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妊娠中の水分摂取量の目安と脱水症状の予防

2026/4/19

妊娠中の水分摂取量の目安と脱水症状の予防

妊娠中の水分摂取量の目安と脱水症状の予防ガイド

妊娠中の水分摂取量は、ママと赤ちゃん両方の健康を左右する重要な要素です。 妊娠中は血液量が約40〜50%増加し、羊水の維持、胎盤への栄養運搬、体温調節など、水分の役割が非妊娠時より格段に大きくなります。 一方で「つわりで飲めない」「どの飲み物が安全か分からない」という不安を抱える方も少なくありません。 この記事では、妊娠初期〜後期の時期別必要量から、つわり中でも実践できる飲み方のコツ、脱水を見逃さないサインの見分け方、 避けるべき飲料の種類、そして受診が必要なタイミングまで、産婦人科の医学的知見に基づいて具体的に解説します。

この記事のポイント

  • 妊娠中の推奨水分摂取量は1日1.5〜2L(食事由来を含めると2〜2.5L)。妊娠後期・夏季はさらに増量が必要
  • 脱水の初期サインは「尿の色が濃い・尿量が少ない・口の中のねばつき」。これらが出たらすぐ水分補給を
  • つわり中は「量より回数」の原則で、冷たい水・炭酸水・スポーツドリンク(希釈)など自分が飲みやすい方法を優先する

妊娠初期・中期・後期で異なる水分必要量の目安

妊娠期別の推奨水分摂取量は、妊娠初期は非妊娠時とほぼ同量の1日1.5〜1.8L、妊娠中期以降は1.8〜2.0L、 妊娠後期(28週以降)や夏季・運動後は2.0〜2.5Lを目安にします。 食事から得られる水分(約600〜700mL)を除くと、飲料として摂る量は1日1〜1.5L程度が現実的な基準です。

妊娠期別・推奨水分量の比較

時期

1日の総水分目安

飲料として摂る量

主な理由

妊娠初期(〜13週)

1.5〜1.8L

0.8〜1.1L

胎児の基礎形成・血液量増加開始

妊娠中期(14〜27週)

1.8〜2.0L

1.1〜1.3L

羊水量増大・胎盤完成・代謝亢進

妊娠後期(28週〜)

2.0〜2.5L

1.3〜1.8L

胎児急成長・子宮圧迫で腎機能変化

夏季・運動後(共通)

+0.5〜1.0L追加

適宜増量

発汗増加・体温上昇

水分量の根拠は、国立健康・栄養研究所の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」および厚生労働省の熱中症予防ガイドラインに基づきます。 個人差(体格・活動量・発汗量)があるため、「喉が渇く前に飲む」「尿の色で管理する」という習慣が最も実用的な目安です。

妊娠中の水分補給を習慣化する5つの具体的ステップ

妊娠中に効果的な水分補給を続けるには、「量を一度に飲む」より「少量を頻繁に補給する」ルーティンが重要です。 以下のステップを1日の生活リズムに組み込むことで、無理なく必要量を摂取できます。

Step 1: 朝起きたら200mLを最初に飲む

就寝中は呼吸と不感蒸泄(皮膚からの水分蒸発)で約500mLが失われます。 起床直後にコップ1杯(200mL)の常温水か白湯を飲む習慣をつけることで、朝の脱水状態をリセットできます。 胃への刺激が少ない白湯(40〜50℃)は、つわりが軽い時間帯に特に有効です。

Step 2: 2時間ごとのリマインダーを設定する

妊娠中は頻尿を嫌って水分を控える方が多いですが、これは脱水を招くため逆効果です。 スマートフォンのアラームやハイドレーションアプリで2時間おきにリマインダーを設定し、 1回150〜200mL(コップ約1杯)を目安に飲むことで、1日8〜10回の補給が自然に確保できます。

Step 3: 水分摂取量を「見える化」する

500mLのボトルを2〜3本用意し、「今日何本飲んだか」を視覚的に管理します。 目盛り付きボトルや水分摂取記録アプリを活用すると、量の把握が容易になります。 飲めなかった日は「なぜ飲めなかったか(外出・つわり・忘れ)」を記録しておくと、改善策を立てやすくなります。

