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日本の流産統計データ|発生率と推移

2026/4/19

日本の流産統計データ|発生率と推移

「流産はどのくらいの頻度で起こるのか」「年齢が上がると本当にリスクが高まるのか」——そう疑問を持つ方は少なくありません。しかし日本では、流産の正確な発生件数を公的統計から直接読み取れないという、知られざる盲点があります。本記事では、厚生労働省の人口動態統計における定義の問題から始まり、年齢階級別のリスクデータ、そして欧米との国際比較まで、医学的エビデンスに基づいて整理します。

この記事のポイント

  • 日本の人口動態統計に「流産」は含まれない。妊娠12週未満の自然流産は届出義務なし
  • 臨床的流産率は全妊娠の約10〜15%。年齢とともに上昇し、40歳以上では約40〜50%に達するとされる
  • 国際比較では定義・報告制度の違いがあり、単純な数値比較には慎重な解釈が求められる

厚生労働省の人口動態統計に「流産」がない理由

日本の公的統計では、妊娠12週(妊娠満11週)未満の自然流産は届出義務がなく、人口動態統計の集計対象外です。これが「流産の統計上の盲点」と呼ばれる問題の核心といえます。

厚生労働省の人口動態統計は、死産届が提出された事例のみを集計します。死産とは「妊娠満12週以降の死児の出産」と定義されており(母体保護法・死産の届出に関する規程)、妊娠12週未満で終わる自然流産は制度上この届出の対象外となっています。

死産と流産:定義の違いを整理する

区分

時期の目安

法的定義・届出

統計への反映

自然流産(早期)

妊娠12週未満

届出義務なし

人口動態統計に含まれない

自然死産

妊娠12週以降〜22週未満

死産届が必要

人口動態統計に「死産」として計上

後期死産

妊娠22週以降

死産届が必要

人口動態統計に「死産」として計上

人工流産(中絶)

妊娠22週未満

人工妊娠中絶届

衛生行政報告例に計上(別統計)

全流産の約80%は妊娠12週未満で発生するとされています(日本産科婦人科学会)。人口動態統計の死産数は、流産全体のごく一部を映したものにすぎません。実態に近い流産率を把握するには、受診記録・産婦人科学会のデータベース・研究論文が重要な情報源となるでしょう。

人口動態統計で分かること・分からないこと

人口動態統計から読み取れるのは、主に次の情報です。

  • 妊娠12週以降の自然死産数と死産率(出産千対)
  • 人工死産(中絶)の件数推移
  • 母の年齢別・出生順位別の死産率

一方、妊娠12週未満の早期流産や生化学的妊娠(chemical pregnancy)の件数は、公的統計には現れません。排卵誘発や体外受精の普及により、以前なら気づかれなかった段階での流産が検出されるようになったことも、実態把握を難しくしている要因の一つといえるでしょう。

日本における流産の発生率:臨床データから見た実態

公的統計の制約から、日本の流産発生率は主に臨床研究・学会データをもとに推計されます。臨床的流産(超音波で胎嚢確認後の流産)の発生率は全妊娠の約10〜15%と報告されており、国際的な推計値と概ね一致する水準といえます。

臨床的流産と生化学的妊娠の違い

流産の発生率を論じる際、定義の違いに注意が必要でしょう。

  • 生化学的妊娠(chemical pregnancy):hCG検査で妊娠が確認されたものの、超音波で胎嚢が確認される前に終わるケース。自然妊娠では約30〜50%がこれに該当するとも言われますが、妊娠に気づかない場合がほとんどです
  • 臨床的流産:超音波検査で胎嚢が確認された後に起こる流産。一般に「流産率」として引用されるのはこちらです
  • 反復流産(習慣流産):2回以上(日本産科婦人科学会の定義では2回以上、WHO等では3回以上)の連続した流産。頻度は約5%とされます

時系列でみる死産率の推移

厚生労働省の人口動態統計で確認できる「死産率(出産千対)」の推移を示します。ここでの死産には自然死産と人工死産の両方が含まれる点に留意してください。

総死産率(出産千対)

自然死産率

人工死産率

2000年

約31

約11

約20

2005年

約28

約10

約18

2010年

約25

約11

約14

2015年

約23

約11

約12

2020年

約21

約11

約10

2022年

約20

約11

約9

自然死産率(妊娠12週以降)はこの20年間でほぼ横ばいで推移しています。人工死産率は避妊の普及や意識の変化により減少傾向にあります。ただし冒頭で述べたとおり、妊娠12週未満の流産はここに含まれないため、流産全体の動向を反映した数字とはいえません。

