
(情報取得日:2026-05-02)多発性硬化症(MS)は中枢神経系の脱髄疾患であり、再発と寛解を繰り返すことが多い疾患です。MSと男性不妊の関係は複合的で、疾患そのものによる影響と、治療薬の副作用が精子機能に与える影響の両方を考慮する必要があります。本記事では最新のエビデンスをもとに解説します。
この記事のポイント
- 多発性硬化症そのものが男性不妊の直接原因になるケースは限定的
- MS治療薬の一部は精子の質・量に影響を与える可能性がある
- パートナーとの妊娠計画前に神経内科・泌尿器科・生殖医療科の連携受診が重要
多発性硬化症と男性不妊の基本情報
多発性硬化症は主に20〜40代に発症する中枢神経疾患です。男性のMS患者では、疾患の進行度や使用薬剤によって生殖機能に影響が生じることがあります。
要因 | 男性不妊への影響 | 対応策 |
|---|---|---|
MS自体(神経障害) | 射精障害・勃起障害が生じることがある | 泌尿器科・生殖医療専門医に相談 |
免疫調整薬(インターフェロンβなど) | 精子の運動率低下の報告あり(動物実験レベル) | 妊活中は主治医と薬剤変更を相談 |
ミトキサントロン(抗がん薬系免疫療法) | 無精子症・造精機能障害のリスクあり | 治療前に精子凍結保存を検討 |
ステロイド大量療法(再発時) | 短期的な精子数減少の可能性(一般的に可逆性) | 治療終了後の精液検査で確認 |
MS関連の男性生殖機能障害の特徴
MSが男性生殖機能に影響する主なメカニズムは、脊髄を含む中枢神経への脱髄病変による自律神経・体性神経機能の障害です。
- 勃起障害(ED):脊髄病変が仙髄〜腰髄に及ぶと勃起神経に影響。MSのEDは薬物療法(PDE5阻害薬)が有効なケースが多い
- 射精障害(逆行性射精・無射精):交感神経系への影響で精液が膀胱に逆流したり、射精自体が困難になる場合がある
- 精子の質への影響:神経系を介した精巣温度調節・精管機能の低下が精子運動率に影響する可能性がある
ただし、MSそのものによる重篤な不妊症(無精子症など)は稀であり、多くの場合は適切な治療で妊娠可能です。
患者・パートナーが知っておきたい妊活の傾向
MS患者の妊活において、以下のポイントが重要です。
- 再発期・高活動期での妊活開始は推奨されない。疾患活動性が安定している寛解期に計画するのが原則
- 妊活前に使用中の疾患修飾薬(DMT)の安全性を確認する。一部の薬剤は男性の生殖毒性が報告されており、変更・休薬が必要な場合がある
- パートナー(女性)が妊娠・授乳中は、再発リスクが変動する。カップルで神経内科医・産婦人科医に相談することが推奨される
治療・検査にかかる費用の目安
検査・対応 | 費用目安 | 備考 |
|---|---|---|
精液検査 | 500〜1,500円(保険適用) | 精子数・運動率・形態を確認 |
精子凍結保存(1回) | 3万〜5万円程度 | 治療前の保険としての利用 |
男性不妊外来初診 | 3,000〜1万円程度 | 泌尿器科または生殖医療専門外来 |
射精障害に対する精子採取(TESE等) | 3万〜10万円(保険適用条件あり) | 状況に応じて検討 |
受診・相談のポイント
多発性硬化症を持つ方が妊活を検討する際の受診ステップをまとめます。
- まず現在の主治医(神経内科医)に「妊活を検討している」と伝え、使用中の薬剤の安全性評価を依頼する
- 男性不妊の専門評価のため、泌尿器科(男性不妊外来)または生殖医療専門クリニックへ紹介を依頼する
- 精液検査を実施し、必要であれば精子凍結保存を先行して行う
- 治療薬変更が必要な場合は切り替え期間(薬剤によっては3〜6か月)を見込んで計画を立てる
専門医・相談窓口へのアクセス
多発性硬化症と男性不妊を複合的に対応できる医療機関・窓口を活用してください。
- 日本神経学会 専門医検索:MS治療の専門医一覧を確認できる
- 日本生殖医学会 生殖医療専門医:不妊治療の専門医を検索可能
- MSサポートセンター(NPO):MS患者向け妊娠・出産の情報提供・相談窓口
よくある質問(FAQ)
Q1. 多発性硬化症があると子どもは作れませんか?
A. 多くの場合、適切な治療管理のもとで妊娠・出産は可能です。疾患活動性が安定している寛解期に計画し、使用薬剤の安全性を事前確認することが重要です。
Q2. MS治療薬は精子に悪影響を与えますか?
A. 薬剤によって異なります。インターフェロンβ・酢酸グラチラマーなどは比較的安全性が高いとされますが、ミトキサントロン・クラドリビンなどは生殖毒性のリスクがあるため、使用前に主治医に相談してください。
Q3. 射精障害がある場合でも子どもを持てますか?
A. 射精障害の程度によりますが、逆行性射精の場合は尿中から精子を回収する方法があります。電気射精法や外科的精子採取(TESE)も選択肢です。専門医に相談することをお勧めします。
Q4. 妊活前に精子凍結は必要ですか?
A. 今後ミトキサントロンなどの生殖毒性リスクがある薬剤を使用する予定がある場合は、治療前に精子凍結保存を検討することを推奨します。
Q5. パートナーが妊娠・授乳中にMS再発しやすいですか?
A. 文献的にはMSの再発は妊娠中に低下し、産後3〜6か月で上昇する傾向が報告されています。主治医と定期的なフォローアップ計画を立てることが重要です。
まとめ
多発性硬化症と男性不妊の関係は、疾患自体の神経障害と使用する治療薬の2つの側面から評価する必要があります。MS患者の多くは適切な管理のもとで妊娠・父親になることが可能です。妊活を検討する際は、神経内科医・泌尿器科・生殖医療専門医が連携する多職種チームへの相談が最も有効です。早めの情報収集と専門家への相談が、スムーズな妊活につながります。
【免責事項】本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。治療の判断は必ず担当医師にご相談ください。掲載情報は執筆時点(2026-05-02)のものです。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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