Step 4: 食事時間に積極的に飲む

食事中・食後は胃酸が薄まるという心配から水を控える方がいますが、妊娠中の適度な水分補給(食事中200mL程度)は 消化を助ける効果が期待できます。 ただし、満腹感の増大でつわりが悪化する場合は食後30分以内に分けて飲む方法に切り替えてください。

Step 5: 就寝前にコップ1杯を飲む

夜間の不感蒸泄対策として、就寝30分前に150〜200mLを補給します。 飲みすぎると夜間頻尿が増えるため、量はコップ1杯を上限とします。 枕元にも小さなボトルを置いておくと、夜中に目が覚めたときにすぐ補給できます。

つわりで飲めないとき:吐き気を最小化する水分補給の工夫

つわり中の水分補給は「一度にたくさん飲まない」「自分の胃に合う飲み物を優先する」の2原則が基本です。 1口(30〜50mL)ずつ数分おきに飲むことで、胃への負担を分散させながら必要量を確保できます。

つわりでも比較的飲みやすい飲み物

  • 冷たい水・氷水: 冷却で胃の炎症感を和らげ、においが少ない
  • 炭酸水(無糖): 炭酸の刺激が吐き気を一時的に抑える方に有効。胃の張りが強い場合は避ける
  • 麦茶: カフェインゼロ、においが穏やか。常温〜冷で飲みやすい
  • スポーツドリンク(2倍希釈): 嘔吐でナトリウムが失われている場合に適切。糖分過多を防ぐため2倍希釈が推奨
  • りんご果汁(薄め): 酸味が少なく胃への刺激が小さい。100%果汁を3〜4倍希釈して使用
  • ジンジャーティー(生姜湯): 生姜の成分ジンゲロールが悪心を軽減する可能性が示唆されている(*エビデンスは限定的)

つわり中に避けた方がよい飲み方

  • 熱い飲み物: 湯気の匂いが吐き気を誘発しやすい
  • 空腹時に一気飲み: 胃が急激に膨張し嘔吐を引き起こしやすい
  • 飲んだ直後に横になる: 逆流が起きやすくなる。少なくとも15〜20分は座位を保つ

注意: 24時間以上ほとんど水分が摂れない、嘔吐が1日5回以上続く、体重が妊娠前より5%以上減少している場合は 妊娠悪阻(つわりの重症型)の可能性があります。速やかに産婦人科を受診してください。

見逃してはいけない脱水の初期サインと緊急サイン

妊娠中の脱水は、母体の血流低下から胎盤への酸素・栄養供給を減らすリスクがあります。 尿の色・量と体の感覚を組み合わせて、初期サインで早めに対処することが重要です。

脱水レベル別チェックリスト

レベル

主なサイン

対処法

軽度(〜2%脱水)

尿が濃い黄色・口のねばつき・軽度の頭痛

すぐに水分補給(200〜400mL)

中度(2〜5%脱水)

尿量減少・めまい・立ちくらみ・皮膚の張りが低下

経口補水液を補給。症状が続くなら受診

重度(5%超・要注意)

極端な口渇・頻脈・子宮収縮の増加・胎動減少

すぐに産婦人科を受診または救急へ

尿の色で分かる水分状態のチェック法

尿の色は脱水の最もシンプルな指標です。

  • 淡い黄色〜麦わら色: 適切な水分量のサイン
  • 濃い黄色〜琥珀色: 水分不足。すぐに補給を
  • 茶色・赤みがかった色: 血尿の可能性。速やかに受診

妊娠中はビタミン剤(特にビタミンB2)の服用で尿が黄色くなることがあります。 その場合は飲み始めの時間帯を考慮しながら判断してください。

妊娠中に避けるべき飲料と理由:カフェイン・アルコール・市販ドリンク

妊娠中には胎児への影響を考慮し、摂取を制限または禁止すべき飲料があります。 「少しなら大丈夫」という判断ではなく、エビデンスに基づいた明確な基準を把握しておきましょう。

カフェイン:1日200mg未満に制限

WHOおよび厚生労働省は、妊娠中のカフェイン摂取を1日200mg未満(コーヒー換算で約2杯)に制限することを推奨しています。 カフェインは胎盤を通過して胎児に届き、過剰摂取は低出生体重や流産リスクとの関連が複数の研究で報告されています。

