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流産は予防できるのか?

2026/4/19

流産は予防できるのか?

流産の予防:予防できるものとできないものがある

流産の約80%は妊娠初期(妊娠12週未満)に起こり、そのうちの約50〜60%は胎児の染色体異常が原因です。この染色体異常による流産は、現時点の医学では予防することができません。一方で、不育症(反復流産)に関連する抗リン脂質抗体症候群や子宮形態異常など、治療によって次回妊娠の継続率を高められる原因もあります。「予防できる流産」と「予防できない流産」を正確に区別することが、不安を和らげ、適切な治療につながる第一歩です。

予防できない流産:染色体異常型

妊娠初期流産の約半数以上は胎児側の染色体異常によるものであり、これは自然淘汰のプロセスと考えられており、親の生活習慣や行動で防ぐことは現在の医学では不可能です。

染色体異常型の流産には以下の特徴があります。

  • 多くは妊娠8〜10週前後に胎児の心拍停止として発見される
  • 原因は精子・卵子の染色体分配エラーで、加齢とともに頻度が上がる(35歳以降で急増)
  • 1回の流産後の次回妊娠では、約80%が正常に継続する
  • 「安静にしていれば防げた」「激しく動いたから起きた」という考えは医学的に根拠がない

日本産科婦人科学会のガイドラインでも、散発流産(1〜2回の流産)の主な原因は偶発的な染色体異常であるとされており、母体側の治療・予防介入が有効な対象ではないことが明記されています。流産を経験した方が自分を責める必要はありません。

エビデンスのある予防策

一部の流産リスク(特に不育症・反復流産に関連するもの)には、医学的なエビデンスに基づいた予防的介入が存在します。ここでは、根拠の質が比較的高いものを紹介します。

葉酸(神経管閉鎖障害の予防)

葉酸は流産そのものを直接予防する薬剤ではありませんが、胎児の神経管閉鎖障害(二分脊椎など)のリスクを約70%低減するとされています(米国CDC・厚生労働省いずれも推奨)。妊娠の1か月前から妊娠3か月まで、1日400μgの摂取が推奨されています。

プロゲステロン補充(黄体機能不全・切迫流産の場合)

習慣流産や切迫流産の患者の一部では、プロゲステロン(黄体ホルモン)補充療法が有効なケースがあります。2019年のARCANA試験(英国、ランダム化比較試験、4,153名)では、出血を伴う切迫流産の女性にプロゲステロン膣坐薬を投与したところ、出生率が有意に改善(対照群比72% vs 63%)しました。ただし、適応は医師が判断するものであり、全員に有効というわけではありません。

抗凝固療法(抗リン脂質抗体症候群の場合)

抗リン脂質抗体症候群(APS)は不育症の原因として明確に確立されており、反復流産の約10〜15%を占めます。低用量アスピリン+ヘパリン注射の併用療法が標準的な治療であり、生児獲得率を50%台から70〜80%台に改善するとされています(日本産婦人科学会ガイドライン)。

頸管縫縮術(子宮頸管無力症の場合)

妊娠中期(16〜24週)の流産・早産リスクが高い「子宮頸管無力症」に対しては、頸管縫縮術(シロッカー手術)が有効です。適応がある場合の手術は、妊娠継続率を有意に改善するとメタアナリシスで示されています。超音波検査による頸管長の定期的なモニタリングが早期発見につながります。

甲状腺機能の適切な管理

甲状腺機能低下症(特に橋本病)は流産リスクを高める可能性があることが複数の研究で示されています。甲状腺機能の異常は血液検査(TSH値)で確認でき、レボチロキシンによる治療が流産率の低減に寄与するとされています。不育症の精査では甲状腺機能のチェックが標準的に行われます。

エビデンスが不十分な「予防策」の評価

メディアやSNSでは「流産予防に効く」とされる情報が数多く流通しています。しかし、科学的な根拠が十分でないものも多く含まれるため、冷静に評価することが重要です。

安静・床上安静

「流産しそうなときは安静にする」という指示は広く行われてきましたが、染色体異常による流産に対して安静が有効であるとする高品質なエビデンスは現時点では存在しません。2010年のコクランレビューでは、切迫流産に対する床上安静の有効性を支持する証拠は不十分とされています。過度な安静は血栓リスクや筋力低下を招く場合があります。