年齢階級別の流産率:25歳未満から40歳以上まで

流産リスクは母体年齢と強い相関があります。国内外の研究を統合すると、25〜29歳の流産率を基準とした場合、35歳以上から顕著な上昇が始まり、40歳以上では約40〜50%に達するという傾向が明らかです。

年齢別流産率の比較(臨床的流産)

母体年齢

臨床的流産率(推計)

主な原因

25歳未満

約10%

胎児の染色体異常(偶発的)

25〜29歳

約11〜12%

胎児の染色体異常(偶発的)

30〜34歳

約13〜15%

胎児の染色体異常(増加)

35〜39歳

約20〜25%

卵子の染色体不分離増加

40歳以上

約40〜50%

染色体異常の高頻度化、卵子の質低下

数値はMagnus et al. (2019) や Nybo Andersen et al. (2000, BMJ) などの大規模コホート研究をもとにした推計値です。集団としての平均的リスクを示すもので、個別の状況への直接適用には慎重さが必要でしょう。

高齢出産増加と流産率への影響

日本では晩婚化・晩産化が継続しており、母の平均出産年齢は2022年時点で約31歳(第1子)に達しています(厚生労働省「人口動態統計」)。35歳以上の出産が全出産に占める割合は約30%超に達しています。

年齢別の流産率上昇と出産年齢の高齢化が重なる場合、集団全体での流産件数が増加する可能性が指摘されています。一方で不妊治療の普及による妊娠機会の増加や、PGT-A(着床前染色体異数性検査)の導入により、治療を受けるカップルについては流産率の改善も報告されています。

父親の年齢との関連

流産リスクは母体年齢が主要因ですが、父親側の年齢も無関係ではありません。Nybo Andersen et al. の研究では、父親が40歳以上の場合、母体年齢を調整しても流産リスクがわずかに上昇する傾向が示されています。精子のDNA損傷率(DFI: DNA Fragmentation Index)が加齢とともに上昇することが、一因と考えられています。なお、これらは集団研究に基づく知見であり、個別の状況に応じた評価は主治医に確認してください。

流産の原因別分布:染色体異常が最多

流産の原因として最も頻度が高いのは胎児の染色体異常です。早期流産(妊娠12週未満)の約50〜60%が染色体数的異常(トリソミー・モノソミー等)によるとされており、「防ぎにくい流産」が大半を占めることを意味します。

流産原因の内訳

原因

割合(早期流産)

備考

胎児染色体異常

50〜60%

トリソミー16が最多。加齢とともに頻度上昇

原因不明

約20〜30%

免疫・凝固異常の関与も検討される

子宮形態異常

約10〜15%

中隔子宮・双角子宮など(反復流産で特に検討)

抗リン脂質抗体症候群(APS)

約5〜15%(反復流産)

血栓形成による着床不全・胎盤機能不全

内分泌・代謝異常

約10〜15%

甲状腺機能低下症・糖尿病・高プロラクチン血症など

反復流産(2回以上)の場合は、原因検索として日本産科婦人科学会のガイドライン(2023年版)が定める検査パネル(抗リン脂質抗体・子宮形態評価・夫婦染色体検査・内分泌検査)が推奨されます。一方、初回・2回目の流産は染色体偶発異常の可能性が高く、必ずしも詳細な検査が適応になるとは限りません。

国際比較:日本の流産率は欧米と違うのか

流産率の国際比較は、報告制度・診断基準・集計対象の違いにより単純な比較が難しい領域です。ただし臨床的流産率(超音波確認後の流産)は、先進国間でおおむね10〜15%の範囲に収まっており、大きな乖離はないとされています。

主要国との比較:報告制度の違い

国・地域

流産の公的統計

定義・届出の基準

臨床的流産率(推計)

日本

妊娠12週以降の死産のみ計上

死産の届出に関する規程(12週未満は届出不要)

約10〜15%

アメリカ

州により異なる(連邦統計なし)

20週未満を流産(miscarriage)と定義する場合が多い

約10〜20%

イギリス

24週未満は法的届出なし

Miscarriage Associationの定義は24週未満

約10〜20%

スウェーデン

22週未満の流産を国家登録に含む

医療記録ベースの高精度データ

約12〜15%

デンマーク

国家患者登録(NRP)で追跡可能

受診記録ベース・高い捕捉率

約10〜15%

北欧の高精度データが示すもの

流産統計の信頼性が特に高いのは北欧諸国です。デンマークの国家患者登録を用いたNybo Andersen et al. (2000, BMJ) の研究では、102万件以上の妊娠を追跡し、臨床的流産率を年齢別に詳細に報告しています。

同研究によれば:

  • 20〜24歳: 8.9%
  • 25〜29歳: 10.0%
  • 30〜34歳: 11.7%
  • 35〜39歳: 17.7%
  • 40〜44歳: 33.8%
  • 45歳以上: 53.2%

この研究は流産リスクの年齢別勾配を最も明確に示した大規模研究として、国際的に引用されています。日本の流産率に特化した同規模の研究は少ないものの、日本産科婦人科学会の臨床統計では概ね近似した傾向が確認されているとされています。

診断基準・医療アクセスの違いが数値に与える影響

国際比較で注意すべき点を以下に整理します。

  • 超音波検査の普及率:日本は妊婦健診での超音波実施頻度が高く、早期の胎嚢確認・流産診断が行いやすい環境にあります。早期発見が多いほど臨床的流産として計上されやすくなる側面があります
  • 不妊治療の普及:ART(生殖補助医療)による妊娠は自然妊娠と比較して母体年齢が高い傾向があり、流産率も高くなりやすいとされています
  • 生化学的妊娠の扱い:不妊治療中の患者では、自然妊娠では気づかれないはずの生化学的妊娠がhCG検査により検出・記録されるため、見かけ上の流産率が高くなることがあります

不妊治療と流産率:ARTによる変化

体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)を含む生殖補助医療(ART)による妊娠は、自然妊娠と比較して流産率がやや高い傾向が報告されています。ただし母体年齢・卵子の質・胚の状態を調整すると差が縮小するとも指摘されており、一概に比較はできません。

PGT-Aによる流産率低下のエビデンス

着床前染色体異数性検査(PGT-A)は、胚の染色体数を移植前に確認する技術です。正常な染色体を持つ胚を選択することで、流産率を低下させる効果が報告されています。

Munné et al. (2023, STAR試験) では、PGT-A使用群と未使用群を比較した結果、流産率が約35%から約15%に低下したという報告があります。日本では2022年以降、一定条件(反復ART不成功・反復流産等)を満たす場合に保険適用が拡大されており、治療の選択肢として考慮できる場合があります。ただしPGT-Aの適応・効果については、主治医との十分な相談が前提となるでしょう。

凍結融解胚移植と流産率

日本では凍結融解胚移植(FET)が主流となっており、新鮮胚移植と比較して子宮内膜の状態が整いやすいとされます。日本産科婦人科学会ARTデータブック(2022年)では、FETでの臨床的妊娠率・流産率について年齢別・胚の状態別の詳細データが公開されており、治療選択の参考として活用できます。

流産率を正しく理解するための視点:個別リスクと集団統計の違い

統計上の流産率はあくまで集団の平均であり、個人のリスクとは異なります。「35〜39歳の流産率が約20〜25%」というデータは、この年代の妊娠の約75〜80%は流産せずに継続するという事実でもあるといえるでしょう。

流産率の「正しい読み方」

統計データを解釈する際の視点を以下に整理します。

  • 分母の定義:「全妊娠」を分母とするか「臨床的妊娠(超音波確認後)」を分母とするかで数値が大きく変わります
  • 対象集団:一般集団の統計か、不妊治療患者の統計かで意味が異なります
  • 既往歴の影響:一度流産を経験した場合、次の妊娠での流産率は一定程度上昇します(ただし1回の流産後でも次の妊娠は70〜80%が正常に継続するとされます)
  • 測定時期:超音波による胎嚢確認後の流産率と心拍確認後の流産率は異なり、心拍確認後は流産率が大幅に低下します(約2〜5%)

流産後の次の妊娠への影響

流産後の次の妊娠転帰については、大規模研究(Bhattacharya et al., 2010, BMJ)が参考になります。1回の流産後、次の妊娠で生児を得る割合は約70〜75%と報告されています。2回の流産後でも、その後の妊娠で生児を得る可能性は60〜65%前後とされています。

反復流産(2回以上)の場合は、日本産科婦人科学会の定める原因検索と専門医への受診が推奨されます。次の妊娠に向けて適切なサポートを受けることが大切でしょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 流産の発生率はどのくらいですか?