  • コーヒー(150mL): 約80〜100mg
  • 紅茶(150mL): 約30〜50mg
  • 緑茶(150mL): 約20〜30mg
  • エナジードリンク(250mL): 約80〜150mg(他成分も含め妊娠中は原則禁止)
  • ほうじ茶・麦茶・ルイボスティー: カフェインほぼゼロで妊娠中も安心

アルコール:妊娠中は「ゼロ」が原則

アルコールは胎児性アルコールスペクトラム障害(FASD)のリスクがあるため、 妊娠中は「安全な量」は存在せず、完全に避けることが医学的に推奨されています。 「ノンアルコール飲料」も製品によってはアルコールを0.5%程度含むため、成分表示を必ず確認してください。

市販の清涼飲料水・栄養ドリンク

スポーツドリンク(未希釈)・市販の野菜ジュース・栄養ドリンクは糖分・塩分・特定成分(高麗人参・ウコン等)が 妊娠中に適さない量含まれることがあります。 成分表示を確認し、産婦人科医に相談してから継続使用を判断することを推奨します。

水分不足・脱水で受診すべき5つのタイミング

以下のいずれかに当てはまる場合は、自己判断で様子を見ず産婦人科または救急に連絡・受診してください。 脱水は妊娠中の子宮収縮(早産リスク)や胎盤機能低下につながる可能性があります。

  1. 嘔吐が1日5回以上で、6時間以上水分が摂れない
  2. 立ち上がるとめまいや気絶しそうな感覚がある(起立性低血圧の疑い)
  3. 1日の尿量が極端に少ない(目安: 尿が4時間以上出ない)
  4. 腹部の張り・痛みが水分補給後も続く(子宮収縮の可能性)
  5. 胎動が明らかに少ない・感じにくい(妊娠20週以降)

経口補水液(ORS)の活用
軽〜中度の脱水には、市販の経口補水液(OS-1・アクアソリタ等)が有効です。 通常のスポーツドリンクより塩分・糖分のバランスが体液に近く、水分と電解質の補給効率が高いです。 ただし、腎機能に問題がある場合や医師から塩分制限を指示されている場合は、使用前に確認が必要です。

妊娠中の水分補給で見落とされがちな「電解質」と「浸透圧」の基礎知識

水を飲んでいるのに脱水症状が出る場合、原因は「水の量」ではなく「電解質バランスの崩れ」である可能性があります。 妊娠中は嘔吐や過度な発汗でナトリウム・カリウムが失われやすく、水だけ補給し続けると低ナトリウム血症(水中毒)を招くことがあります。

電解質を意識した水分補給の目安

  • 嘔吐後・大量発汗後: 水だけでなく、少量の塩分(梅干し1個・味噌汁の上澄み等)と一緒に補給
  • 長時間外出・運動後: スポーツドリンクを2倍希釈して電解質補給。1回200〜300mLを目安に
  • 水だけ大量摂取(2L以上/日)が続く場合: 食事からのナトリウム補給が不足しないよう注意

妊娠中に適した飲料の優先順位

  1. 常温〜白湯: 最も負担が少なく、胃腸への刺激も最小
  2. 麦茶・ほうじ茶: カフェインゼロ、ミネラル(マンガン等)も少量含む
  3. 牛乳・豆乳(無調整): 水分補給+カルシウム・タンパク質の同時摂取が可能
  4. 経口補水液(症状時): 脱水・嘔吐後の電解質補給に最適
  5. スポーツドリンク(希釈): 長時間外出・運動後の電解質補給に限定使用

よくある質問

Q1. 妊娠中に1日2L以上飲む必要がありますか?

食事から得られる水分(約600〜700mL)を含めて1日2L前後が目安です。 飲料だけで2L飲む必要はなく、食事・おかず・汁物なども水分量に含めて計算してください。 個人の体格・活動量・季節によって変わるため、尿の色を目安にこまめに調整することが最も実用的な方法です。

Q2. 妊娠中にコーヒーは1杯なら飲んでいいですか?

WHO・厚生労働省は1日200mg未満のカフェインを許容しており、コーヒー(150mL)1杯は約80〜100mgのため、 1杯程度であれば多くのガイドラインで許容範囲とされています。 ただし「0リスク」ではないこと、他のカフェイン源(紅茶・緑茶)との合算が必要なことを念頭に置き、 不安な方は産婦人科医に相談のうえ判断してください。

Q3. つわりで水しか飲めない日が続いています。問題ありますか?

