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流産の種類一覧|稽留流産・進行流産・不全流産

2026/4/19

流産の種類一覧|稽留流産・進行流産・不全流産

流産には、出血や腹痛の有無、子宮内の状態、妊娠週数によって複数の種類があります。診断名を初めて聞いた際に「どういう意味か」「何をすべきか」が分からず、不安を抱える方は少なくありません。この記事では、稽留流産・進行流産・不全流産・完全流産をはじめとする流産の種類を分類体系ごとに解説し、それぞれの臨床的特徴・処置の必要性・心理的な負担の違いをまとめています。診断を受けた直後の方にも、予備知識として知っておきたい方にも、参考となる情報を提供しています。

【この記事のポイント】

  • 流産は「時期別」「経過別」「原因別」の3軸で分類され、診断名はこれらの組み合わせで決まる
  • 稽留流産・進行流産・不全流産・完全流産の4型は経過(状態)による分類であり、それぞれ処置の要否が異なる
  • 「化学的流産」は医学的な流産回数にカウントされない場合が多く、不育症診断における扱いは施設によって異なる

流産の分類体系:3軸マトリクスで理解する

流産は単一の病態ではなく、「妊娠週数(時期)」「子宮内・出血の経過(状態)」「発生原因」の3軸で分類されます。一人の患者に対して複数の診断名が同時に成立することもあり、「初期・稽留流産・染色体異常による」のように記述されます。

時期による分類:初期流産と後期流産

日本産科婦人科学会の定義では、妊娠22週未満で妊娠が終了した場合を流産と呼びます。

  • 初期流産:妊娠12週未満で発生。流産全体の約80%を占め、染色体異常を主因とすることが多い
  • 後期流産:妊娠12週以降22週未満で発生。子宮形態異常や頸管無力症、感染症などの母体因子が関与するケースが初期より増加する

原因による分類:胎児因子と母体因子

流産原因は大きく「胎児(胚)側の要因」と「母体側の要因」に分けられます。

  • 染色体異常(胎児因子):初期流産の50〜60%に染色体数的異常が関与すると報告されています。偶発的に生じるものが大半であり、親の染色体に問題がない場合でも起こりえます
  • 子宮形態異常(母体因子):中隔子宮、双角子宮などの子宮奇形。繰り返す流産との関連が指摘されています
  • 内分泌異常(母体因子):黄体機能不全、甲状腺疾患、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)など
  • 血液凝固異常(母体因子):抗リン脂質抗体症候群(APS)は繰り返す流産の原因として重要。適切な治療で次回妊娠の維持率が改善すると報告されています
  • 感染症・その他:クラミジア、細菌性腟炎、ウレアプラズマなどが後期流産に関与するとされています

稽留流産(けいりゅうりゅうざん)とは

稽留流産は、胎児・胎芽が子宮内で死亡または発育停止しているにもかかわらず、出血や腹痛などの自覚症状がなく、子宮内容が自然に排出されていない状態です。超音波検査で心拍が確認できないことで発見されるケースがほとんどです。

臨床的特徴

  • 症状:出血・腹痛がないか、あってもごく軽微
  • 診断:経腟超音波で胎芽の心拍未確認、または胎囊のみで胎芽が確認できない(妊娠8週前後以降に胎芽が見えない場合など)
  • 発見の契機:定期健診・妊娠確認のエコー検査が主。本人が気づかないまま診断されることが多い

処置の選択肢

稽留流産の処置は、待機療法(自然排出を待つ)と手術療法(子宮内容除去術)の2択が基本です。施設方針や患者の希望、週数、経過によって選択が異なります。

  • 待機療法:自然排出を数日〜2週間程度待つ。出血・腹痛が突然強くなる可能性があり、自宅待機中の管理が必要
  • 手術療法(掻爬術・吸引法):確実性が高く、組織の病理検査が可能。染色体異常の確認ができる施設もある

心理的負担の特徴

自覚症状がないまま診断されるため、「知らないうちに赤ちゃんが…」という心理的衝撃が大きくなりやすい傾向があります。診断告知の場面での精神的サポートが重要とされています。

進行流産とは

進行流産は、子宮収縮(陣痛様の腹痛)と出血が始まり、子宮口が開大して子宮内容が排出される過程にある状態です。流産が既に進行中であり、医学的介入によって妊娠継続を図ることは困難な段階です。

臨床的特徴

  • 症状:強い腹痛・下腹部痛(周期的に増強することが多い)、鮮血〜暗赤色の出血、破水感を伴うこともある
  • 子宮口の状態:内診で子宮口の開大が確認される(切迫流産との鑑別点)
  • 経過:短時間〜数時間で完全排出(完全流産)に至る場合と、一部が残留する(不全流産)場合がある

