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妊娠中のコロナウイルス感染症|症状・リスク・ワクチン接種

2026/4/19

妊娠中のコロナウイルス感染症|症状・リスク・ワクチン接種

妊娠中のコロナ感染|重症化リスク・ワクチン・治療の全知識

妊娠中にコロナウイルス(COVID-19)に感染すると、一般成人と比べてどれほど危険なのか。この疑問を持つ妊婦・妊活中の方は多いです。結論から述べると、妊婦は非妊娠女性と比較してICU入室リスクが約3倍、人工呼吸器が必要になるリスクが約2.9倍高いと報告されています(米国CDCデータ、2021年)。早産・死産のリスク上昇も確認されており、決して「軽い風邪」とは言えない状況です。

一方、mRNAワクチンの接種は妊婦にも推奨されており、接種後の早産率・流産率・胎児奇形率に有意な増加は認められていません。この記事では、妊娠中のCOVID-19感染リスクの具体的なデータ、ワクチン接種の安全性エビデンス、感染した場合の治療選択肢について、産婦人科医監修のもと解説します。

【この記事のポイント】

  • 妊婦のCOVID-19重症化リスクは非妊娠女性の約3倍。早産・死産リスクも有意に上昇する
  • mRNAワクチンは妊娠中でも安全性が確認されており、日本産科婦人科学会は積極的接種を推奨
  • 感染時の抗ウイルス薬(モルヌピラビル等)は妊婦への使用可否が限定的。早期受診が重要

妊婦がCOVID-19に感染すると重症化しやすいのか:具体的なリスクデータ

妊婦は免疫応答の変化・横隔膜への圧迫による肺機能低下から、COVID-19重症化リスクが非妊娠女性より有意に高いと報告されています。米国CDCの2021年解析(妊婦2万3,000例超)では、ICU入室率が非妊娠女性の約3倍、人工呼吸器装着率が約2.9倍、死亡率が約1.7倍でした。

重症化リスクの数値比較

指標

妊婦

非妊娠女性(同年齢)

相対リスク

ICU入室率

約10.5/1,000人

約3.9/1,000人

約2.9倍

人工呼吸器装着率

約2.9/1,000人

約1.1/1,000人

約2.6倍

早産(在胎37週未満)

感染群で有意に増加(約12〜16%)

一般集団 約7〜8%

約1.6〜2.0倍

死産

感染群で有意に増加の報告あり

出典:CDC MMWR 2020-2021、BJOG 2021 meta-analysis(Knight et al.)

重症化しやすい妊婦の特徴

すべての妊婦が同程度に重症化するわけではありません。特に次の条件に当てはまる場合は注意が必要とされています。

  • 妊娠後期(妊娠28週以降)
  • 肥満(BMI 30以上)
  • 糖尿病合併妊娠・妊娠糖尿病
  • 高血圧・心疾患など基礎疾患あり
  • 高齢妊娠(35歳以上)

妊娠中のコロナ感染が胎児・赤ちゃんに与える影響

COVID-19ウイルス(SARS-CoV-2)の胎盤を介した胎児への垂直感染は、可能性はあるものの発生頻度は低いとされています。ただし、母体の発熱や低酸素血症を介した間接的な影響(早産・胎児発育不全・死産)は複数の大規模研究で報告されています。

垂直感染(母児感染)のリスク

SARS-CoV-2の胎盤感染は確認されているものの、発生率は症例報告レベルにとどまります。英国のPAN-COVID研究(妊婦4,403例)では、新生児PCR陽性率は約0.6〜2%と報告されています。多くの場合、新生児は無症状か軽症で経過するとされています。

早産・低出生体重のリスク

重症COVID-19に罹患した妊婦では、早産(37週未満)が一般妊婦の約1.6〜2倍の頻度で報告されています。また、NICU入院を要する新生児も増加が確認されており、感染予防・重症化予防の観点からワクチン接種の重要性が示されています。

妊婦へのCOVIDワクチン接種は安全か:副反応・胎児影響のデータ

日本産科婦人科学会・日本産婦人科感染症学会は、妊婦へのmRNAワクチン(ファイザー製・モデルナ製)接種を推奨しています(2023年改訂)。大規模観察研究では、妊娠中のワクチン接種が流産率・胎児奇形率・早産率を有意に増加させるという証拠は認められていません。

副反応(接種後の反応)

妊婦における副反応の種類・頻度は非妊娠女性と大きく変わらないとされています。主な副反応は次のとおりです。

  • 接種部位の疼痛・腫脹:最も多く約70〜80%
  • 全身倦怠感:約30〜50%
  • 発熱(37.5℃以上):約10〜20%。アセトアミノフェン(カロナール)で対処可能
  • アナフィラキシー:約1〜5/100万回(妊婦特有の増加なし)

発熱が続く場合は流産・早産のリスクがあるため、接種後38℃以上が続く場合は医療機関に相談することが推奨されています。

流産・胎児奇形への影響

米国のVSD(Vaccine Safety Datalink)の解析(妊婦約2万3,000人)では、妊娠初期・中期・後期いずれの接種においても流産率・先天異常率・早産率に有意な変化は認められませんでした(NEJM 2021)。また、mRNAは細胞核に侵入せずDNAに影響しないため、遺伝毒性の懸念はないとされています。

