
男性不妊の手術は、原因に応じて複数の種類があり、それぞれ適応・成功率・費用・回復期間が異なります。最も頻度が高いのは精索静脈瘤手術(精索静脈瘤結紮術)で、男性不妊原因の約30〜40%を占めます。本記事では主要な男性不妊手術の種類・適応・成功率を一覧で解説します。
【この記事のポイント】
- 男性不妊手術の主な種類:精索静脈瘤手術・TESE・MESA・精路再建術(精管吻合術・精管副睾丸吻合術)
- 精索静脈瘤手術は術後6〜12か月で精液所見が改善し、自然妊娠率が向上する可能性がある
- 手術適応・方式・成功率は原因・病態によって大きく異なり、専門医による診断が必須
男性不妊手術の全体像
男性不妊の手術は大きく3つの目的に分かれます。① 精子産生・精液所見の改善、② 精子の採取(ART用)、③ 精路の再建です。それぞれに対応する手術方式があります。
手術の目的 | 主な手術名 | 適応疾患 |
|---|---|---|
精液所見改善 | 精索静脈瘤結紮術(顕微鏡下・腹腔鏡下) | 精索静脈瘤 |
精子採取(ART) | TESE・MESA・PESA | 無精子症 |
精路再建 | 精管吻合術・精管副睾丸吻合術 | 閉塞性無精子症・パイプカット後 |
精索静脈瘤手術|最も多い男性不妊手術
精索静脈瘤とは、精巣の血管が拡張してコブ状になった状態です。精巣周囲の温度が上昇することで精子産生が障害されます。男性不妊の30〜40%に精索静脈瘤が関与しているとされ、最も一般的な治療対象です。
主な手術方式と特徴
方式 | 特徴 | 成功率(精液改善) | 再発率 |
|---|---|---|---|
顕微鏡下精索静脈瘤結紮術(標準法) | 高倍率顕微鏡で血管を確認しながら結紮。合併症リスク低 | 60〜80% | 約1〜5% |
腹腔鏡下結紮術 | 全身麻酔・腹腔鏡で静脈を一括結紮。傷が小さい | 60〜75% | 約5〜10% |
静脈塞栓術(IVR) | カテーテルで静脈をコイルで塞栓。入院なし | 50〜70% | 約10〜15% |
術後の精液所見改善と妊娠率
精索静脈瘤手術後、精液所見(精子数・運動率・形態)が改善するのは術後3〜6か月からで、最大効果は6〜12か月後に現れることが多いです。自然妊娠率の改善は約30〜50%(術後1〜2年)、IVF/ICSIの成功率も向上することが報告されています。
TESE(精巣内精子採取術)|無精子症への対応
TESE(Testicular Sperm Extraction)は、精液中に精子が出ない無精子症の患者から、精巣を切開して精子を直接採取する手術です。採取した精子はICSI(顕微授精)に使用します。
TESE・Micro-TESEの違い
方式 | 特徴 | 精子採取率(非閉塞性) |
|---|---|---|
従来TESE | 精巣を数か所切開して組織採取 | 40〜50% |
顕微鏡下TESE(Micro-TESE) | 高倍率顕微鏡で精子産生部位を狙い採取。精巣へのダメージが少ない | 50〜60% |
閉塞性無精子症の場合は精子採取率が90%以上と高いですが、非閉塞性無精子症では50〜60%と採取できない場合もあります。
MESA・PESA|閉塞性無精子症の精子採取
- PESA(経皮的精巣上体精子吸引術):針で精巣上体から精子を吸引。低侵襲だが採取量が少ない
- MESA(顕微鏡下精巣上体精子採取術):顕微鏡下で精巣上体を切開し、多くの精子を採取。閉塞性無精子症に高い成功率
精路再建術|精管吻合術・精管副睾丸吻合術
精路(精子の通り道)が閉塞している場合、閉塞部位を再開通させる手術です。パイプカット(精管切除)後の逆転手術(精管吻合術)や、精巣上体閉塞に対する精管副睾丸吻合術が代表的です。
手術方式と成功率
手術名 | 適応 | 精子回復率 | 自然妊娠率(術後2年) |
|---|---|---|---|
精管吻合術(顕微鏡下) | パイプカット後・精管切断後 | 70〜90% | 30〜60% |
精管副睾丸吻合術 | 精巣上体閉塞 | 40〜70% | 20〜40% |
閉塞からの期間が長いほど成功率は低下する傾向があります(パイプカット後15年以上で成功率低下)。
手術費用の目安
手術名 | 費用目安(保険3割) | 自費 |
|---|---|---|
顕微鏡下精索静脈瘤結紮術 | 約5万〜10万円 | 約20万〜30万円 |
顕微鏡下TESE(Micro-TESE) | 約10万〜20万円 | 約30万〜50万円 |
精管吻合術 | 約10万〜20万円 | 約30万〜50万円 |
※手術費用は術式・入院の有無・施設によって異なります。保険適用は病名・手術内容による。詳細はクリニックにご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 精索静脈瘤の手術後、どのくらいで精液が改善しますか?
術後3〜6か月で精液所見の改善が始まり、最大効果は術後6〜12か月後に現れることが多いです。術後は定期的な精液検査で改善を確認します。
Q2. 無精子症でも子どもを持てる可能性がありますか?
閉塞性無精子症ではMESA・TESE、非閉塞性無精子症では顕微鏡下TESEで精子が採取できる場合があります。採取した精子を使ったICSIで妊娠できる可能性があります。
Q3. パイプカット(精管切除)後に逆転手術は受けられますか?
精管吻合術(逆転手術)は可能ですが、切除後の期間が長いほど成功率が低下します。切除後15年以上では精子回復率・妊娠率が著しく低下します。早期の相談を推奨します。
Q4. 男性不妊の手術は保険が使えますか?
精索静脈瘤結紮術・精管吻合術・TESE等は医学的適応があれば保険適用の対象になる場合があります。ICSIに使用するための精子採取(TESE)は不妊治療の一部として保険適用になる場合があります(条件あり)。詳細はクリニックにご確認ください。
Q5. 手術の副作用・リスクにはどのようなものがありますか?
精索静脈瘤手術では精巣動脈損傷・リンパ管損傷(まれ)・再発のリスクがあります。TESEでは精巣機能低下のリスクがわずかにあります。顕微鏡下での手術(Micro-TESE・顕微吻合術)はダメージを最小限に抑えられます。担当医から詳細な説明を受けてください。
まとめ
男性不妊の手術は原因に応じて選択される多様な選択肢があります。精索静脈瘤手術は精液改善・自然妊娠率向上に有効で、TESE/Micro-TESEは無精子症の方がICSIへ進むための精子採取手術です。精路再建術(精管吻合術)は閉塞性無精子症やパイプカット後の選択肢です。まず泌尿器科・男性不妊専門医に精液検査・詳細診断を受け、最適な治療方針を検討しましょう。
次のステップへ
男性不妊の手術について詳しく相談したい方は、泌尿器科・男性不妊専門外来または日本生殖医学会認定施設にご相談ください。精液検査から原因診断・手術方針の決定まで、専門医と一緒に最適な治療を進めましょう。
※本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の手術・施設を推奨するものではありません。成功率・費用は目安であり、個人差・施設差があります。治療方針は必ず担当医にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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