
妊娠中のカルシウム必要量は1日650mg|付加量は設定されていない
妊娠中のカルシウム推奨量は非妊娠時と同じ1日650mgです。厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、妊娠中の付加量は0mgとされています。これは妊娠中に腸でのカルシウム吸収率が約2倍に上昇するためです。
しかし、これは「妊娠中はカルシウムを気にしなくてよい」という意味ではありません。日本人女性のカルシウム摂取量は全年齢で推奨量を大きく下回っており、20〜40代女性の平均摂取量は約420mgと報告されています。つまり、妊娠前から慢性的にカルシウムが不足しているのです。
年齢 | 推奨量 | 実際の平均摂取量 | 不足量 |
|---|---|---|---|
20〜29歳女性 | 650mg | 約400mg | 約250mg |
30〜39歳女性 | 650mg | 約430mg | 約220mg |
40〜49歳女性 | 650mg | 約450mg | 約200mg |
カルシウム不足が母体と赤ちゃんに与える影響
胎児の骨格形成にはカルシウムが不可欠です。妊娠中に母体のカルシウム摂取が不足すると、母体の骨や歯からカルシウムが溶け出して胎児に優先的に供給されます。
- 母体への影響:骨密度の低下(将来の骨粗鬆症リスク上昇)、歯がもろくなる、こむら返り(足のつり)の増加、妊娠高血圧症候群のリスク上昇
- 胎児への影響:骨格形成の遅延、出生時の骨密度低下、乳歯の石灰化不全
特に妊娠後期は胎児の骨格形成が最も活発になり、1日約200〜300mgのカルシウムが胎児に移行します。この時期にカルシウム不足だと、母体の骨密度が大幅に低下する可能性があります。
カルシウムが豊富な食品と1日650mgの摂取プラン
食品 | 1食分の目安量 | カルシウム含有量 |
|---|---|---|
牛乳 | 200ml(コップ1杯) | 220mg |
ヨーグルト | 100g | 120mg |
プロセスチーズ | 1個(18g) | 113mg |
木綿豆腐 | 1/2丁(150g) | 180mg |
小松菜 | 1/2束(100g) | 170mg |
ちりめんじゃこ | 大さじ1(5g) | 26mg |
ひじき(乾燥) | 5g | 50mg |
干しえび | 5g | 355mg |
1日650mgを達成する食事例
- 朝:ヨーグルト100g(120mg)+牛乳入りカフェオレ(100mg)
- 昼:小松菜の味噌汁(85mg)+しらす丼(60mg)
- 間食:チーズ1個(113mg)
- 夕:木綿豆腐の味噌汁(90mg)+ひじきの煮物(100mg)
- 合計:約668mg
カルシウムの吸収率を上げる栄養素と下げる要因
カルシウムは摂取量だけでなく吸収率も重要です。食品によって吸収率が異なります。
食品群 | 吸収率 |
|---|---|
牛乳・乳製品 | 約40% |
小魚 | 約33% |
緑黄色野菜 | 約19% |
吸収を促進する栄養素
- ビタミンD:腸でのカルシウム吸収を促進する最重要栄養素。鮭、きのこ類、卵黄に含まれる。日光浴でも体内合成される
- ビタミンK:カルシウムを骨に沈着させる作用。納豆、ブロッコリーに含まれる
- マグネシウム:カルシウムとマグネシウムは2:1の比率で摂ると吸収効率が良い。ナッツ、海藻に含まれる
吸収を阻害する要因
- リン(加工食品に多い):カルシウムと結合して吸収を阻害
- シュウ酸(ほうれん草):カルシウムと結合して吸収率を下げる。茹でこぼすことで軽減
- カフェイン:カルシウムの尿中排泄を促進。1日2杯程度なら影響は軽微
- 食塩の過剰摂取:ナトリウムがカルシウムの腎臓からの排泄を増加させる
カルシウムサプリメントの使い方|食事で不足する分を補う
食事だけで650mgに届かない場合は、サプリメントでの補充が選択肢になります。
- 推奨補充量:食事で摂取できる量を差し引いた分(一般的に200〜300mg/日程度)
- カルシウムの種類:炭酸カルシウム(含有率40%・安価)、クエン酸カルシウム(含有率21%・胃酸が少なくても吸収される)
- 摂取タイミング:食事と一緒に(炭酸カルシウムの場合は特に重要)。1回500mg以下に分割して摂ると吸収率が高い
- ビタミンDとの併用:カルシウムサプリにビタミンDが添加された製品を選ぶと吸収効率が上がる
注意点
- カルシウムの上限量は1日2,500mg。サプリで過剰摂取すると腎結石、便秘、他のミネラルの吸収阻害のリスクがある
- 鉄剤を服用中の方はカルシウムと鉄を同時に摂ると相互に吸収を阻害するため、2時間以上間隔をあける
よくある質問
牛乳が苦手な場合、何でカルシウムを摂ればよいですか?
小松菜(170mg/100g)、木綿豆腐(120mg/100g)、干しえび(7,100mg/100g)、ちりめんじゃこ(520mg/100g)など、乳製品以外にもカルシウム豊富な食品は多くあります。豆乳にカルシウムが添加された製品もあります。
妊娠中のカルシウムサプリは安全ですか?
1日500〜600mg以内のカルシウムサプリメントは妊娠中も安全とされています。ただし、上限量を超えないよう食事からの摂取量と合算して管理してください。担当の産婦人科医に相談の上で使用するのが最善です。
骨密度は妊娠後に回復しますか?
授乳終了後、エストロゲンの回復とともに骨密度は通常6〜12ヶ月で妊娠前の水準に戻るとされています。ただし、カルシウム摂取が慢性的に不足していると回復が不十分になる可能性があるため、産後もカルシウム摂取を意識してください。
こむら返りはカルシウム不足のサインですか?
妊娠中のこむら返り(足のつり)はカルシウムやマグネシウムの不足と関連する場合があります。カルシウムとマグネシウムの補充で改善する方もいますが、子宮の増大による血管圧迫や水分不足が原因のこともあります。頻繁に起きる場合は産婦人科で相談してください。
妊娠中に乳製品をたくさん食べると赤ちゃんが乳アレルギーになりますか?
現在の医学的見解では、妊娠中の乳製品摂取と赤ちゃんの乳アレルギーに因果関係はないとされています。むしろ、妊娠中に多様な食品を摂取することが赤ちゃんのアレルギーリスク低減に寄与するという報告があります。カルシウム確保のために乳製品を摂ることに問題はありません。
まとめ
妊娠中のカルシウム推奨量は1日650mgで、吸収率が上昇するため付加量は設定されていません。しかし日本人女性の多くはそもそも650mgに達していないため、意識的な摂取が必要です。乳製品、豆腐、小松菜、小魚、干しえびを組み合わせれば食事から650mgを達成できます。ビタミンDの併用でカルシウム吸収率が向上するため、鮭やきのこ類、適度な日光浴も心がけてください。食事で不足する分はサプリメントで補いましょう。
※本記事は一般的な妊娠中の栄養情報の提供を目的としています。個別の栄養管理については、かかりつけの産婦人科医または管理栄養士にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
産婦人科・婦人科に関する正確で信頼性の高い情報をお届けします。医療監修のもと、女性の健康に役立つコンテンツを制作しています。
Next Action

