塞性・非閉塞性の鑑別から始めることが重要です。
次のステップ
精液検査で無精子症と診断された方は、男性不妊専門の泌尿器科を受診してください。FSH・テストステロン測定と精巣触診で、閉塞性か非閉塞性かの鑑別が可能です。閉塞性であれば治療の選択肢が広がります。
【免責事項】本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。症状や治療については必ず担当医にご相談ください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の医学知見と異なる場合があります。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
産婦人科・婦人科に関する正確で信頼性の高い情報をお届けします。医療監修のもと、女性の健康に役立つコンテンツを制作しています。
Next Action

