
男性不妊の診察・治療先として「不妊専門クリニック」と「泌尿器科」のどちらを選べばよいか迷う方は少なくありません。この記事では、両者の違いと役割分担を整理し、自分の状況に合った受診先を選べるよう解説します。
この記事のポイント
- 不妊専門クリニックと泌尿器科、それぞれの得意領域と限界
- 状況別(初受診・精液異常あり・手術検討中など)のおすすめ受診先
- 二つのクリニックを連携させるベストな使い方
不妊専門クリニックと泌尿器科――何が違うのか
男性不妊の診療は「不妊専門クリニック(主に産婦人科・生殖医療専門)」と「泌尿器科(男性生殖器の専門科)」の2つで行われます。どちらが適切かは、悩みの内容や治療の段階によって異なります。
比較項目 | 不妊専門クリニック | 泌尿器科 |
|---|---|---|
主な担当領域 | 不妊治療全般(女性中心)、精液検査、ART(体外受精など) | 男性生殖器疾患(精索静脈瘤・無精子症・ED等)の診断・外科的治療 |
男性の診療体制 | 一部クリニックで男性外来・男性不妊外来あり | 男性不妊専門医が常勤していることが多い |
精液検査 | ◎ 対応(当日〜翌日に結果が多い) | ◎ 対応 |
精索静脈瘤の手術 | △(紹介が必要なことも) | ◎ 対応(顕微鏡下手術も可) |
TESE(精巣精子採取) | ◎(不妊治療と一体で実施可) | ◎(連携で実施) |
女性側との連携 | ◎ 同一施設内で連携可能 | △ 別途紹介が必要 |
保険適用への対応 | ◎(2022年以降の不妊治療保険化に対応) | ◎(精索静脈瘤手術等は保険適用あり) |
不妊専門クリニックが向いているケース
不妊専門クリニックは、パートナーと一緒に不妊治療を進めたい場合や、ART(高度生殖補助医療)を視野に入れたい場合に最適です。
こんな人に向いている
- パートナーと二人で同じクリニックで検査・治療を受けたい
- 精液検査で軽度〜中等度の異常があり、人工授精や体外受精を検討している
- 妊活全体をコーディネートするサポートが欲しい
- 女性側のタイミング指導や卵管・卵巣の検査も同時に行いたい
注意点
不妊専門クリニックの中には、男性不妊の専門医が常勤していないところもあります。精索静脈瘤の診断・手術や、無精子症への対応が必要な場合は泌尿器科への紹介が必要になることがあります。受診前に「男性不妊への対応範囲」をクリニックに確認しましょう。
泌尿器科が向いているケース
泌尿器科(特に男性不妊専門外来)は、男性側の原因を深く掘り下げたい場合や、外科的治療を要する疾患が疑われる場合に向いています。
こんな人に向いている
- 精巣に痛み・腫れ・しこりなど身体的な異常がある
- 精液検査で高度異常(重度乏精子症、無精子症など)が判明した
- 精索静脈瘤の診断を受けており、手術の必要性を評価してもらいたい
- 停留精巣・精巣炎・精管閉塞などの既往歴がある
- ED・射精障害など機能的な問題がある
男性不妊専門泌尿器科の探し方
日本泌尿器科学会や日本生殖医学会のウェブサイトで、「生殖・男性不妊専門医」を検索することができます。地域の大学病院や総合病院の泌尿器科でも専門外来を設けているところがあります。
最も効果的な使い方:二つの施設を連携させる
実際の不妊治療では、泌尿器科と不妊専門クリニックを並行して使うことが理想的なケースが多くあります。
連携パターンの例
- パターンA(軽度乏精子症):不妊専門クリニックで精液検査→人工授精・体外受精へ移行
- パターンB(精索静脈瘤あり):泌尿器科で手術→術後3〜6ヵ月で精液再検査→必要に応じてARTへ
- パターンC(無精子症):泌尿器科でTESE(精巣内精子採取)→不妊専門クリニックで顕微授精(ICSI)
女性側の年齢が高い場合や、治療を急ぐ場合は、両施設への並行受診を最初から検討することも選択肢です。
費用・保険適用の違い
2022年4月から不妊治療の保険適用が拡大され、一部の検査・治療が保険対象になりました。
項目 | 保険適用 | 目安費用(自費の場合) |
|---|---|---|
精液検査(初回) | あり(3割負担) | 3,000〜5,000円程度 |
精索静脈瘤手術(顕微鏡下) | あり(3割負担) | 10〜20万円(自費の場合) |
TESE(精巣内精子採取) | あり(条件付き) | 20〜50万円(自費の場合) |
顕微授精(ICSI) | あり(条件付き) | 30〜60万円/周期(自費の場合) |
保険適用の条件や内容は施設・状況によって異なります。受診前に各クリニックに確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 初めて受診するならどちらがよいですか?
特定の症状がなく「まず精液検査を受けたい」という場合は、不妊専門クリニックか泌尿器科のどちらでも構いません。パートナーと一緒に治療を進めたいなら不妊専門クリニック、男性側の原因を深く掘り下げたいなら泌尿器科が向いています。
Q. 泌尿器科に行くと「男性不妊」と診断されやすいですか?
受診先によって診断が変わることはありません。泌尿器科は男性生殖器の専門知識が深く、精索静脈瘤などの器質的疾患の発見率が高い傾向があります。
Q. 不妊専門クリニックで精索静脈瘤の手術はできますか?
多くの不妊専門クリニックでは外科的手術は行っておらず、泌尿器科への紹介となります。ただし一部の大規模施設では男性不妊専門医が常勤し、手術も対応しているところがあります。
Q. 二つのクリニックに並行して通うのは問題ありませんか?
問題ありません。ただし治療の方向性が重複しないよう、両施設の医師に「もう一方のクリニックでもみてもらっている」ことを伝え、情報を共有しましょう。
Q. セカンドオピニオンはどちらの施設で受けるのがよいですか?
現在の診断や治療方針に疑問がある場合、同じ種別(泌尿器科→泌尿器科、不妊クリニック→不妊クリニック)で受けるか、または異なる専門性を持つ施設で受けることでより広い視点を得られることがあります。
まとめ
不妊専門クリニックは「不妊治療全体のコーディネート」に、泌尿器科は「男性側の原因の深掘りと外科的治療」に強みがあります。状況に応じて使い分けることが、最も効率的な妊活への近道です。
まず精液検査を受けて結果を把握し、その結果に応じて受診先を選ぶことをお勧めします。判断に迷う場合は、最初に不妊専門クリニックの初診カウンセリングを受け、紹介してもらうルートも利用できます。
【免責事項】本記事は医療情報の提供を目的としたものであり、診断・治療を行うものではありません。費用・保険適用は施設・状況によって異なります。必ず受診先に直接確認してください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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