切迫流産との違い

切迫流産は「流産しかかっている」状態であり、子宫口は閉じており胎児心拍が確認できる段階です。安静・治療により妊娠継続が可能なケースが存在します。一方、進行流産では子宮口が既に開き、妊娠継続は困難な段階です。

項目

切迫流産

進行流産

子宮口

閉じている

開大している

胎児心拍

確認できる

消失またはなし

妊娠継続の可否

場合により可能

不可

主な治療

安静・黄体ホルモン補充など

経過観察・必要時処置

不全流産とは

不全流産は、子宮内容の一部(胎盤・絨毛組織・胎児成分)が排出されたものの、残りが子宮内に残留している状態です。出血が持続・増加する場合や、感染リスクがある場合に手術処置が必要となります。

臨床的特徴

  • 症状:出血の持続(大量出血になることもある)、腹痛が続く、組織の一部が排出された感覚
  • 診断:超音波で子宮内に残留組織が確認される
  • リスク:残留組織は感染(子宮内感染)の温床となるため、適切な処置が求められる

処置の必要性

出血量が少なく残留組織が小さい場合は、待機療法や薬物療法(ミソプロストールなど)が選択されることもあります。ただし、大量出血・感染徴候がある場合は緊急的な外科処置(吸引掻爬)が適応となります。

完全流産とは

完全流産は、子宮内容が自然に完全排出された状態です。超音波検査で子宮内腔に残留組織がないことが確認されれば、原則として追加の手術処置は不要です。

臨床的特徴と経過観察

  • 症状の変化:腹痛・出血が排出後から次第に軽快する
  • 診断の確定:経腟超音波での残留組織のないことの確認が必須
  • 次回月経:完全流産後は通常4〜6週間程度で月経が再開することが多いとされています
  • 注意点:hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)値が正常に低下しているか確認が必要。まれに胞状奇胎や絨毛性疾患が隠れているケースがあるためです

各流産タイプの比較一覧表

稽留流産・進行流産・不全流産・完全流産の4型を、症状・出血・処置・心理的負担の観点から比較すると以下のとおりです。

種類

主な症状

出血量

手術処置の要否

心理的負担の特徴

稽留流産

ほぼなし(無症状)

少ないか皆無

多くの場合必要(または待機療法)

「気づかなかった」衝撃が強い

進行流産

強い腹痛・大量出血

多い

経過次第(完全排出なら不要)

身体症状が激しく急性的な苦痛

不全流産

出血持続・腹痛

持続〜大量

多くの場合必要

処置の長期化で疲弊感が出やすい

完全流産

排出後に軽快

排出後に減少

原則不要(確認のみ)

経過が終わった安堵と悲嘆の混在

化学的流産(生化学的妊娠)の位置づけ

化学的流産(biochemical pregnancy)は、hCGが一時的に上昇して妊娠反応が陽性になったものの、超音波で胎嚢が確認されないまま消退した状態です。月経の遅れや市販の妊娠検査薬で気づく場合がほとんどで、「不妊治療中の敏感な観察」によって顕在化するケースが増えています。

医学的な流産回数にカウントされない理由

日本産科婦人科学会の定義では、流産は「妊娠が成立した後の妊娠の喪失」を指しますが、化学的流産は超音波で胎嚢が確認されていないため、「臨床的妊娠」に至っていないと判断されます。そのため、一般的には流産回数には含めないのが医学的慣例です。

不育症診断における扱いの議論

化学的流産を繰り返す場合、不育症(習慣流産)の診断基準に含めるかどうかについては、施設・専門家によって見解が分かれています。日本生殖医学会が2022年に示した見解では、化学的流産の反復は不育症の診断基準には含めないとする立場が主流ですが、抗リン脂質抗体症候群のスクリーニングなど一部の検査を積極的に行うべきという意見も出ています。不安がある場合は、不育症専門外来に相談することが勧められます。

化学的流産と臨床的流産の比較

項目

化学的流産

臨床的流産(稽留流産など)

hCG検出

一時的に陽性

陽性(継続上昇後に低下)

胎嚢の確認

なし

あり(超音波で確認)

流産回数のカウント

原則含めない

カウントされる

不育症診断への影響

施設・専門家で見解が異なる

診断基準に含まれる

身体的処置

ほぼ不要

種類により必要

繰り返す流産(不育症・習慣流産)の基準と検査

流産を2回以上繰り返した場合を「反復流産」、3回以上繰り返した場合を「習慣流産」と呼び、不育症としての精密検査が推奨されます。日本産科婦人科学会の2021年ガイドラインでは、反復流産(2回以上)の時点で夫婦双方の検査開始を提案しています。