各種サプリメント(DHEA・CoQ10など)

卵子の質改善を謳うDHEAやCoQ10は、一部の不妊治療領域で研究されていますが、流産率の低下に対する有効性を示すランダム化比較試験のエビデンスは限定的です。現時点では標準治療の代替にはなりません。

漢方薬(当帰芍薬散など)

日本では不育症や切迫流産に漢方薬が処方されることがありますが、流産予防に対する高エビデンスな臨床試験結果は現時点では確立されていません。補完的な使用について医師に相談することは可能ですが、主たる治療の代替とはなりません。

黄体ホルモン剤の漫然投与

黄体機能不全を根拠とした流産予防目的のプロゲステロン投与については、適応のない例への投与の有効性は示されていません。前述のARCANA試験の結果も、出血を伴う切迫流産に限定したものです。適応外の使用については注意が必要です。

流産リスクを高める可能性のある因子の管理

予防できない流産も多い一方で、生活習慣の改善によってリスク因子を軽減できる可能性はあります。以下の因子は、流産リスクとの関連が報告されています。

リスク因子

関連するエビデンス・推奨

喫煙

流産リスクを約1.2〜1.8倍高めるとされる(複数のメタアナリシス)。禁煙は妊娠前から推奨

大量飲酒

アルコールは胎児毒性があり、流産リスクを高める可能性がある。妊娠中の飲酒は量にかかわらず推奨されない

肥満(BMI 30以上)

流産リスクの上昇との関連が報告されており、妊娠前の体重管理が推奨される

高齢(35歳以上)

卵子の染色体異常頻度が加齢とともに増加するため、流産率も上昇する。変更できない因子だが、早期の妊娠計画が現実的な対応

コントロール不良の糖尿病

妊娠前からの血糖管理が流産・先天異常リスクの低減につながる

子宮形態異常(中隔子宮など)

子宮腔形成術による妊娠転帰の改善が報告されている例もある

不育症の場合:繰り返す流産への予防的治療

2回以上の流産(日本産婦人科学会の不育症定義:2回以上の連続した流産)を経験している場合は、不育症の精査と予防的治療の対象となります。散発流産とは区別して考えることが重要です。

不育症精査で行われる主な検査は以下の通りです。

  • 染色体検査(夫婦両方):均衡型転座など構造的染色体異常の有無
  • 抗リン脂質抗体検査:ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体など
  • 子宮形態検査:超音波・子宮鏡・MRIによる中隔子宮・双角子宮の評価
  • 甲状腺機能(TSH・FT4)・血糖値
  • プロラクチン値(高プロラクチン血症の除外)

原因が特定された場合、それに対応する治療(抗凝固療法・手術・ホルモン補充など)によって次回の妊娠継続率が改善する見込みがあります。一方、約50%は検査をしても原因不明となり、その場合も次回の妊娠で約70〜80%が正常に継続するとされています(厚生労働省研究班データ)。

不育症の診療は専門性が高く、不育症を専門とする医療機関や日本産婦人科学会認定施設への受診が推奨されます。

心構えと専門家の活用

流産は「自分のせいではない」という事実を知ることが、精神的な回復の出発点となります。同時に、繰り返す流産には医学的なアプローチが有効なケースがあるため、一人で抱え込まず専門家に相談することが重要です。

以下の状況では、産婦人科への相談を検討してください。

  • 2回以上の流産を経験している(不育症の精査適応)
  • 妊娠中に出血・腹痛がある(切迫流産の評価が必要)
  • 流産後に精神的な落ち込みが続いている(グリーフケア・専門相談)
  • 次の妊娠に向けて不安が強く、何から始めればよいかわからない

流産後のパートナーシップも大切です。流産はパートナーにとっても喪失体験であり、夫婦・カップルで悲しみを共有し、次の選択を一緒に考える姿勢が心理的な回復を助けます。産院によってはグリーフサポートや不育症カウンセリングを提供しているところもあります。

よくある質問(FAQ)

Q. 流産は「安静にしていれば」防げましたか?

妊娠初期の流産の多くは胎児の染色体異常が原因であり、安静によって防ぐことはできません。「もっと気をつけていれば」という後悔は医学的な根拠がなく、自分を責める必要はありません。一方で、子宮頸管無力症など一部の妊娠中期の流産では管理入院や頸管縫縮術が有効なケースがあります。状況によって対応が異なるため、医師に相談することが大切です。