接種推奨時期

妊娠のどの時期でも接種可能ですが、特にリスクの高い妊娠後期(28週以降)までに完了することが推奨されています。母体が産生した抗体は胎盤を介して新生児に移行するため、出生後の新生児保護にも寄与するとされています。

妊婦がコロナに感染したときの治療選択肢:抗ウイルス薬の使用可否

妊婦への抗ウイルス薬の使用は、薬剤によって「禁忌」「慎重投与」「条件付き使用可」と大きく異なります。自己判断での服用は危険であり、必ず産婦人科医または産科医療機関に相談することが必要です。

主要抗ウイルス薬の妊婦への使用可否

薬剤名

一般名

妊婦への使用

備考

ラゲブリオ

モルヌピラビル

禁忌(妊婦への投与不可)

動物実験で催奇形性が示唆。妊婦への投与は承認されていない

パキロビッド

ニルマトレルビル/リトナビル

慎重投与(ベネフィット優先で使用可)

重症リスクの高い妊婦に医師判断のもと使用される場合あり

レムデシビル(ベクルリー)

レムデシビル

入院患者に医師判断のもと使用可

重症・中等症Ⅱで使用。入院管理下のみ

解熱鎮痛薬

アセトアミノフェン(カロナール)

使用可

NSAIDs(イブプロフェン等)は妊娠中期以降禁忌

感染時の対応フロー

妊婦が陽性判定を受けた場合、重症度に応じて次のような対応が取られます。

  1. 軽症(発熱・倦怠感・咳のみ):自宅療養。アセトアミノフェンで解熱管理。産婦人科への電話相談を推奨
  2. 中等症Ⅰ(SpO2 94〜96%):かかりつけ産婦人科または感染症対応病院を受診。胎児モニタリング実施
  3. 中等症Ⅱ以上(SpO2 93%以下・呼吸困難):即時入院。レムデシビル・ステロイド治療の検討

妊娠28週以降・基礎疾患あり・酸素飽和度が95%を下回る場合は、躊躇なく救急・産科緊急外来を受診することが推奨されています。

妊娠中のコロナ感染予防:日常生活でできる具体的な対策

感染予防の基本はワクチン接種と非薬物的予防措置(NPI)の組み合わせです。ワクチン接種済みの妊婦でも感染リスクはゼロではないため、日常生活での予防行動の継続が推奨されています。

  • ワクチン接種:未接種の場合は産婦人科医に相談のうえ接種を検討
  • 人混みの回避:妊娠後期は特に混雑した場所・換気の悪い空間を避ける
  • 手指衛生:石けんによる手洗い(20秒以上)を励行
  • 同居家族への接種勧奨:コクーン戦略(家族が感染しないことで母体を守る)が有効
  • 定期健診の継続:感染不安から健診を欠席しないこと。胎児の状態確認は最優先

職場・外出時の注意点

妊娠中は法律(母性健康管理指導事項連絡カード)に基づき、医師が「感染リスクを避ける措置」を職場に求めることができます。テレワーク・時差出勤・時短勤務などを使用者は講じる義務があります。症状がなくても妊娠後期で不安が強い場合は、主治医に相談することが推奨されています。

妊娠週数別のCOVID-19リスクと注意点:初期・中期・後期で何が変わるか

妊娠の時期によって、COVID-19感染が及ぼす影響の種類と程度は異なります。重症化リスクは妊娠後期(特に第3三半期)で最も高く、初期・中期と比べて入院率・ICU入室率が高い傾向が報告されています。

妊娠初期(〜13週)

器官形成期にあたるため、高熱が続く場合は胎児への影響が懸念されます。ただしSARS-CoV-2の直接的な催奇形性は現時点では認められていません。解熱管理(アセトアミノフェン使用)と十分な水分補給が重要とされています。

妊娠中期(14〜27週)

重症化頻度は後期より低いものの、早産の引き金になる炎症反応(サイトカインストーム)が起きる場合があります。発熱・強い倦怠感が3日以上続く場合は産婦人科受診が推奨されています。

妊娠後期(28週以降)

最も重症化リスクが高い時期です。横隔膜の挙上により肺機能が低下していることに加え、免疫応答の変化が重なります。SpO2(血中酸素飽和度)が95%以下になった場合は救急対応が必要です。胎動が減少した場合も速やかに産婦人科へ連絡することが求められます。

妊婦のCOVID-19後遺症(ロングCOVID):産後への影響と最新知見

妊婦のロングCOVID(罹患後症状)に関する研究は蓄積途上ですが、いくつかの知見が報告されています。倦怠感・息切れ・認知機能低下(ブレインフォグ)が産後も持続する可能性があり、育児への影響も懸念されています。

妊産婦のロングCOVIDの特徴

  • 発症後12週以上続く症状の頻度は一般成人(約10〜20%)と同程度とする報告がある
  • 倦怠感・息切れ・頭痛が主な症状
  • 産後うつとの鑑別が難しい場合があり、精神科・心療内科との連携が推奨される
  • 授乳中の後遺症治療薬は種類が限られるため、主治医への相談が必要

胎児・新生児への長期影響

母体のCOVID-19感染が子どもの長期的な神経発達に影響するかどうかは現在も研究中です。デンマークのコホート研究(2022)では、妊娠中感染群の子どもに神経発達遅延の有意な増加は認められなかったと報告されています。ただし、重症感染・長期低酸素状態が胎児脳に影響する可能性は否定されておらず、引き続き経過観察が必要とされています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 妊娠中にコロナに感染したら赤ちゃんに感染しますか?