短期間(2〜3日)であれば、水分が摂れていれば急激な問題は起きにくいです。 しかし食事がほぼ取れない状態が3〜4日以上続く場合や、体重が急減している場合は妊娠悪阻の疑いがあります。 産婦人科に相談し、必要に応じて点滴による水分・電解質補給を受けることを検討してください。

Q4. 麦茶は妊娠中に毎日飲んでも大丈夫ですか?

麦茶はカフェインゼロで、妊娠中の水分補給に適した飲料の一つです。 毎日飲んでも問題なく、むしろ水の代替として積極的に取り入れることが推奨されます。 購入の際は砂糖が添加されていない「無糖タイプ」を選んでください。

Q5. 冷たい水を飲むとお腹が張る気がします。やめるべきですか?

冷たい飲み物がお腹の張りを直接引き起こすというエビデンスは現時点では限定的です。 ただし、冷たい水で腸が刺激されやすい体質の方は常温か白湯に変えることで不快感が軽減する場合があります。 お腹の張りが規則的・強くなる場合は子宮収縮の可能性もあるため、産婦人科に相談してください。

Q6. スポーツドリンクは妊娠中に飲んでいいですか?

市販のスポーツドリンクは1本(500mL)に砂糖25〜30g程度が含まれ、毎日飲み続けると妊娠糖尿病のリスクが高まる可能性があります。 通常時の水分補給には水・麦茶を基本とし、スポーツドリンクは運動後・嘔吐後などの電解質補給に限定し2倍希釈で使用することを推奨します。

Q7. 妊娠後期に夜間頻尿がひどく、水を飲む量を減らしています。大丈夫ですか?

夜間頻尿を避けるために水分を全体的に減らすことは脱水リスクにつながるため、推奨できません。 日中の水分摂取量はしっかり確保しつつ、就寝2時間前からの飲水量を控えめ(150mL以内)にする方法が有効です。 夜間頻尿が特に強い場合は膀胱や腎臓の問題も含め、産婦人科・泌尿器科への相談を検討してください。

Q8. 妊娠中の脱水は胎児に直接影響しますか?

軽度の一時的な脱水が即座に胎児に悪影響を与えるとは限りませんが、 中等度以上の脱水が続くと羊水量の減少(羊水過少症)、胎盤血流の低下、子宮収縮の増加(早産リスク)につながる可能性があります。 「少し口が渇くな」と感じたら早めの水分補給を心がけ、重症サインが現れた場合は迷わず医療機関を受診してください。

まとめ

妊娠中の水分摂取量は、妊娠初期1.5〜1.8L・中期1.8〜2.0L・後期2.0〜2.5L(食事由来を含む)が目安です。 飲料として摂る量は1〜1.5L程度とし、2時間ごとの補給習慣と尿の色チェックが最も実用的な管理法です。 つわり中は「1口ずつ・頻繁に」を徹底し、カフェインは1日200mg未満・アルコールは完全禁止を守ってください。

脱水の初期サインは「尿の濃い色・口のねばつき・頭痛」で、中等度以上(めまい・尿量激減・子宮収縮増加) が出たら自己判断せず産婦人科に連絡することが重要です。 水分補給は「量だけでなく電解質バランス」も意識し、嘔吐後は水と少量の塩分を合わせて補給しましょう。

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参考文献

  • 厚生労働省. 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」. 国立健康・栄養研究所.
  • 厚生労働省. 「熱中症予防のための情報・注意事項」. 2023年.
  • WHO. "Guideline: Sugars Intake for Adults and Children." World Health Organization, 2015.
  • Committee on Nutritional Status During Pregnancy and Lactation. "Nutrition During Pregnancy." National Academies Press, 1990.
  • Erick M. "Hyperemesis Gravidarum: An Overview." Midwifery Today Int Midwife. 2017.
  • Smith C, et al. "A randomised controlled trial of ginger to treat nausea and vomiting in pregnancy." Obstet Gynecol. 2004;103(4):639-45.

免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療診断・治療の代替となるものではありません。 個々の症状・状態については必ず担当の産婦人科医にご相談ください。 記事内の数値・推奨事項は執筆時点(2026年4月)の医学的知見に基づいており、 最新のガイドラインと異なる場合があります。

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この記事を書いた人

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公開:2026/4/19更新:2026/4/28