Q. 葉酸を飲んでいれば流産を防げますか?

葉酸は神経管閉鎖障害(二分脊椎など)の予防に有効ですが、染色体異常による流産を直接防ぐものではありません。妊娠前からの葉酸摂取(1日400μg)は推奨されますが、「流産予防サプリ」として過信しないことが重要です。

Q. 2回流産しました。次の妊娠前に何か検査すべきですか?

2回以上の連続した流産は不育症として不育症精査の対象となります。抗リン脂質抗体、夫婦染色体、子宮形態、甲状腺機能などを調べることで、治療可能な原因が見つかる場合があります。かかりつけの産婦人科、または不育症専門外来への相談をお勧めします。

Q. 高齢妊娠では流産はどのくらい増えますか?

流産率は年齢とともに上昇します。20代前半では約10〜12%、30代前半で約15〜20%、35〜39歳で約25〜30%、40代では約40〜50%以上に達するとされています。これは加齢による卵子の染色体異常頻度の上昇が主な原因であり、生活習慣の改善で完全に防ぐことは困難です。早めの妊活や専門家への相談が現実的な対応となります。

Q. 流産後、次の妊娠はいつから始められますか?

日本産婦人科学会の一般的な目安では、流産後1回の正常な月経を待った後から妊娠を試みることが多いとされています(子宮の回復状況によって異なります)。ただし、繰り返す流産がある場合は、次の妊娠前に不育症の精査を受けることが推奨されます。身体の回復とともに、精神的な準備が整ってからというアプローチも大切です。

Q. プロゲステロン(黄体ホルモン)を自分で購入して使えますか?

プロゲステロン製剤は医師の処方が必要な薬剤です。適応なしに自己判断で使用することは、効果が期待できないだけでなく、副作用や診断の遅れにつながる可能性があります。出血や下腹部痛などの切迫症状がある場合は、自己対処ではなく医療機関への受診が必要です。

Q. 不育症の治療はどのくらい費用がかかりますか?

不育症の精査検査の一部は保険適用となっています(2022年の保険適用拡大以降)。抗リン脂質抗体症候群に対するヘパリン・低用量アスピリン療法も保険適用の対象です。ただし、検査項目や治療内容によって自費となるものもあるため、受診前にクリニックに確認することをお勧めします。

まとめ

流産のうち、特に妊娠初期の染色体異常型は現在の医学では予防できません。自分を責める必要はなく、それは偶発的な出来事です。一方で、不育症(反復流産)に関わる抗リン脂質抗体症候群・子宮形態異常・甲状腺機能異常などには、医療介入によって次回妊娠の予後を改善できる可能性があります。

エビデンスのある予防策は限られており、安静・サプリメント・漢方を「流産予防」として盲信することにはリスクがあります。正確な情報をもとに、必要な場合は専門家に相談して適切なケアを受けることが、最も確実な「できること」です。

2回以上の流産を経験している場合は、一人で悩まず不育症専門外来への受診を検討してください。原因が明確でなくても、次回の妊娠で多くの方が出産にたどり着いています。

参考文献

  • 日本産科婦人科学会「不育症の診療に関する提言」(2022年)
  • Coomarasamy A, et al. "A Randomized Trial of Progesterone in Women with Bleeding in Early Pregnancy." N Engl J Med. 2019;380:1815-1824(ARCANA試験)
  • Buss L, et al. "Miscarriage of chromosomally normal pregnancies in relation to parental chromosome constitution." Hum Reprod. 1999;14(3):771-775
  • Quenby S, et al. "Miscarriage matters: the epidemiological, physical, psychological, and economic costs of early pregnancy loss." Lancet. 2021;397(10285):1658-1667
  • 厚生労働省「不育症治療に関する再評価と不育症治療の標準化に関する研究」研究班報告
  • ACOG Practice Bulletin No. 200: Early Pregnancy Loss. Obstet Gynecol. 2018;132(5):e197-e207

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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の治療法を推奨するものではありません。症状や治療については、必ず担当医にご相談ください。

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この記事を書いた人

EggLink編集部

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公開:2026/4/19更新:2026/4/28