胎盤を介した垂直感染は理論上起こり得ますが、発生頻度は低く、新生児陽性率は約0.6〜2%と報告されています(英国PAN-COVID研究)。感染した新生児の多くは無症状か軽症で経過するとされています。

Q2. 妊娠中にコロナワクチンを接種しても流産しませんか?

米国VSDの大規模研究(妊婦約2万3,000人)では、mRNAワクチン接種後の流産率に有意な増加は認められていません(NEJM 2021)。日本産科婦人科学会も妊婦への積極的接種を推奨しています。不安がある場合は担当医に相談してください。

Q3. 妊娠中にコロナに感染したらモルヌピラビル(ラゲブリオ)は飲めますか?

モルヌピラビルは動物実験で催奇形性が示唆されており、妊婦への投与は禁忌とされています。感染が判明した場合は自己判断で服用せず、産婦人科または感染症対応医療機関に相談してください。

Q4. 妊娠中のコロナ陽性判定後、健診は受けられますか?

症状が軽い場合でも感染期間中は一般の産科外来受診が難しくなります。かかりつけ医に電話・オンライン相談で状況を報告し、電話診療・オンライン診療を活用することが推奨されています。症状悪化・胎動減少時は感染症対応の産婦人科救急を受診してください。

Q5. 妊娠何週でコロナに感染すると一番危険ですか?

重症化リスクは妊娠後期(28週以降)が最も高いとされています。横隔膜挙上による肺容量低下と免疫応答の変化が重なるためです。ただし妊娠全期間を通じて感染予防が重要であることに変わりありません。

Q6. 授乳中にコロナに感染したらどうしたらよいですか?

母乳中のSARS-CoV-2感染性ウイルスは確認されていません。母乳にはウイルス特異的抗体が含まれ、乳児を保護する可能性があるとされています。感染中の授乳継続は可能とされていますが、マスク着用・手指衛生を徹底したうえで主治医に相談することが推奨されています。

Q7. 妊娠中のコロナ後遺症はどのくらい続きますか?

妊産婦のロングCOVIDについては現在も研究中です。一般成人と同様に罹患後12週以上症状が続く場合は「後遺症」として扱われます。倦怠感・息切れが続く場合は産後健診の際に担当医に申告し、必要に応じて専門科への紹介を受けることが推奨されています。

まとめ

  • 妊婦のCOVID-19重症化リスクは非妊娠女性の約3倍。妊娠後期・基礎疾患ありの場合はさらにリスクが高い
  • mRNAワクチン(ファイザー・モデルナ)は妊娠中の接種安全性が確認されており、日本産科婦人科学会が積極的接種を推奨している
  • モルヌピラビルは妊婦禁忌。感染時は自己判断で市販薬・処方薬を使用せず、産婦人科医に相談すること
  • 発熱3日以上持続・SpO2 95%以下・胎動減少のいずれかがあれば速やかに産婦人科を受診する

妊娠中のコロナ感染が心配な方へ

「ワクチンを接種してよいか迷っている」「感染後に症状が続いている」「胎動が気になる」——こうした不安は、一人で抱え込まずに産婦人科医に相談することが大切です。

当院では妊娠中のCOVID-19感染相談・ワクチン接種の可否判断・感染後の経過観察に対応しています。オンライン相談も受け付けていますので、お気軽にご予約ください。

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免責事項

本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の治療・薬剤の使用を推奨するものではありません。個々の症状・治療方針については必ず担当医にご相談ください。情報は執筆時点(2024年)のものであり、最新ガイドラインと異なる場合があります。

参考文献

  • Zambrano LD et al. "Update: Characteristics of Symptomatic Women of Reproductive Age with Laboratory-Confirmed SARS-CoV-2 Infection by Pregnancy Status." CDC MMWR 2020;69(44):1641-1647.
  • Knight M et al. "Characteristics and outcomes of pregnant women admitted to hospital with confirmed SARS-CoV-2 infection in UK." BMJ 2020;369:m2107.
  • Shimabukuro TT et al. "Preliminary Findings of mRNA Covid-19 Vaccine Safety in Pregnant Persons." NEJM 2021;384:2273-2282.
  • 日本産科婦人科学会・日本産婦人科感染症学会「妊婦への新型コロナウイルスワクチン接種に関する見解」(2023年改訂)
  • PAN-COVID Study Group. "Pregnancy and neonatal outcomes of COVID-19." BJOG 2022;129(1):103-114.
  • 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第10.0版」2023年.

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この記事を書いた人

EggLink編集部

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公開:2026/4/19更新:2026/4/28