主な検査項目

  • 染色体検査:夫婦の末梢血染色体分析(均衡型転座などを除外)
  • 子宮形態検査:経腟超音波、子宮鏡、子宮卵管造影(HSG)
  • 内分泌検査:甲状腺機能(TSH・FT4)、黄体機能評価
  • 血液凝固検査:抗リン脂質抗体(ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体、抗β2GPI抗体)、凝固因子
  • 免疫学的検査:NK細胞活性(施設によって実施)

原因が特定された場合は、原因に応じた治療(低用量アスピリン+ヘパリン療法、黄体ホルモン補充など)により、次回妊娠の継続率が改善するとされています。

よくある質問(FAQ)

Q. 稽留流産と診断されましたが、手術は必ず受けなければなりませんか?

必ずしも即時手術が必要というわけではありません。自然排出を待つ待機療法や薬物療法が選択される場合もあります。ただし、週数・残留組織の大きさ・感染リスク・出血量などによって方針が変わるため、担当医と十分に相談したうえで決定することが重要です。

Q. 流産手術(掻爬術・吸引法)の後、次の妊娠はいつから可能ですか?

一般的には、手術後1〜2回の月経を経てから次の妊娠を試みることが勧められています。子宮内膜の回復状況や心理的な準備にも個人差があるため、具体的な時期は担当医に確認することが勧められます。

Q. 化学的流産は流産回数に入りますか?

医学的には原則として流産回数に含めないのが慣例です。超音波で胎嚢が確認された段階(臨床的妊娠)に至っていないためです。ただし、繰り返す場合には抗リン脂質抗体症候群などの検索を行う施設もあり、気になる場合は専門医に相談することが勧められます。

Q. 流産の原因を調べることはできますか?

初回の流産では、手術時に採取した絨毛組織の染色体検査が可能な施設があります。2回以上繰り返した場合は、不育症スクリーニング(抗リン脂質抗体・染色体・子宮形態・内分泌検査)が推奨されます。初回流産の原因の約50〜60%は染色体異常であり、偶発的なものとして扱われることが多いとされています。

Q. 流産後の出血はどのくらい続きますか?

自然流産・完全流産の場合、出血は1〜2週間程度で落ち着くことが一般的です。手術処置後も同様に数日〜1週間程度の出血が続く場合があります。出血量が生理時より大幅に多い、発熱を伴う、2週間以上持続するなどの場合は、残留組織や感染の可能性があるため早めに受診することが勧められます。

Q. 進行流産と不全流産の違いがわかりません。

進行流産は「流産が進行している最中(排出の途中)」の状態、不全流産は「一部排出されたが残留している状態」です。時系列的には、進行流産が完全に排出されれば完全流産、一部が残れば不全流産という経過をたどることがあります。

Q. 稽留流産を繰り返しています。何か原因がありますか?

稽留流産を2回以上繰り返している場合、不育症の精密検査が勧められます。原因として、夫婦の染色体均衡型転座(約4〜5%)、抗リン脂質抗体症候群(約10〜15%)、子宮形態異常(約10〜15%)などが報告されています。原因不明の場合も約50%程度存在しますが、次回妊娠でも胎児心拍確認後の継続率は比較的高いとされています。

まとめ

流産は「時期(初期・後期)」「経過(稽留・進行・不全・完全)」「原因(染色体・母体因子)」の3軸で分類されます。それぞれの種類によって、症状の有無・処置の必要性・次のステップが大きく異なります。

化学的流産は医学的な流産回数にカウントされないのが原則ですが、繰り返す場合は専門医への相談が勧められます。流産を2回以上繰り返している場合は、不育症スクリーニングにより原因が特定でき、適切な治療で次回妊娠の維持が期待できるケースがあります。

診断を受けた直後は身体的にも精神的にも負担が大きい時期です。疑問や不安は担当医・専門外来に相談し、一人で抱え込まないことが大切です。

次のステップ

流産の診断を受けた方、または流産を繰り返して不安を感じている方は、産婦人科・不育症専門外来への受診をご検討ください。検査の必要性や処置の選択肢について、専門医が状況に応じて判断します。

不育症外来・婦人科外来を受診する際は、これまでの流産回数・妊娠週数・症状・処置内容をメモしておくと、診察がスムーズに進みます。

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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の治療法を推奨するものではありません。症状や治療については、必ず担当医にご相談ください。

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この記事を書いた人

EggLink編集部

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公開:2026/4/19更新:2026/4/28