臨床的流産(超音波で胎嚢確認後の流産)の発生率は、全妊娠の約10〜15%とされています。年齢が上がるにつれて上昇し、40歳以上では約40〜50%との報告もあります。なお、hCG検査でのみ確認される生化学的妊娠まで含めると、発生率はこれより高い数値になるでしょう。

Q. 日本の人口動態統計で流産の件数は分かりますか?

分かりません。厚生労働省の人口動態統計に計上されるのは「死産」(妊娠12週以降)のみです。流産の大半を占める妊娠12週未満の早期流産は届出義務がなく、公的統計には含まれません。実際の流産件数の把握には、臨床研究や産科学会のデータを参照することが不可欠です。

Q. 35歳を超えると流産率はどのくらい上がりますか?

デンマークの大規模研究(Nybo Andersen et al., 2000)によれば、25〜29歳の約10%から35〜39歳では約17.7%、40〜44歳では約33.8%へと上昇します。原因の大部分は卵子の加齢による染色体不分離の増加です。

Q. 流産の原因の中で最も多いのは何ですか?

早期流産(妊娠12週未満)の原因として最多は胎児の染色体異常で、約50〜60%を占めます。その大半は偶発的に起こるトリソミーなどの染色体数的異常であり、母体側の問題ではありません。反復流産では子宮形態異常や抗リン脂質抗体症候群なども検討対象となるでしょう。

Q. 一度流産すると、次の妊娠でも流産しやすくなりますか?

1回の流産後、次の妊娠でも流産する可能性はやや高まります。ただし約70〜80%の確率で次の妊娠は正常に継続するとされており、一度の流産で過度に不安になる必要はありません。2回以上の反復流産の場合は、専門医での原因検索を検討してください。

Q. 日本と欧米で流産率に違いはありますか?

臨床的流産率(超音波確認後)は日本・欧米ともに約10〜15%と大きな差はありません。ただし公的統計への算入基準が異なるため(日本は12週以降の死産のみ計上、北欧は医療記録ベースで早期流産も把握)、国間で数字を単純比較することには慎重さが必要といえるでしょう。

Q. PGT-Aを受けると流産率は下がりますか?

反復流産や高齢妊娠のケースでは、PGT-A(着床前染色体異数性検査)により染色体正常胚を選択することで、流産率が低下するというエビデンスがあります(Munné et al., 2023: 約35%→約15%)。ただし全ての方に適応されるわけではなく、費用・卵子数・治療歴などを踏まえた主治医との丁寧な検討が前提となります。適応の有無は個々の状況次第です。

Q. 流産率の統計を見る際に気をつけることは何ですか?

流産率の数値は「分母(全妊娠か、超音波確認後か)」「対象集団(一般集団か、不妊治療患者か)」「測定タイミング(胎嚢確認後か、心拍確認後か)」によって大きく変わります。心拍確認後の流産率は約2〜5%まで低下し、胎嚢確認直後の数値とは全く異なるため、文脈に応じた解釈が不可欠といえます。

まとめ

日本では妊娠12週未満の流産が公的統計に含まれないため、「流産の件数」を政府データから直接把握することはできません。臨床データによれば全妊娠の約10〜15%が臨床的流産として終わり、年齢とともにリスクが上昇します。国際比較では定義・報告制度の違いに注意が必要であり、北欧の大規模研究が最もデータの信頼性が高いと評価されています。個別リスクの評価は主治医との相談が不可欠でしょう。

流産の大部分は胎児の染色体偶発異常によるものであり、「防げなかった」ケースが大半です。一方で反復流産(2回以上)の場合は原因検索と専門的治療の選択肢があります。PGT-Aをはじめとした選択肢が保険適用拡大されており、治療を受けているカップルは主治医に相談することで個別リスクの評価と対策を検討できるでしょう。

次のステップ

流産後の次の妊娠への不安、または反復流産を経験している場合は、産婦人科・不育症専門外来への受診を検討してください。初診時には月経周期・妊娠・流産の既往歴をまとめておくと、診察がスムーズになります。クリニック選びに迷う場合は、日本産科婦人科学会の専門医リストが参考になります。

参考文献・ガイドライン

  • 厚生労働省「人口動態統計」各年版(死産統計)
  • 死産の届出に関する規程(昭和21年厚生省令第42号)
  • 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン産科編2023」
  • 日本産科婦人科学会「ART(生殖補助医療)データブック2022」
  • Nybo Andersen AM, et al. "Maternal age and fetal loss: population based register linkage study." BMJ. 2000;320(7251):1708-1712.
  • Bhattacharya S, et al. "Reproductive outcomes following spontaneous abortion." BMJ. 2010;340:c800.
  • Magnus MC, et al. "Role of maternal age and pregnancy history in risk of miscarriage." BMJ. 2019;364:l869.
  • Munné S, et al. "Preimplantation genetic testing for aneuploidies reduces spontaneous pregnancy loss in normal responders: a randomized trial." Fertil Steril. 2023.

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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の治療法を推奨するものではありません。症状や治療については、必ず担当医にご相談ください。

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この記事を書いた人

EggLink編集部

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公開:2026/4/19更新:2026/4/28